中馬智広ですぅ

 

引き続き、暖房が効かない寒い部屋での稽古です。

 

☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆

 

ここからは、稽古でやった場面と、それについてキャストが話した内容をお届けします。
作品本文は、青空文庫からコピーしたものに、読み易いよう改行を加えています。
キャストが話した内容は、録音した物を文字に起こし更に編集しています。
なお、議論は明確な答えを出すものではなく、情報は必ずしも正確ではありません。
演出を付けるために自由な発想に基づいて発言しております。

 

☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆

 

国木田独歩より 竹の木戸

 

其処で平常の通り弁当持たせて磯吉を出してやり、自分も飯を食べて一通片附たところでバケツを持って木戸を開けた。

お清とお徳が外に出ていた。お清はお源を見て
「お源さん大変顔色が悪いね、どうか仕たの」
「昨日から少し風邪を引たもんですから……」
「用心なさいよ、それは不可い」
お徳は
「お早う」
と口早に挨拶したきり何も言わない、そしてお源が炭俵の並べてないのに気が着き顔色を変えて眼をぎょろぎょろさしているのを見て、にやり笑った。お源は又た早くもこれを看取りお徳の顔を睨みつけた。お徳はこう睨みつけられたとなると最早喧嘩だ、何か甚い皮肉を言いたいがお清が傍に居るので辛棒していると十八九になる増屋の御用聞が木戸の方から入て来た。増屋とは昨夜磯吉が炭を盗んだ店である。

「皆様お早う御座います」
と挨拶するや、昨日まで戸外に並べてあった炭俵が一個見えないので
「オヤ炭は何処へ片附けたのですか」

お徳は待ってたという調子で
「あア悉皆内へ入ちゃったよ。外へ置くとどうも物騒だからね。今の高価い炭を一片だって盗られちゃ馬鹿々々しいやね」
とお源を見る、お清はお徳を睨む、お源は水を汲んで二歩三歩歩るき出したところであった。
「全く物騒ですよ、私の店では昨夜当到一俵盗すまれました」
「どうして」
とお清が問うた。
「戸外に積んだまま、平時放下って置くからです」
「何炭を盗られたの」
とお徳は執着くお源を見ながら聞いた。
「上等の佐倉炭です」

お源はこれ等の問答を聞きながら、歯を喰いしばって、踉蹌いて木戸の外に出た。
土間に入るやバケツを投るように置いて大急ぎで炭俵の口を開けて見た。
「まア佐倉炭だよ!」と思わず叫んだ。

お徳は老母からも細君からも、みっしり叱られた。

 

☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆

 

—中馬の立場。

◆中馬:これ、俺、店での立場上、どう思えばいいんですか。盗まれたことに関して。
◆スズキ:まぁ、盗まれたって言っても、1番下の人だし。アルバイト店員みたいなもんでしょ。「いやぁ、外に置いておくなんて、うちって雑な店だよね〜ヘッヘッへ」っいう自虐なのか。
◆のあ:今だと、一般的に、窃盗とか治安に対する「やばいッスよね、怖いッスよね」っていうテンションだね。
◆中馬:あぁ、今はちょっと深刻にやり過ぎましたかね。
◆スズキ:この場のみんなに、この話をしてどう思って欲しいのかね。
◆のあ:この人、凄い真っ直ぐで、ひねくれてないんだと思うよ。
◆中馬:え!?
◆のあ:いや、絶対ひねくれてないよ、どう考えても(笑)
◆中馬:そうかぁ……。
◆のあ:何を想像してたのかは知らないけど(笑) 「いやぁ、物騒ッスよね! みんなも気を付けて下さいね!」って感じの人だと思う。

 

