すれちがう夫婦の悲しき会話

梅田拓くんの『縊死体』と、みんなの『注文の多い料理店』の収録をする裏で、戸塚くんが読む『雪女』について、話し合いました。

 

『竹の木戸』でも『注文の多い料理店』でもナレーターを務める戸塚くん。初の、単独作品です!
さすが声優!! 主人公の巳之吉と雪女の声を見事に演じ分けております!
そして声がいい。やっぱり声がいいぞ、戸塚くん。

 

 

男性の声で女性の役をやるのって大変なのかな? やっぱり違和感あるかな!? と思ってたけど、そうでもないんですね!
『縊死体』では梅田くんが殺された娘の声を演じているし、『夢十夜』では栗田ばねくんが謎の美女を演じてるし。
『雪女』の戸塚くんも、なかなかのものなんですよ。メンバーのもちこ、こと吉田素子さんは特に、この戸塚くんの雪女のセリフの部分を皆さんにオススメしたいと言って、絶賛していました。他の部分も薦めてあげてください!
3人とも同じように、ナレーションの時よりもマイクに近付いて、そっと囁き声で話すのが面白かったです。別に誰かが指示したわけではなく。高い声を出すというよりは、小さい声を出すイメージなんですね!
歌舞伎の女形みたいな、たおやかさというか、しとやかさというか。着物の、か細い、青白い女性が目に浮かぶ!! むしろ、劇団のの女性陣には出せない雰囲気かも……。

 

と、ここで、更に深めるため、Caoriのアネゴと素子のアネゴから、指導が入ります。

 

 

まず、巳之吉って、何歳!? っていうところから相談です。
初めて雪女に会った時は、18歳。でも、巳之吉が実際喋るのは、何年か経ったラストシーンから。その間の場面は全て、ナレーション処理なのです。このラストの時、何歳なんだ?
戸塚くんが悩んでいるのは、一人称が「ワシ」だからです。ワシって、おじいさんのイメージしかないけど、この時はメジャーだったんでしょうか。関西や四国の方で一人称ワシの地域もありますが。当時はどうだったんでしょうか?
そういえば、『竹の木戸』に出ていた中馬智広くんも、元気な10代の若者の役だったけど、「明治時代の口調に引っ張られて、おじいさんぽい演技になりそう」って悩んでいました。

 

ではここで、物語の中で何年経っているのか、見てみよう! ジャン。

 

 

最初に雪女に出会ったのが、18歳の時。
1年後、お雪という女と道端で出会い、ほどなく結婚。
結婚から5年後、お雪を嫁として気に入って喜んでいた巳之吉の母も、他界してしまう。
そこから数年後? のある時、例の事件勃発! お雪は雪女だとカミングアウトして、消えてしまう。
というわけで、絶対に6年以上は経っているから、巳之吉は24歳以上ということになります。

 

ただ、戸塚くんが指摘しているのは、子どもが多すぎる!! と。男女10人いるんですよね。
当時の農村だから、そのぐらいいて当たり前なんだけど、年子だとしても6年で10人はちょっと計算が合わないから、もうちょっと後かも、とのこと。
(吉田さんが提唱する「3つ子を2回+双子を2回。そういう遺伝体質なんだよ」説は無視することにします)
そして、雪女は再三「子どもたちを宜しく」という旨を言って消えるので、まだ養育費も掛かるお年頃なのでしょう。完全に育ち上がって年取った後というわけでもなさそう。

 

となると、最低24歳、大体30歳ぐらいまで? と、想定してみました。
うーん、「ワシ」かぁ……。
当時は寿命も短かったから、老け込むのも早かったのか。一般的な一人称だったのか。
あるいは、巳之吉は、千鳥の大悟さんなのかもしれない。ハイ! きっとそうなのでしょう。

 

そしていよいよ、クライマックスについて。臨場感を出すには、どうしたらいいのか。

 

 

ある夜、縫い者をしているお雪の傍に座って、巳之吉は雪女に出会った時のことを話し出します。
巳之吉は、「18歳の時、色白で綺麗な人を見たんだ。今のおまえにそっくりだよ」と言い出します。
お雪は目を上げずに、「話してちょうだい、どこで会ったの?」と尋ねます。
巳之吉はペラペラと、その時のことを話します。「恐ろしかった。その女は大変白かった。あれは夢だったのか雪女だったのか」と。
するとお雪は、縫い物を投げ捨て、巳之吉の上にかがみ込み、「それはわたしです。子どもたちがいなかったらあなたを殺すところだった。でもあなたは子どもたちを大事に育ててください。子どもたちに何かあったらただじゃおかないから」というようなことを言うと、白い霞になって消えてしまいます。

 

◆ノア「この、縫い物しながら、目を上げずに話聞いてるところが、ドラマっぽいよね。小道具が効いてるね」
◆もちこ「たしかに。料理しながらとか。パソコン打ちながら、とか。あるよね。後ろ姿だけ映すとか」
◆ノア「振り返らないけど、ふと手が止まる、的な」
◆もちこ「あるある(笑) 」
◆ノア「内心めっちゃ怒ってるけど、わざと猫なで声で返事しながら聞いてるわけね」
◆Caori「『ふ〜ん、それでそれで〜?』って感じね」

 

◆ノア「……お雪、めっちゃ怒るね、最後。なんでこんなに怒ってるんだっけ」
◆戸塚「いや、そこが話の根本でしょ! 他言するなって言ってあったのに、言っちゃったから怒るって話でしょ!」
◆Caori「誰にも言わないで、って約束したのに」
◆ノア「この人はさ、せっかく何年も黙ってたのに、なんでこんな感じでポロッと言っちゃったんだろう。うっかりすぎるよね」
◆戸塚「母親にすら言うな、っていう約束で、まぁ結局、母親には言ってないんですよ。途中で死んでるし」
◆もちこ「調子に乗ったんじゃん?」
◆ノア「油断したか」
◆もちこ「そうだね、完全に油断してるね、こいつは。気抜いちゃったんじゃん?」

 

◆ノア「もう時効だな、と思ったのかな。いい奥さんと可愛い子どもたちに囲まれて幸せに暮らしてて、年も取って、怖いもんなしになってたのか」
◆もちこ「まぁ、そんぐらいお雪に気を許してたんだろうけどさ。お雪なら大丈夫かな、っていう」
◆ノア「信頼して話してくれたことに、喜ばないのか、お雪は」
◆Caori「信頼して話してくれたっていうより、やっぱ油断してる感じの口調な気がするんだよね。軽々しく喋るから、雪女としては腹立つじゃん?」
◆戸塚「お雪、消えなくちゃいけなくるから。巳之吉に喋られちゃったら」

