本番:『真実は』

 

『あの日、あいつが屋上にいた』の物語を、写真入りで紹介致します。
広瀬玲子役は、石丸香織さんと片山絵里さんのダブルキャストです。

 

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「あの後、わたし、戸北くんに言えなかった。
本当のこと。
事故の、本当のこと」

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「でも、あれは偶然の、不慮の事故だって」

 

その時、玲子は、アンミと言葉を交わしていたのです。

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アンミが、何故、塾から急いで学校に戻って来たのか。
それは、転校する予定の戸北くんが、
この高校で最後のバスケ部の試合をやっていたので、
それを見に来ていたのです。

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「まだ間に合うかな?」
「走れば間に合うよ!
急げば間に合うと思う!」
「ありがとう玲子ちゃん!
またね」
「またね、アンミ」

 

事故は、2人が初めて親しく笑顔で話した、その次の瞬間に起きたのでした。

 

救急車には、「ご友人の方も」と言われ、玲子と周也が同乗しました。
編入して来た日以来、初めて言葉を交わした、2人でした。

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「僕はいつも見てたよ、君が頑張ってるの。
みんなと同じ場所で。
安藤加奈美っていう友達もできたじゃない?
自分を責めたらダメだよ。
あの瞬間、君はよく頑張ったんだよ。
友達と話した、笑った、また会おうと手を振った。
それだけだよ。
あの時、君たちは心の底から友達になれた。
僕はその瞬間を屋上から見てた。
車が来てたのは偶然だ。
あのスピードじゃアンミは気付けなかった。
君もあの距離じゃ助けられなかった。
僕も何もできなかった。
誰も、どうすることもできなかった。
アンミが助かってもきっと誰かが犠牲になっていた。
僕は、見ていることしかできなかった。
あの遠い所から、いつも。
君は、ちゃんとみんなと同じ景色を見ていた。
みんなと同じ場所から。
だから、君は、大丈夫だよ」

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「もし、わたしが、あの時、急げって言わなければ、
あの時、走れって言わなければ、
アンミは助かっていたかもしれないのに」

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アンミは、本当は戸北くんの試合を見に来たということ、
とても伝えてあげたかったのに、
罪悪勘で、戸北くんに何も話し掛けることができなかった、玲子でした。

 

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《裏話》

橘周也の中にも、玲子に対する親近感は、あったようです。
グループ社会のみんなの和の中に入って行けず、屋上にいた周也。
玲子から見れば、遙かな高みから、
地上の学生たちの人間模様の編み目や、その中でのもがき苦しみを、
全て鳥瞰していたように思っていましたが。
周也から見れば、玲子は、
地上で、みんなと同じ視点を持とうと、しっかりもがき苦しんでいた、頑張り屋さん。
誰も気付いていないと思っていたけれど、周也は見ていてくれた。
そして周也は、認めてくれた、許してくれた。
玲子は、周也に気持を救われたのでした。

人を失った時、この世に残された側は、
「もっと何かできたのではないか」
「わたしのせいではないか」
と、様々後悔してしまうものです。
でも、その時に「あなたは精一杯一緒に過ごしたよ」と認めてくれる人が隣にいたら、
とても救われるのではないでしょうか。

そして、共に生きている今、後悔せずに過ごしたいものですよね。

周也の中に、後悔が無かった訳ではないと思います。
屋上からアンミを助けることはできなかった。
他の友人たちの輪に入っていくこともできなかった。
でも、周也は、それよりも何よりも、
屋上で一緒に音楽を聴いたり、空を眺めたりした時間を、実体として、
自分の中で確固たるものである、ということを認めたのだと思います。
そして、玲子にも、アンミと初めて友情を始める一歩を踏み出したこと、
ちゃんと笑顔で、あだ名で呼び合い、「また明日」と再会を約束したこと、
そちらの方を大事にした方が良いと、語ったのです。
もしそれすらしていなかったら…… 玲子は、アンミの友人ですらなく、
きっと、もっと苦しんでいたに違いないのですから。

 

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