芥川龍之介「秋」|信子の夫はどんな人か色々と考えたみた

稽古場日誌
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前回の稽古はこちらから。

今回の稽古でも、引き続き、梅田節が炸裂しております。

後半は、まだ語られていなかった人物、信子の夫について、色々考察してみました!

  • この時代、男は仕事、女は家事だったのかな?
  • 夫はヒゲを生やしたり、美的センス高いのかな?
  • 夫は俳優で言うなら誰のイメージ?
  • 夫は何歳なんだろう?
  • 夫はエリート大学出身の典型的サラリーマンだよね

などを、話し合いました。

梅田、出番です!

男は仕事、女は家事?

スズキ:信子がこんな浮ついた感じじゃ、夫も可哀想だね。

梅田:でもまぁ、夫さんはね、しょうがないのかな。この時代の男性だからさ。信子がちょっと不満に思うのも。

スズキ:まぁ浮気される典型パターンの夫だよね。

梅田:僕ならね、信子が本気で小説家になって物書きしようとしたらさ、「シャツぐらい自分でやるよ」ってなるよ。洗濯とかも自分でやるし勿論。

スズキ:えらーい!

梅田:いや当たり前だよ! でもそれは現代だからで。この時代は、男は男の仕事、女は女の仕事みたいなコモンセンス(常識)があるから、しょうがないのかな、って。

スズキ:考えてみるとさ、俊吉と照子のところには女中がいるでしょう? この夫も、女中を雇って、信子の仕事を応援するっていうやり方もあったはずだよね。

梅田:夫は常に「倹約したい」みたいなこと言ってたよね。

スズキ:そっか。こいつ倹約家だったんだ。ケチか。「ネクタイも、手作りより買った方が安いじゃん」的なこと言ってなかった?

梅田:ケチ、うーん……そうかもしれないけど、それだけではないのかな、とも思うけど。

スズキ:いい人ではあるんだろうな。悪い人ではないと思う。

梅田:いい人なんだけど、あんまり信子からはよく見えてないんだろうね。

夫は美的センスが高い

梅田:夫さんはねぇ、大阪行った時もさ、周りの人と比べて身綺麗な感じって書いてあったし。こだわりがあるんじゃないかな。ほら、この夫ってきっと、見た目がシュッと綺麗で、あの人みたいな……最近のイケメン俳優で、いない? ここの……顎にほくろがある人(竹内涼真)。

スズキ:あぁ! JRの青森のポスターの人(三浦春馬)?

梅田:ここにほくろがある人だよ(竹内涼真)。

スズキ:銀行だか郵便局だからのポスターの人(三浦春馬)?

梅田:あ、そうそう! シティーボーイ風だけど中身は古風な感じの人(竹内涼真)。

スズキ:あぁ、その人かぁ(三浦春馬)。

戸塚:今、検索したんですけど。「竹内涼真」ですよ。

梅田:それ!!(竹内涼真)

スズキ:それ!?(竹内涼真)

戸塚:違いました?

スズキ:そんなに若い人か(竹内涼真)。

戸塚:この人は仮面ライダーの人ですよ(竹内涼真)。

スズキ:そっちもほくろ付いてるんだよ(三浦春馬)。

梅田・戸塚:誰だ?

スズキ:そっかぁ、2種類以上いたのかぁ、くそぉ。

戸塚:2種類?

スズキ:この夫、現代だったら、ちょっと眉毛整えたりとか、うっすら化粧とかしてるんだろうね。お肌とか白くてね。

梅田:お風呂上がりにヘアバンド巻いちゃう、ネイルケアしちゃう、的な。

スズキ:お、でもヒゲ生やしてるんだよね。

梅田:そうね。

スズキ:さっきの俳優、ヒゲを生やしたらどうなるんだ?

梅田:やっぱり綾野剛?

スズキ:あ、確かに、あの人の顔の上、ヒゲ、時々いるね。清潔なヒゲなんでしょうね。無精髭じゃなくて。

梅田:そうそう、意図のあるヒゲだよ。意図のないヒゲとは全然違うよ。見たら判るもん。「あ、あのヒゲ、あえてのヒゲだな」「ただ生えてるだけのヒゲだな」って。トリミングってあるじゃん。

スズキ:いい人ではあるんだろうな。悪い人ではないと思う。

夫は一流大学のエリート

スズキ:夫は一橋大学だから、ちゃんとしてる人っていう感じなのかな。エリートだよね。一橋大学ってやっぱりそういう所なのかな。

梅田:お堅いんだろうね。早稲田とか慶応とはちょっと違って。

スズキ:俊吉って早稲田の文学部にいそうじゃない?(笑)

梅田:いそういそう(笑) とりあえず、信子みたいな女性は、ICUにはいないね。

スズキ:そうね! 信子は、ICU生のように「今日は寮からジャージで学校来ちゃいました〜」みたいなこと、絶対しないね。基本ピンクとか白のコーディネートで、ちゃんとおしゃれに決めて来そうだね。

梅田:この中で唯一、ICUにいそうなのは俊吉かなぁ?