 

◆ノア「その縛りね、ルールね……自分で縛ったのに」
◆戸塚「お雪? 雪女? 自体が縛ったっていうより、妖怪のルールっていうかさ。そうなってるもんなんじゃないかな」
◆もちこ「この世界の中の常識ね、掟的な」
◆戸塚「そうそう、本人の意志だけでどうにかコントロールできることじゃない、妖怪界がそうなてって、人間界に行くには条件付きで、やっぱそのある程度の制限があって、それが破られたら戻らなきゃいけないっていう」
◆もちこ「そういうのあるよね、他にもそういう話」
◆ノア「鶴の恩返しとか。人魚姫? じゃあ、巳之吉め、おまえのせいで離れなきゃいけなくなったぞ!? っていう怒りか」

 

◆もちこ「いや、でも、そのわりにさぁ、お雪も煽るんだよな。巳之吉が話し始めたら、その人どこで会ったの? とか自分で訊いちゃうんだね、っていう」
◆ノア「自ら誘発してるぞ」
◆もちこ「そうなのよ! 『ちょいちょ〜い、その話はしない方がいいんじゃない?』っていう助け船をさ、出せばいいじゃないのよ」
◆Caori「そこでさ、巳之吉自身が『あ、やばいやばい!』って自分で気付いて踏みとどまるのを、期待してたのかも」
◆もちこ「なんだよ、めんどくさいな」
◆Caori「女心だよ」
◆ノア「そして察しなかったか、女心を」
◆もちこ「無理だよ、この男には」

 

 

◆Caori「あとさ、他の女のこと綺麗って言われたらカチンと来ない?」
◆戸塚「まぁ、同一人物なんだけどね、お雪と雪女。他の女かどうかって言われると微妙なところ」
◆ノア「まぁね、美しいって言われてる本人だからね、複雑だね」
◆もちこ「わたしなら普通に喜びそう。むしろ自分から『なぁなぁ、あれ、わたしやったんやで?』って言いたくなるわ」
◆戸塚「それは、自分からバラして自滅することになるけど、いいんですか」
◆もちこ「あ、そっか、やっぱ言わない(笑) 聞きながら、にやにやして、内心『ク〜ッ』ってなると思う」

 

◆ノア「お雪は、自慢してるわけではないけど、最後、消える前に3回も『それ、わたしなんたで?』って叫んでるよ。『それは私、私、私でした。それは雪でした』だって。ねぇ、3回って凄くない? 英語だと違和感ないのかな」
◆もちこ「あぁ、それはあるかもね」
◆ノア「Me! Me! っていう叫び」
◆Caori「日本より感情表現が激しい、みたいな」
◆ノア「激しいよね、ここだけ急に。『私、私、私でした』って選挙カーみたいじゃない? 『私、私、私でございます』みたいな」
◆Caori「何回も強調するのも、自己主張じゃないかな、って思って。これはさぁ、お雪からしたら、いくら綺麗って言われてもやっぱり嬉しくないよ。だって、巳之吉が雪女をお雪と違う女だと思って褒めてる限りは、やっぱり自分と比べて他の女が褒められてるっていうことになるわけじゃん?」
◆もちこ「あ〜、なるほどな。自分であって自分じゃないのね?」
◆Caori「そうそう、巳之吉が誰のことだと思ってほめてるかが重要。だから、自分の存在を訴えてるんだろうな、っていう感じがする」

 

 

◆ノア「なんか混乱してきたな。複雑だね。この人は、この妖怪は? 雪女として約束を破られた悲しみと、お雪として他の女の話をされた悲しみと、2つ混ざってるっていうことか」
◆Caori「そういうことそういうこと。1人の中にどっちの面もあって、どっちの人格? としても悲しいし、怒るってこと」
◆もちこ「妖怪格ね、妖怪格」

 

◆もちこ「要はさ、巳之吉が黙ってりゃ良かったんじゃないの?」
◆戸塚「うん、何度も言うけど、そういう教訓の話だからね、喋るなって言われたことを喋っちゃいけない、っていう話だから」
◆Caori「約束破るとこうなりますよ、的な話ね。昔話って大体そうなってるよね」
◆ノア「生活の知恵を授けるためのお話多いよね。森に入るとオオカミに食われますよ、とか。これは何? やっぱり自然の猛威?」
◆戸塚「うーん、そうかな、多分。吹雪とか、凍死とか。これ一応、武蔵の国って言ってるから、関東の話なんですよね、雪国じゃなくて」
◆Caori「地球温暖化する前だしさ、もっと寒さとか厳しかっただろうね、関東も」

 

◆ノア「巳之吉って、そんなに悪いことしてるわけじゃないよね? 仲良く夫婦生活送ってるし」
◆もちこ「そうなんだよなぁ。我々はさぁ、『竹の木戸』の磯吉とか、『秋』の俊吉を知ってしまってるからさぁ。巳之吉は比べたらもう、全く悪くないよ、いいヤツだよむしろ」
◆Caori「みんな吉が付くね」

 

◆戸塚「読み方としては、どうしたらいいんだろう?」
◆ノア「トータルとして考えると、巳之吉が安穏としてる方がいいんじゃない? やっぱり」
◆戸塚「あ、なるほど、そっちか……」
◆ノア「お雪は、わざと促したり怒ったりしてるけど、何にも気付かずペラペラ喋るのんきな巳之吉、っていう感じで。安心しきってる感じ」
◆Caori「その方が、お雪の怒りが倍増されそうだし。幸せな結婚生活から、それが終わるっていう対比も出そう」
◆ノア「これ、最後、巳之吉、なんでお雪が消えたのか理解できなくて、呆然としちゃいそうだね、このテンポだと。しばらくしてから気付きそう」
◆もちこ「ね。巳之吉側からしたら、結構、助走なく急に怒り出した感じするから、わぁぁってなるよね」

 

