国木田独歩「竹の木戸」|あらすじ・説明 中1

ゆるっと考察
竹の木戸
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寒い冬の到来

いよいよ、12月になりました。

東京郊外の冬は、都会よりもグッと冷え込みます。

郊外暮らしの流行で移住してきた人たちは、寒さに驚きました。脱サラして憧れの軽井沢や八ヶ岳に住んだ人が、夏は涼しくていいけど、雪が降ってびっくりする、みたいな感じでしょうか。

地球温暖化の前ですから、今よりも更に寒かったことでしょう。

真蔵は、慣れたものだったようです。

大庭家のおでかけ

そんな中、この日は久々にぽかぽかしていました。

老母、妻、娘の礼ちゃん、女中のお徳は、女性4人でお出掛けです。新橋など、下町へお買い物に行くのです

珍しくお出掛けするので、着替えなどで大騒ぎ。ドタバタ準備して、大変賑やかです。

当時も、下町というのは、商店や露天商が立ち並び、サーカスや芝居小屋などで大賑わいでした。下町と言えば、新橋や浅草の辺りでしょうか。買い物と行楽が両方出来る場所です。「勧行場」というデパートの前身のような(中東のバザールのような)施設があり、流行の最盛期でした。

留守番の真蔵

みんなが出掛けると、さっきの大騒ぎは嘘のよう、家はいっきにシーンと静かです。留守番しているのは、真蔵と、義理の妹のお清。お清は、真蔵の妻の妹ですね。

真蔵は、日当たりの良い部屋で新聞を読んだり、休みを満喫していました。

お昼時、縁側をぶらぶら歩いていると、お清が、お裁縫をしています。姪っ子の礼ちゃんの上着を作っているのです。真蔵とお清は下らない話をして笑い合います。

お清は火鉢の無い部屋で作業していたので、真蔵は「風邪を引くんじゃないか?」と心配しますが、お清は気丈に「大丈夫です、そんなことはありません」と答えます。

台所を仕切っている老母、お清、お徳は、炭の価格高騰に備え、12月、1月、2月と炭が必要になってくるので、節約できる時にはしよう、と計画していたのです。

真蔵は、会社で働いていて、家事は女性陣に任せっきりなので、家計のことや台所事情はよく解っていません。

実際、大庭家では家の造りがしっかりしているので、今日のような温かい日には、日当たりが良ければ、暖房が無くてもやっていけるようです。植木屋夫婦の住んでいる小屋とは大違いです。

なんだかお源が可哀想になりますね。

目撃

真蔵は、フラッとその部屋を出て、台所の方へ歩いて行くと、お徳の部屋の窓が開いているのに気付きます。

あれ、窓が開いてるじゃん、と、お徳の部屋に入ります。

窓から顔を出すと、竹の木戸や井戸がある裏庭が見えます。窓のすぐ下の壁際は、炭俵が並べて置いてあるところです。真蔵は、窓から見下ろしてみました。

そしてぎょっとしました。

そこに、何故か、お隣のお源さんがいたからです。

真蔵からすれば、お源がそこにいるのはびっくりですし、お源からしたら、女中部屋から家の主が顔を出したので、びっくりです。

お源は、手に炭をひときれ持って立っていました。お源はちょっと焦った様子を見せて、「お宅ではこういう上等の炭をお使いなさるんですもの、たまりませんわね」とよく解らない発言をします。まぁ、「見ていただけです」ということが言いたいのでしょうね。

真蔵もちょっと困って、「炭のことは、わたしにはよく解らないもんで」と、にっこり笑って、窓から顔をひっこめてしまいます。

気まずいことこの上無し、です。

真蔵の悩み

真蔵は、自分の部屋に戻って考え込みます。

「あれ? 今のは、うちの炭を盗んでいたのか? や、でも、本当に、ただ見てただけかもしれない。実際、自分は炭を盗んでいるところをはっきり目撃したわけではない。万が一盗んでたんだとしても、自分が1度見ちゃってるから、そう簡単にまた盗みに来ることもないだろう」

そして結論を出します。

「まぁ、今日みたことは誰にも言わないことにしよう」、と。

真蔵は、直情的にやりとりするお源やお徳と比べると、理論的な考え方を持っており、ことがわかります。これは、一種、真蔵が近代化され、洗練されているとも言えるでしょう。

まぁ、波風立てたくない、と思ってるだけかもしれませんが。そこも近代的!

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