スズキ:意識高い系のICU生ね。

梅田:ICUにいるじゃない、たまに。俊吉みたいな罪深い人。モテモテの。

スズキ:いるね。

梅田:もう僕はね、両手を振って、大きな声で叫びたい。ほら! 周りをよく見て! みんなが不幸せになっていくよ! って。教えてあげたい。言ってあげたい。

スズキ:ほんと、なんなんだろうね、あの男はね。

夫のセリフを読んでみてどうですか?

スズキ:夫のセリフは前半のネチネチ感がいいですね。

梅田:僕さ、もうちょっとネチネチを強く出した方がいいのかな? って思ったんだけど、どう?

スズキ:確かにね、なんか、「いい人が諭してあげてる」みたいには聞こえがち。

梅田:もっとイヤな感じの方がいいかな?

スズキ:うーん、でもこれはまだ序盤だからさぁ、まだ少しはいい人感あってもいいのかなって思ったよ。

梅田:でも、なんか不満を漏らしてる感が足りないような感じ。ネチネチやると早くない?って感じ。ちょっと不満が出てきたぐらいはもうちょっとやった方がいいのかな、って。

スズキ:「いつになく」嫌味を言ったっていう書き方だからね。色の付け方って難しいよね。自分でやってる時と、録音したの聞いてみた結果も、聞いてみるとまた違ったり。

録音して気になった……こだまする夫の声

梅田:読み方より気になるのがね、僕の声ってさ……すっごい、こもっちゃうんだよね! 響くっていうの?

スズキ:あぁ〜。梅さんの声は、謎の反響みたいな感じあるよね。

梅田:戸塚くんの声って、遠くでもクリアに聞こえるの、音量が小さくなるだけで。

戸塚:そうなんですか? 考えたことないけど。

梅田:僕と戸塚君の声が同時に聞こえると、同じ部屋で録ったのに、マイクからの距離関係無く、2人は違う空間にいるんじゃないか、って思っちゃう。宇宙と工場とか。教室と洞窟とか。僕は1人でかまくらにでも頭突っ込んでるんじゃないかっていう。喋り方を変えればいいのかな?

スズキ:普段から響いてるから、声質の問題じゃない?

梅田:やっぱ!? 響いてる!? 何でだろうね!? 戸塚君の声は高かろうか低かろうが、遠かろうが近かろうが、クリアじゃない?

スズキ:「声を響かせるな」って、演技しててなかなか言われない指摘だよね(笑) 役者に要求することじゃないよ。本来、いいことなはずなんだけど(笑)

梅田:普通に喋ってるつもりなんだけどね、電車の中とかでも、一緒にいる人に「シーッ! 声大きいから!」って言われるんだ。すっげえ、聞こえてるみたい。周りの人にも。そんなに声出してるつもり無いのよ?

スズキ:やっぱ、入れ物の問題じゃない? 胴体とか、頭蓋骨とか。響くようにできてるんだよ、きっと。

梅田:え。空洞とかがあるのかな。

スズキ:体に空洞!?(笑) 他人より反響してるんじゃない?

梅田:自分でも、響いてるのが判るんだよね。アーアーアーーーー♪ これ裏声ね、アーーーーーッ!

スズキ:100%裏声だったら大丈夫かもしれないけど(笑)

梅田:地声は、鐘がゴーンってなってる感じよね。『竹の木戸』聞いててね、ほら、自分でイヤホン付けて聞いてるとね、気になったんだよ。他の皆さんとなんか違うんだよ、わたしだけ。

スズキ:『竹の木戸』の時は、録音した部屋が広かったから余計響いてたかも。天井とかに跳ね返って。でもね、いずれ聞く人が慣れるから。

梅田:聞く人って、この朗読シリーズを視聴する人?

スズキ:そうそう、「あ、この役、梅田さんだ。相変わらず響いてるなー」って(笑)

梅田:「梅田を覚えてください」って?(笑) 「1人だけ、いつもかまくらの中で喋ってる梅田さん」? 慣れてくれるかしら。あ、あと僕、「ラリルレロ」がダメなんだよね。あと、句読点の前が消えちゃうんだね。「ちゃんと言おう」って意識しないと。

夫は何歳?

梅田:で、どうやってイヤな感じ出せるかしら。スズキ:例えば、この「襟飾りにしてもさ」の「さ」は、伸ばした方がネチネチ感が出るとか?

梅田:「その襟飾りにしてもさぁ〜」って感じ?