◆もちこ「悲しいな、最後、消えてくとこ、凄い綺麗だよね、文章。ここ感動しちゃうんだよな。白い霞になってキラキラキラ! って消えてく感じ。映像で思い浮かべちゃうよね」
◆戸塚「これ、サジ加減が難しくて。急に怒り出して、結構喋るけど、叫んでる途中で声が弱々しくなってくるって書いてあるから。どこから変えればいいのかな」
◆もちこ「弱々しいって、声の大きさのことじゃない?」
◆Caori「最後の最後まで結構しっかり怒ってるもんね、セリフ的には」
◆戸塚「そう。口調っていうより声の大きさとか、聞こえ方として弱くなるんだろうけど」
◆もちこ「普通に怒って読んでいいんじゃない? 編集だよ編集。あとは編集する人にドンと任せよう。好きに読もう」
◆Caori「そうだ、編集だよ編集」
◆もちこ「綺麗に読んで。とにかく綺麗に。そして悲しく」

◆Caori「そして儚く」
◆戸塚「難しいな……」
◆もちこ「大丈夫、君ならできるよ(適当)」

 

ところで、ふと横を向いて、真面目に戸塚を指導するかおりんを見たら、宗教画みたいになってましたので、ごらんください。
ロマネスク様式のキリスト教絵画にも見え、曼荼羅のようにも見える。つまり、ありがたさのハイブリットです。

 

国民的夫

 

のあのえる、途中から合流しました。

 

ー最後は、風景で終わるんだね。

 

◆梅田:『竹の木戸』もそうだったじゃない? なんかこう、サーッと渋谷村全体の雰囲気みたいな。これは、地上から、空に向かっててさ。
◆のあ:樋口一葉の『たけくらべ』も、最後、花街の室内の空間の一輪挿しの映像から、グッと引いた外の世界の伝聞の話で終わるんだよね。
◆梅田:これは手法なのかね。
◆のあ:カメラをグッと外とか、上とかに向けるような終わり方の小説、確かに、多いかもね。
◆梅田:僕やっぱりそういうの考えちゃうね。気になっちゃう。
◆のあ:映像的な手法なのかもね! アニメの『アンパンマン』も最後、「じゃじゃじゃーん♪」ってエンディングの音楽流れて、夕焼けの山並みとかで終わるね(笑)
◆スズキ:『アンパンマン』(笑) 大河ドラマとかもそういうの多いかも。
◆のあ:1回明るいところから暗い所に行ったり、大きい所から細かい所に寄ったりね。映画の手法って文学から来てる感じあるよね。今、うちでは音声で忠実に再現するっていう活動してるけど、誰か、映像で忠実に再現するっていうの、やってしてほしいな。さぁ、したまえ。
◆梅田:「たまえ」? 「たまえ」と言ったね? 僕がするのかい?
◆のあ:うーん。じゃあ、ちょっと誰か有名な監督に頼もう。戸塚、ちょっと売り込んで来てよ。
◆戸塚:え、俺が行くの? イヤです!
◆のあ:頼んでも、「なんなんだろう、こいつら」って思われるだろうね。ていうか「なんなんだろう、あの戸塚」って思われるんだろうね。
戸塚:あの戸塚だってことは解ってくれてんのかよ、監督。
◆スズキ:良かったね。
◆梅田:ただこれ、話してたのはね、映像化するにしても、「綺麗な秋じゃないね」って話してたの。柿とか栗とか紅葉とかじゃなくて。黄ばんだ、秋の空。薄濁ってるから。
◆のあ:フランドル画の風景画みたいな淋しい感じだな。灰色と黄色が混じっているね。
◆梅田:もう、どんよりしちゃう。次はさ、花火が打ち上がるぐらい明るい物語にしよう。
◆のあ:この時代の文学って、ハッピーな話がなかなか無いよね。あったっけ。
◆スズキ:あ、無いね。思い浮かばないよ。
◆のあ:『舞姫』とか最悪だもんね。
◆梅田:最悪だね。

 

 

ー秋って言うけど、これって秋だけの話じゃないね。

 

◆のあ:結構長いスパンの話だよね。2年ぐらい経ってるね。
◆スズキ:そこが『竹の木戸』と違うね。あれは数ヶ月の話だから。
◆のあ:作品通して秋みたいなイメージ持ちがちだけど、実は結構、春、夏、秋、冬って一巡してて、それぞれの季節の話、してるんだけどね。
◆スズキ:でもさぁ、出て来る植物が松とか、ずっと夏も冬も真っ黒で、変わらないものがあるから。ずーっと、信子のつまらなさとか生活の単調さを出して来るじゃん? だから季節感とか時間の流れを感じ辛いんだよなぁ。
◆のあ:たしかに。

 

ーこの話、国木田独歩『竹の木戸』よりやるせなくなるの、何でだと思う?

 

◆梅田:僕は、あの話よりも、なんかすっごい、モヤモヤするの、これは。
◆スズキ:『竹の木戸』は、磯吉以外、わりと人間らしい感じがしたんだけど。
◆のあ:大庭家は、植木屋夫婦を切り離して、今後も何事も無かったように幸せに暮らしていくんだろうな、っていう、ハッピーエンドが半分残っている感じだったのかな。お源だけちょっと可哀想だったけれども。
◆スズキ:あれは、磯吉という特殊な人間による一時的な災害のお話だった気から。でも、こっちは、みんながみんな、解って行動した故のディザスターという風に見える。
◆のあ:お源もちょっとバカっぽい所があったもんね。自業自得っぽい所というか。解ってなくて体当たりで行動してる部分が。
◆スズキ:『秋』に出て来る人たちは、自分の投げた石がどんな波紋を呼ぶか解った上で行動してるから。そこがなんかなぁ。
◆戸塚:あ。『竹の木戸』の話は、ある程度、オチみたいなものが付いてるんだけど。『秋』は、俊吉に関してはちょっとよく解らないけど、姉妹中心に、みんなモヤモヤしたものを抱えたまま終わっている所が、ちょっとなぁ。
◆スズキ:なるほどね!
◆のあ:『竹の木戸』は、人間関係が2つ、完全にぶっ壊れて、縁が切れてるからね。そもそもお源が死んで夫婦関係が壊れるし、磯吉は大庭家と縁が切れて引っ越すし。でも、『秋』の人たちは、関係性の、と或る一部分は壊れたかもしれないけど、表面上の付き合いが続いちゃいそうな余韻があって。
◆スズキ:『竹の木戸』はフラストレーションが一度、爆発してるからね。『秋』でも、照子がもっとぶっちゃけたりしたら、スッキリしたのかもしれない。
◆梅田:照子はね、虫をね、あのヨコバイを! 潰せば良かったんだよ! ピシャンとね。それか、鶏が卵投げ付けるとか。「浮気してんじゃねーぞ!」って。それか、もう自死するか。そしたらスッキリするよ!
◆スズキ:激しいなぁ(笑) 俊吉と信子が庭から戻って来たら、照子が死んでるのか。
◆のあ:大量のヨコバイを食べてね。むしゃむしゃー!
◆梅田:え、ヨコバイ、家の中にそんなにいっぱいいたの?(笑)
◆のあ:信子も爆発すれば良かったんだよね。
◆スズキ:「譲ったんじゃねーよ、安全パイに逃げたんだよ! 金持ってる男と結婚したけど俊吉が良かったと思ってるんだよ!」って。爆発しないからだよね。
◆のあ:そっか、お源は1回、磯吉に対して爆発してるのか。泣いたりとか。爆発したのにダメだから、死んでるっていう、諦めがあるからね。
◆スズキ:そうそう、解決しようとしてるから。照子は翌日も平静を装おうとしてるじゃん。
◆のあ:でもこれがわりと現実じゃない? 『竹の木戸』みたいなことってなかなかないじゃん(笑)
◆スズキ:『竹の木戸』な日常はイヤだよ(笑)

 

 

ーだからイヤなんです。

 

◆スズキ:日常だからこそ、リアルで、なんかイヤなんだろうね、生々しくて。
◆梅田:そうそう。それなのよ。何回か、喧嘩したのに、翌朝、何事もなかったようにする場面、よく出て来るじゃない?
◆スズキ:夫と信子もそうだし、照子と信子もそう振る舞うね。
◆のあ:わたしね、そういうのできないかもしれない。「朝が来たから」「寝て起きたから」っていう理由で、話し合いに決着が着いてないのに、切り替えようと思ったことがないかもしれない。納得するまでは。翌朝も、続きを話しちゃうような気がする。「昨日のこと、わたしも悪かったけど、あなたはここに関しては謝ってほしいんだけど」って(笑)
◆梅田:僕もわりとそうなんだけど。理屈っぽいから。何か一緒にやる人と、モヤモヤはしたままやりたくはないじゃない? でも多分、この人たちは、本当に仲良くなってなくて、お互いを取り繕ってるから、そこで切り替えができちゃうんじゃないかな、って僕は思った。
◆スズキ:波風を立てないようにしているっていう。
◆のあ:気に入らないポイント話し合ってまで一緒にいたい間柄じゃないのかな。どうなんだろう、これって日本的ってことなのかな。なんか、現代だと、ハッキリ言うのは欧米風の考え方で、ぼかすのは日本風なイメージあるけど。逆にこれは、近代化してるってことなのかな。
◆スズキ:あ、どうなんだろう。江戸時代ならハッキリ言うのが文化なのかもしれない。だって、これ『竹の木戸』のお徳とお源だったら、黙っちゃいないでしょ? あそこまで行くと、理解できないじゃん。
◆梅田:そうね。「あんたぁ! 俊さんと庭にいたらしいじゃないか!」「まぁ勘弁しておくれよ!」ってね。目で殺し合っちゃうからね。
◆のあ:っていうと、近代化の象徴である大庭家に近いメンタリティーなんだろうね。お清さんとか真蔵とか。事なかれ主義に寄っている。
◆スズキ:ノーブルな人たちなんでしょうね。
◆梅田:そりゃそうでしょう。間違いなくノーブルな人たちだよ、信子さんとか夫さんとか。
◆スズキ:女学校行った後、大学まで出ちゃってさ。一橋とか。エリートだよ。

 

ー夫はエリートだけど、信子の趣味には理解が無いね。

 

◆のあ:これ、朝ドラの『花子とアン』を思い出すんだ。仲間由紀恵さんの夫役が吉田剛太郎さんで。商売で成り上がったお金持ちだけど、元々そんなに教養が無いから、妻の趣味に理解が無くて。着物とかアクセサリーは買い与えるけど、妻が何に興味を示して燃え上がっているのか、共有することができない。結局、妻は文学青年と駆け落ちする。
◆スズキ:別の生き物みたいな感じなんだろうね。
◆のあ:でも、ドラマの設定だと、彼なりに、妻のそういう面への憧れはあって、「俺は解ってやれないけど、あいつは本を読んでる時が一番幸せそうな顔をしているんだ」みたいな場面があるんだよね。
◆梅田:なんやねん! なんやねん!
◆のあ:ただし、信子が夫とは違う世界にいるとして、じゃあホントに俊吉と同じ枠の生き物なのか、信子が俊吉の世界に入れているのかっていう話だよね。

 

ー信子と夫は別行動?

 

◆のあ:ねぇ。すっごくどうでもいいことなんだけど、気になってることがあって。信子が俊吉と照子の家に泊まることになった場面あるじゃない? 「夜が更けて、とうとう泊まることになった」って。これ、どうやって夫はそれを解るのかな? 携帯かな? メールかな?
◆スズキ:あぁ。
◆のあ:現代だったらすぐ連絡して「今日泊まりになったー」とか言えるけど。この時代は何だろう? 時間決めてどこか喫茶とか旅館とか、電話あるところで電話入れるのかな。それか、「あれ? 妻、帰って来ないな。泊まりか!(納得)」ってなるのかな。心配じゃないのかな。
◆梅田:夫、忙しくしてるんでしょ。これは夫の出張について来たんでしょ、信子は。
◆スズキ:そもそも、東京に着いた後、別行動とか? 信子は実家にいて、そこから照子の家に来たとか。
◆のあ:別行動なの!?
◆スズキ:別行動なんじゃない?
◆梅田:夫はなんだか所用が沢山あって。構ってられないんじゃない?
◆のあ:構ってあげてよ(笑)
◆梅田:いやぁ、よくあるサラリーマンなんだと思うよ。そういう旦那を甲斐甲斐しくしく支えるのがいい妻、っていう。

 

 

ー夫だけ名前が無いよ!