戸塚:なんか、語尾を伸ばしすぎると現代っぽいね。

梅田:そうだね。思ったより。

梅田:あれ、待って。夫って何歳だったんだっけ? 信子よりは年上かな。

スズキ:夫は、高商を卒業したてなんでしょ?

戸塚:「出身」っていうだけで卒業したてかどうかは判らないですよ?

スズキ:学生時代に縁談が進んで、卒業と同時に結婚したんじゃないの? あ、違うか。信子が卒業する頃には、夫はもう働いていたのだとすると、23歳とか……? 信子とは、年齢近いのかな。

梅田:年齢差、どのぐらいなんだろうね。照ちゃんは、信子より4-5歳離れてるのかな。

スズキ:そんなに信子と年が離れてないわりには、夫の方が年上っぽいイメージあるんだよね。

梅田:信子を子ども扱いしてる感じがあるよね。当時の、「主人と奥さん」っていう立場もあるのかもしれない。

夫は典型的サラリーマン

梅田:夫さんってさ、お酒はいつから飲んでたのかな。「初めて、お酒飲むなぁ、ドキドキ!」とか無さそうじゃん。俊吉は、「酒を飲むことが大人だ」「男のたしなみだ」みたいなので、かぶれてるっていうか。夫にとっては、そういう特別な物でもないし、日常の中に酒がありそうじゃん。僕が、夫のあんまり好きじゃない所はさ、酒臭いまま寝てさ、隣の信子が臭くて眠れなかったってさ、どうなの? って思う。

スズキ:梅さんはそういうことやらないのか。

梅田:いや、やる(笑) いや、昔だったらあるかもしれないけど! 今は、無い。正体不明になるまで飲んだりしないもの。

スズキ:夫さんは、仕事でイヤなことでもあったんじゃないの?

梅田:この人、多分、営業さんなんじゃない? 付き合いの接待とか。

スズキ:きっと体育会なんじゃない?

戸塚:この当時の会社員ってそういうのあるんですか?(笑)

スズキ:いっそうあるんだと思ってた。「俺の酒が飲めないのか」みたいなの。

梅田:そういうノリが伝統的なんだったら、大正時代にもルーツありそうだよね。日本が近代化してさ、明治時代でサラリーマンが出現してさ。サラリーマンたるもの何をするべきなのかが段々固まって来てさ。最終的に「接待」っていう所。

スズキ:こないだの『竹の木戸』で、主人公の真蔵がサラリーマンで、エリートだったから、この夫もエリートだよね、わりと。

夫は何が楽しくて生きてるんだろうね

スズキ:夫が生きてる楽しみって、何なんだろう?

梅田:え。

スズキ:だって。

梅田:彼なりに何かあると信じたい!(笑)

スズキ:趣味って言えるもの、晩酌して経済新聞とか読んでるのしか出て来なくない?

梅田:彼なりの理想の生活が、まさにそれなんじゃないですか? でも、理想とは乖離してくるからイラッとくるわけで。

スズキ:「俺の理想の生活が、信子の小説ごときのために脅かされている」と。

梅田:そうそう、具体的な展望とかがあるわけじゃなくて、「慎ましやか」とまで言わなくても、彼なりの「テンプレートな結婚生活♪」っていうのがあって。経済の話題とか、食事したりお酒飲んだりしながら、そういう内容を喋り合ったりしてさ。

スズキ:へぇ……。

夫はあんまり周りにいないタイプ?

梅田:あ、今思ったんだけど。さっきの大学の話に絡めて言うとさ、あんまり、よっこ(スズキヨシコ)の周りに、こういう人いないんじゃないかな、って。環境的に。出会ったことがないのかもね、こういうタイプの人に。

スズキ:あぁ、そうね。多分、無い。言われてみれば。

梅田:俊吉タイプの方が、よっぽどいっぱいいるでしょ、周りに。

スズキ:いる!!俊吉は、いっぱい存在する。ちょっとずつ色んなタイプの俊吉がいる。意識して計算して俊吉な人、できてなくて天然で俊吉な人。基本、共通してチャラいんだけど。

スズキ:夫みたいな人が好きっていう人もいるだろうね、パートナーとして。

梅田:そうね。その後、どういう生活を一緒に送っていくのか、イメージしやすいんじゃない? そのうち夢のマイホーム買って、車買って、時々は旅行にも行って、定年になったら年金で楽しく暮らして、みたいな。もう、俊吉は、絶対にしないねそんなこと!

スズキ:あ、しないね。できないね。安定した人生とか。

梅田:年金というシステムそのものに、何かひとこと言っちゃいそうだよね。

スズキ:払うかどうかを検討しそうだね。

参考リンク

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作品本編はYouTubeでも配信中↓

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