 

◆梅田:こないだね、かおりん(Caori)と一緒に帰っててね、電車の中で「3人は役名があるけど、梅ちゃんだけ名前が無いね。夫じゃん」って言われて。「そうだね、名前が無いね!」って話をしてたの。僕だけ名前が無いの。
◆のあ:じゃ、付けよう。何がいい? 駿介?
◆スズキ:俊吉と駿介か。
◆戸塚:登場人物の半分が俺みたいになるじゃん。
◆スズキ:紛らわしい〜(笑)
◆のあ:じゃあかおりんは戸塚信子か。
◆スズキ:俺の妻は照子でしょ。
◆のあ:あ、そうか。
◆スズキ:紛らわしい〜(笑)
◆梅田:かおりんとは、「夫に名前が無いのは、ジェネラリーな、オーディナリーな、概念としての「夫」なのかな」って話してたんだ。
◆のあ:そういう大事な話は、電車じゃなくて稽古でしてよっ(笑)
◆梅田:たしかに。すまんっ(笑)
◆スズキ:『竹の木戸』の「老母」とか、「細君」とかと同じポジションじゃないかな。役割の方が重要なんじゃない?
◆のあ:そう考えると、『竹の木戸』の「礼ちゃん」「金公」「初公」は、出てすら来ないくせになんで名前あるんだろうね(笑) あえて出て来ない癖に周辺環境にリアリティーを増幅させるためかなぁ。
◆スズキ:命名基準が不思議だよね(笑)
◆梅田:でもね、この作品の夫は、やっぱり名前を付けたらダメなんだよ。僕、それは解る。その人の個性とか人格とか考え方が大事な訳じゃないから。世間一般の、この時代の「夫代表」だからさ。
◆のあ:あ、そっか。それで解った。礼ちゃんのことって、「礼ちゃん」って呼び掛けなきゃいけないじゃん? 本人に。「おい、そこの子ども」って呼べないじゃん? 金公のことを「おい、友人A」とは呼べない。お徳のことも「おい、女中」とは呼べないんだよね? でも、「ご隠居様」「奥方様」「親方」「増屋さん」は、そのままそう呼べる。真蔵のことも、「旦那様」とは呼べるけど、真蔵にはパーソナリティーがあるから、名前が付いてるんだね。この『秋』の夫は「あなた」「旦那様」「主人」って呼べれば、誰であってもいいってことだよね。
◆梅田:そうそう、真蔵は、いわゆる夫じゃないんだよ。
◆スズキ:ちょっと、まんま、作者っぽいポジションだったね。
◆梅田:そう、なんか典型的ではない性格を有していたじゃない? もし明治然とした、「1言ったら、みんながいっせいに言うこと聞く」っていうような、家父長制の、強い夫だったとしたら、明治代表の「夫」って呼ばれるかもしれないけど。そういう人じゃないし。真蔵っていうキャラクターの特異さの方が色濃く表現されてて、そこが描写されてて。でも、この夫の行動は、さもありなんって感じ。
◆スズキ:仮名付ける?
◆梅田:竹内涼真。
◆スズキ:出た(笑)
◆のあ:わたしはねぇ、昔だったら高嶋政伸さんとかだと思ってたの。でも今は凄いことになっているからなんか違うね。
◆梅田:あの人はもう妖怪の領域になっちゃったからね。ねぇ、あの人って、あんな人だった!?(笑)
◆のあ:あと、ちょっと年齢高いけど、チームナックスの安田顕さんとか。綺麗で神経質な感じの人がいいね。
◆梅田:牛乳鼻から吹き出す人か。
◆のあ:その情報無かった(笑) 同じチームだけど戸次さんでもいいね。
◆梅田:解るー。
◆スズキ:半沢直樹は?
◆梅田:あれはむしろ俊吉じゃないかな。
◆のあ:「半沢直樹」なら、むしろ滝藤さんが夫さんじゃないかな。

 

ー関西人が卑しいって酷いよね。

 

◆梅田:これは完全に芥川龍之介の偏見でしょ(笑)
◆のあ:これって、歯が抜けてて、赤いキャップ被って、ビニル袋持って、カニ道楽の前にいるおっさんのようなこと? 自動販売機の裏側とかからフラッと出て来るおじさんのこと?
◆梅田:ピンポイントだね。凄い解るけど。卑しそうだけど(笑)
◆スズキ:でも、夫さんのさ、下卑た同僚たちと意外に話が合うっていうシーンあるじゃない?
◆のあ:あったっけ?(笑)
◆戸塚:え。あったっけ……?
◆梅田:あら、そんなのあったっけ?(笑)
◆スズキ:あったよ! あ、ここ、ここ。ほら、この神戸の、舞子に行った時のこと。同僚たちとうまくやってて。信子からすると相容れない、理解できない、イメージ悪い人物たちと、意外に上手くやっているっていうか「気が合うらしかった」って書いてある。きっと、飲んだくれて「うちの嫁がさぁ」とか言うタイプなんじゃないかな。
◆梅田:そういう人って大正時代からいたんだね。
◆スズキ:ホントそう! いたんだよ!
◆梅田:受け継いでいるね、サラリーマンの遺伝子を。
◆スズキ:脈々と!
◆梅田:脈々とねぇ〜。イヤだわぁ〜。
◆スズキ:「嫁のいる家は牢獄だよ!」「小説書いてて襟が無いんだよ!」って。
◆梅田:当時からいたのか。
◆のあ:THE☆みんなの夫なのか。
◆スズキ:国民の夫。国民的夫だよ。
◆梅田:それ、なんか急に良さそうじゃん(笑)
◆のあ:芥川は、そんな夫を、ダサいというか、つまらん男だと思ってたんだろうね。
◆スズキ:うん。芥川は、俊吉側の視点から、夫を否定的な描写していると思う。

 

ー信子ってダメ主婦だよね。

 

◆スズキ:家事できない系じゃないかな。
◆のあ:当時は家にいて、全部できないとダメだったんだろうね。わたしね、この時代に、家事が無駄にプロフェッショナル化されたと思っている。女性が暇すぎて、家にいすぎて。アメリカの家電の広告とか、できる主婦の雑誌とか教本ができて、台所の設備が進化して、女学校が進化して。本来別にやらなくてもいい「やるべき」「すべき」「これがあるべき手本」っていうのが、ここでできちゃったんだと思う。現代も残っちゃってるし。
◆スズキ:「羽仁もと子」的な! ノウハウが蓄積されちゃったんだろうね。絽刺しとかね。
◆梅田:文学とかやっちゃってる時点で、ちょっと違う方に目が向いてるんだろうね。
◆スズキ:文学って、目に見える形で、生活に使い辛いからね。
◆梅田:文学やったら家事なんてできないよ。文学だもの。
◆スズキ:金にならないしな。
◆のあ:わたし、文学専攻だったんですが(笑)
◆梅田:あ、えっと、別に、何1つできないとは言ってないさ!(笑)
◆のあ:いやぁ〜結局できないんだなぁ〜(笑)

 

 

ー俊吉をどう演じるのか!?

 

◆戸塚:俺は、俊吉演じる上では、信子のことは別に従姉妹であるとか、文学の話をしている、ぐらいの認識でいていいんですよね。
◆スズキ:そうじゃないかな。
◆戸塚:これ、照子のことを好きかどうかも解らないですよね。
◆のあ:芥川は「自分の妻になる女は芸樹に理解が無いぐらいで結構」って言ってるから、ちょっとバカなぐらいが可愛いとか思っているかもしれない。
◆戸塚:多分、凄い恋愛結婚とかじゃないと思うんだけど。
◆スズキ:物足りないとか、信子の方が良かったとかは、思ってないんじゃないかな。
◆戸塚:うん、思ってないと思う。もし、本当に信子の方が良かったって思ってたら、俊吉なら、2人きりになった時に、信子に直接それを言っちゃうと思うんだよね。ただね、解らないのは、こいつが発する思わせぶりな発言とかが、特に意味が無く言ってるのか、それとも、意味があって言ってるのか。このシーンは難しそうです。
◆スズキ:芥川は解ってる。芥川は解ってるんだけど、俊吉は解ってないんじゃない? そこだよね。
◆のあ:俊吉が……解ってやってるなら……1番怖い説だよね。
◆戸塚:そう、怖いんだよ。
◆スズキ:そう、それはゲスいんだよ!
◆のあ:戸塚は、どうやるのがやりやすいの? 演技としては。解ってるていか、解ってないていか。
◆梅田:これって、俊吉が解ってやってると、もうお話が終わっちゃう気がする。「悪いのはコイツだ!」って。
◆戸塚:そうそう。聞く側が「もしかしたらこいつ解ってやってるのか?」って思うぐらいが丁度いいと思う。
◆スズキ:こっちからそれを出しちゃうとね。全体的に思わせぶりで、結論を出さない感じじゃん?
◆戸塚:結論を出さないことが、この作品の意義なのかな、って。
◆梅田:やっぱジャパ〜ンだよ。
◆のあ:でも、照子は、意外に「お姉様も好きだけど、俊吉さんは貰います」って、結構正直に言っていているよね。手紙だけど。
◆スズキ:そこが、照子の純粋であり、従順であり、弱い所でもあり、強みでもあるね。
◆梅田:そしてそれを知っていて喜ぶ、信子。ジャパ〜ンだね。
◆スズキ:そしてそれを知っていて弄ぶ俊吉だったら、もう許せないよ。
◆のあ:そして更にそれを解っている鶏。
◆梅田:鶏! 可哀想に! そりゃもう、2人が庭に来たら、寝たふりだよ(笑)
◆のあ:それか、母が黒幕だったら怖くない? 信子に縁談を持って来て、照子と俊吉をくっつけて、信子にそれを知らせる。
◆梅田:いいね、ホラーだね。

 

ーリアル俊吉の生態。

 

◆のあ:最近ね、心理を知りたいと思って、俊吉っぽいやつ3人ぐらいと友達になったんだけど。
◆梅田:お。どうだった?
◆のあ:やつらはやっぱり酒を好むね。
◆梅田:やっぱそうなんだよ。やつらには、酒なんだよ。
◆のあ:あと、やたら桜を見たがるね、この時期。
◆梅田:どうせね、夏になったら花火、秋になったら紅葉を見たがるよ、多分。そんで、冬になったら雪見したがるんだよ。理由なんて何でもいいんだよ、風流だったら。彼らが見たいのは、酒飲んでる自分だから。
◆スズキ:うわぁ。
◆のあ:よく解ってるね、その通りなんだよ。
◆梅田:俊吉はそういうやつだから。
◆のあ:あとまぁ、女たらしというよりは、本当に、根っからの人たらしだね。
◆梅田:そうそう、女だからって訳でもないんだよね、やつらは。
◆スズキ:やつらはね。人ったらし、解る。解るなぁ。
◆のあ:楽しそうでいいな、と思った。あんまり先のこととか考えてないっぽい。
◆スズキ:風来坊なんだね。
◆のあ:そう、その場が楽しくて、ほろ酔いで、桜が綺麗だったら、見たがるんだよ。見てる間が浮かれてて幸せなだけだから。
◆スズキ:だから、月見たくなるんだね。「いい月だよ」って、庭に行って、思い付きで鶏小屋見るんだろうね。全部気分なのかな。

 

 

ー従姉妹って結婚していいの?

 

◆戸塚:たしか、従姉妹は大丈夫なはず。
◆のあ:従姉妹っていいんだ! 現代でも?
◆スズキ:4等親離れてるのかな。おじさんはダメで、おじさんの子は大丈夫なんだよ。
◆梅田:ずーっと従姉妹同士が結婚する村とか、やばそうだね。そういう村さ、金田一耕助とかに出て来そう。従姉妹とは結婚しないなぁ、今の価値観で言ったらね。
◆のあ:親戚of親戚だもんね。
◆スズキ:今と親戚の捉え方が違うのかもね。

 

それいけ響け夫の声

 

引き続き、梅田節が炸裂しております。
後半は、まだ語られていなかった人物、信子の夫について!
梅田、出番です!

 

 

ー信子と夫は相性が悪い?

 

◆スズキ:信子がこんな浮ついた感じじゃ、夫も可哀想だね。
◆梅田:でもまぁ、夫さんはね、しょうがないのかな。この時代の男性だからさ。信子がちょっと不満に思うのも。
◆スズキ:まぁ浮気される典型パターンの夫だよね。
◆梅田:僕ならね、信子が本気で小説家になって物書きしようとしたらさ、「シャツぐらい自分でやるよ」ってなるよ。洗濯とかも自分でやるし勿論。
◆スズキ:えらーい!
◆梅田:いや当たり前だよ! でもそれは現代だからで。この時代は、男は男の仕事、女は女の仕事みたいなコモンセンス(常識)があるから、しょうがないのかな、って。
◆スズキ:考えてみるとさ、俊吉と照子のところには女中がいるでしょう? この夫も、女中を雇って、信子の仕事を応援するっていうやり方もあったはずだよね。
◆梅田:夫は常に「倹約したい」みたいなこと言ってたよね。
◆スズキ:そっか。こいつ倹約家だったんだ。ケチか。「ネクタイも、手作りより買った方が安いじゃん」的なこと言ってなかった?
◆梅田:ケチ、うーん……そうかもしれないけど。夫さんはねぇ、大阪行った時もさ、周りの人と比べて身綺麗な感じって書いてあったし。こだわりがあるんじゃないかな。ほら、この夫ってきっと、見た目がシュッと綺麗で、あの人みたいな……最近のイケメン俳優で、いない? ここの……顎にほくろがある人(竹内涼真)。
◆スズキ:あぁ! JRの青森のポスターの人(三浦春馬)?
◆梅田:ここにほくろがある人だよ(竹内涼真)。
◆スズキ:銀行だか郵便局だからのポスターの人(三浦春馬)?
◆梅田:あ、そうそう! シティーボーイ風だけど中身は古風な感じの人(竹内涼真)。
◆スズキ:あぁ、その人かぁ(三浦春馬)。
◆戸塚:今、検索したんですけど。「竹内涼真」ですよ。
◆梅田:それ!!(竹内涼真)
◆スズキ:それ!?(竹内涼真)
◆戸塚:違いました?
◆スズキ:そんなに若い人か(竹内涼真)。
◆戸塚:この人は仮面ライダーの人ですよ(竹内涼真)。
◆スズキ:そっちもほくろ付いてるんだよ(三浦春馬)。
◆梅田・戸塚:誰だ?
◆スズキ:そっかぁ、2種類以上いたのかぁ、くそぉ。
◆戸塚:2種類?
◆スズキ:この夫、現代だったら、ちょっと眉毛整えたりとか、うっすら化粧とかしてるんだろうね。お肌とか白くてね。
◆梅田:お風呂上がりにヘアバンド巻いちゃう、ネイルケアしちゃう、的な。
◆スズキ:お、でもヒゲ生やしてるんだよね。
◆梅田:そうね。
◆スズキ:さっきの俳優、ヒゲを生やしたらどうなるんだ?
◆梅田:やっぱり綾野剛?
◆スズキ:あ、確かに、あの人の顔の上、ヒゲ、時々いるね。清潔なヒゲなんでしょうね。無精髭じゃなくて。
◆梅田:そうそう、意図のあるヒゲだよ。意図のないヒゲとは全然違うよ。見たら判るもん。「あ、あのヒゲ、あえてのヒゲだな」「ただ生えてるだけのヒゲだな」って。トリミングってあるじゃん。
◆スズキ:いい人ではあるんだろうな。悪い人ではないと思う。
◆梅田:いい人なんだけど、あんまりよく見えてないんだろうね。

 

 

ー夫は一流大学のエリート

 

◆スズキ:夫は一橋大学だから、ちゃんとしてるのかな。一橋大学ってやっぱりそういう所なのかな。
◆梅田:お堅いんだろうね。早稲田とか慶応とはちょっと違って。
◆スズキ:俊吉って早稲田の文学部にいそうじゃない。
◆梅田:とりあえず、信子みたいな女性は、ICUにはいないね。
◆スズキ:そうね! 信子は、ICU生のように「今日は、楽だから。寮からジャージで学校来ちゃいました〜」みたいなこと、絶対しないね。基本ピンクとか白のコーディネートで、ちゃんとおしゃれに決めて来そうだね。
◆梅田:この中で唯一、ICUにいそうなのは俊吉かなぁ?
◆スズキ:意識高い系のICU生ね。
◆梅田:ICUにいるじゃない、たまに。俊吉みたいな罪深い人。モテモテの。
◆スズキ:いるね。
◆梅田:もう僕はね、両手を振って、大きな声で叫びたい。ほら! 周りをよく見て! みんなが不幸せになっていくよ! って。教えてあげたい。言ってあげたい。
◆スズキ:ほんと、なんなんだろうね、あの男はね。

 

ー夫のセリフを読んでみてどうですか?

 

◆スズキ:夫のセリフは前半のネチネチ感がいいですね。
◆梅田:僕さ、もうちょっとネチネチを強く出した方がいいのかな? って思ったんだけど、どう?
◆スズキ:確かにね、なんか、いい人が諭してあげてるみたいには聞こえがち。
◆梅田:もっとイヤな感じの方がいいかな?
◆スズキ:うーん、でもこれはまだ序盤だからさぁ、まだ少しはいい人感あってもいいのかなって思ったよ。
◆梅田:でも、なんか不満を漏らしてる感が足りないような感じ。ネチネチやると早くない?って感じ。ちょっと不満が出てきたぐらいはもうちょっとやった方がいいのかな、って。
◆スズキ:「いつになく」嫌味を言ったっていう書き方だからね。色の付け方って難しいよね。自分でやってる時と、録音したの聞いてみた結果も、聞いてみるとまた違ったり。

 

 

ー録音して気になった……こだまする! 僕の声!

 

◆梅田:僕の声ってさ……すっごい、こもっちゃうんだよね! 響くっていうの?
◆スズキ:あぁ〜。梅さんの声は、謎の反響みたいな感じあるよね。
◆梅田:戸塚くんの声って、遠くでもクリアに聞こえるの、音量が小さくなるだけで。
◆戸塚:そうなんですか? 考えたことないけど。
◆梅田:僕と戸塚君の声が同時に聞こえると、同じ部屋で録ったのに、マイクからの距離関係無く、2人は違う空間にいるんじゃないか、って思っちゃう。宇宙と工場とか。教室と洞窟とか。僕は1人でかまくらにでも頭突っ込んでるんじゃないかっていう。喋り方を変えればいいのかな?
◆スズキ:普段から響いてるから、声質の問題じゃない?
◆梅田:やっぱ!? 響いてる!? 何でだろうね!? 戸塚君の声は高かろうか低かろうが、遠かろうが近かろうが、クリアじゃない?
◆スズキ:「声を響かせるな」って、演技しててなかなか言われない指摘だよね(笑) 役者に要求することじゃないよ。本来、いいことなはずなんだけど(笑)
◆梅田:普通に喋ってるつもりなんだけどね、電車の中とかでも、一緒にいる人に「シーッ! 声大きいから!」って言われるんだ。すっげえ、聞こえてるみたい。周りの人にも。そんなに声出してるつもり無いのよ?
◆スズキ:やっぱ、入れ物の問題じゃない? 胴体とか、頭蓋骨とか。響くようにできてるんだよ、きっと。
◆梅田:え。空洞とかがあるのかな。
◆スズキ:体に空洞!?(笑) 他人より反響してるんじゃない?
◆梅田:自分でも、響いてるのが判るんだよね。アーアーアーーーー♪ これ裏声ね、アーーーーーッ!
◆スズキ:100%裏声だったら大丈夫かもしれないけど(笑)
◆梅田:地声は、鐘がゴーンってなってる感じよね。『竹の木戸』聞いててね、ほら、自分でイヤホン付けて聞いてるとね、気になったんだよ。他の皆さんとなんか違うんだよ、わたしだけ。
◆スズキ:『竹の木戸』の時は、録音した部屋が広かったから余計響いてたかも。天井とかに跳ね返って。でもね、いずれ聞く人が慣れるから。
◆梅田:聞く人って、この朗読シリーズを視聴する人?
◆スズキ:そうそう、「あ、この役、梅田さんだ。相変わらず響いてるなー」って(笑)
◆梅田:「梅田を覚えてください」って?(笑) 「1人だけ、いつもかまくらの中で喋ってる梅田さん」? 慣れてくれるかしら。あ、あと僕、「ラリルレロ」がダメなんだよね。あと、句読点の前が消えちゃうんだね。「ちゃんと言おう」って意識しないと。

 

ー夫は何歳なんだろう?

 

◆スズキ:例えば、この「襟飾りにしてもさ」の「さ」は、伸ばした方がネチネチ感が出るとか?
◆梅田:「その襟飾りにしてもさぁ〜」って感じ?
◆戸塚:なんか、語尾を伸ばしすぎると現代っぽいね。
◆梅田:そうだね。思ったより。
◆戸塚:若者っぽくなっちゃうかも。
◆梅田:あれ、待って。夫って何歳だったんだっけ? 信子よりは年上かな。
◆スズキ:夫は、高商を卒業したてなんでしょ?
◆戸塚:「出身」っていうだけで卒業したてかどうかは判らないですよ?
◆スズキ:学生時代に縁談が進んで、卒業と同時に結婚したんじゃないの? あ、違うか。信子が卒業する頃には、夫はもう働いていたのだとすると、23歳とか……? 信子とは、年齢近いのかな。
◆梅田:年齢差、どのぐらいなんだろうね。照ちゃんは、信子より4-5歳離れてるのかな。
◆スズキ:そんなに信子と年が離れてないわりには、夫の方が年上っぽいイメージあるんだよね。
◆梅田:信子を子ども扱いしてる感じがあるよね。当時の、「主人と奥さん」っていう立場もあるのかもしれない。

 

 

ーサラリーマンはつらいよ。

 

◆梅田:夫さんってさ、お酒はいつから飲んでたのかな。「初めて、お酒飲むなぁ、ドキドキ!」とか無さそうじゃん。俊吉は、「酒を飲むことが大人だ」「男のたしなみだ」みたいなので、かぶれてるっていうか。夫にとっては、そういう特別な物でもないし、日常の中に酒がありそうじゃん。僕が、夫のあんまり好きじゃない所はさ、酒臭いまま寝てさ、隣の信子が臭くて眠れなかったってさ、どうなの? って思う。
◆スズキ:梅さんはそういうことやらないのか。
◆梅田:いや、やる(笑) いや、昔だったらあるかもしれないけど! 今は、無い。正体不明になるまで飲んだりしないもの。
◆スズキ:夫さんは、仕事でイヤなことでもあったんじゃないの?
◆梅田:この人、多分、営業さんなんじゃない? 付き合いの接待とか。
◆スズキ:きっと体育会なんじゃない?
◆戸塚:この当時の会社員ってそういうのあるんですか?(笑)
◆スズキ:いっそうあるんだと思ってた。「俺の酒が飲めないのか」みたいなの。
◆梅田:そういうノリが伝統的なんだったら、大正時代にもルーツありそうだよね。日本が近代化してさ、明治時代でサラリーマンが出現してさ。サラリーマンたるもの何をするべきなのかが段々固まって来てさ。最終的に「接待」っていう所。
◆スズキ:こないだの『竹の木戸』で、主人公の真蔵がサラリーマンで、エリートだったから、この夫もエリートだよね、わりと。

 

ー夫は、何が楽しくて生きてるんだろうね……。

 

◆梅田:え。
◆スズキ:だって。
◆梅田:彼なりに何かあると信じたい!(笑)
◆スズキ:趣味って言えるもの、晩酌して経済新聞とか読んでるのしか出て来なくない?
◆梅田:彼なりの理想の生活が、まさにそれなんじゃないですか? でも、理想とは乖離してくるからイラッとくるわけで。
◆スズキ:「俺の理想の生活が、信子の小説ごときのために脅かされている」と。
◆梅田:そうそう、具体的な展望とかがあるわけじゃなくて、「慎ましやか」とまで言わなくても、彼なりの「テンプレートな結婚生活♪」っていうのがあって。経済の話題とか、食事したりお酒飲んだりしながら、そういう内容を喋り合ったりしてさ。
◆スズキ:へぇ……。

 

 

ーあんまり周りにいないタイプ?

 

◆梅田:あ、今思ったんだけど。あんまり、よっこ(スズキヨシコ)の周りに、こういう人いないんじゃないかな、って。環境的に。出会ったことがないのかもね、こういうタイプの人に。
◆スズキ:あぁ、そうね。多分、無い。言われてみれば。
◆梅田:俊吉タイプの方が、よっぽどいっぱいいるでしょ、周りに。
◆スズキ:いる! 俊吉は、いっぱい存在する。ちょっとずつ色んなタイプの俊吉がいる。意識して計算して俊吉な人、できてなくて天然で俊吉な人。基本、共通してチャラいんだけど。夫みたいな人が好きっていう人もいるだろうね、パートナーとして。
◆梅田:そうね。その後、どういう生活を一緒に送っていくのか、イメージしやすいんじゃない? そのうち夢のマイホーム買って、車買って、時々は旅行にも行って、定年になったら年金で楽しく暮らして、みたいな。もう、俊吉は、絶対にしないねそんなこと!
◆スズキ:あ、しないね。できないね。安定した人生とか。
◆梅田:年金というシステムそのものに、何かひとこと言っちゃいそうだよね。
◆スズキ:払うかどうかを検討しそうだね。