—中馬の若さ。

◆のあ:ねぇ、増屋。
◆中馬:はい。
◆のあ:なんか、老けてるな。村の庄屋さんかと思ったわ。
◆中馬:え!
◆のあ:入りは、もっとテンション高いんじゃない?
◆吉田:うん、もっと若くて元気な感じなんじゃないかな?
◆栗田:なんか、増屋は、もっと場違いな明るさを出して欲しいんだよなぁ。このピリピリ緊張してる所に、いきなり飛び込んで来る、異世界の平穏な人。いっきに違う風を吹き込んで欲しい。
◆中馬:はーい。
◆のあ:軽いな。
◆栗田:最初に出て来た時、鼻垂らしてそう。
◆のあ:え? そんな増屋?
◆栗田:いや、中馬が。
◆のあ:中馬、鼻声はダメだ。もっとハキハキと! 清潔感とバイタリティー溢れる話し方をするんだ! 増屋は18-19歳だぞ!
◆中馬:あぁ〜そうか〜若さかぁ〜(溜息)
◆Caori:いや、中馬、何歳?
◆中馬:23ですけど。
◆Caori:ねぇ! 若いじゃん!
◆中馬:なんか、自然に話そうとすると老けるんですよ。このセリフに従って、この言葉遣い……「わたし」とか言うじゃないですか、これが現代の感覚で言うと年寄り臭く感じちゃって、引っ張られちゃうんですよね。
◆のあ:あぁ、そういうことか。
◆スズキ:落語に出てくる若い衆とかをイメージしてみたら?

 

—増屋は、俳優なら誰?

◆のあ:もっと爽やかな感じをイメージしてたんけどな。もっとベタな、若手俳優のような雰囲気でいいのにな。
◆中馬:誰ですか?
◆のあ:誰でもいいんだよ。菅田将●さんでも。
◆吉田:え、じゃあ岡田将●がいい。
◆のあ:いいよ素晴らしいよ。どのまさきでもいいよ。老人はやだ。
◆のあ:往年の小栗●さんとか。
◆吉田:それじゃあ、往年の中尾●慶君は?
◆のあ:え? 往年の中●彬?
◆吉田:あきよしだよ!
◆Caori:あぁ〜解る! 凄い解る。
◆栗田:いいね、合ってるね。
◆吉田:でしょでしょ。
◆栗田:そして、もっと、鈴●福くんみたいな。
◆皆:え!? ●木福くん!?

 

—アニメ「サザエさん」を観てみようか。

◆栗田:ちょっと福君を参考に、サザエさんもっかい観てみよう。
◆吉田:どういうこと?(笑)
◆のあ:三河屋のサブちゃんが出て来る回、無いのかな。
◆栗田:ちょっと待ってよ、膨大な量があるんだけど。
◆のあ:サブちゃんとか中島とか穴子さんってさ、関係無い話の時にフラッと出て来る準レギュラーだもんね。
◆栗田:どうやって探そうか……。

◆栗田:あ! ありました。サブちゃんが行方不明になる回があるよ。
◆皆:どういうこと……!?
◆栗田:流しますよ。画面見ちゃダメですよ、音だけ。

三河屋のサブちゃんが行方不明になって、
お店のおじさんが注文取りに来る、謎回を視聴しました。
Wikipediaで調べたところ、彼の人生の経歴もなかなか面白いですよ。

◆Caori:やっぱりサザエさんはゆっくりだなぁ〜。
◆吉田:解りやすいね。
◆栗田:解りやすいんだよなぁ。
◆中馬:なるほどね。上等の、佐倉ですぅ〜。ですぅ〜。
◆のあ:あぁ……中馬がサザエさん口調になる……!
◆中馬:ちゃーっす! 増屋、で〜すぅ〜。で〜すぅ〜。
◆のあ:もうサザエさんを止めるんだ! 中馬に悪影響が出てる。ていうか、なんで参考にしてるのタラちゃんの口調なんだよ!(怒) ちゃんと三河屋聴いてた?

 

—増屋は1番重要なことを言うおいしい役。

◆栗田:この「佐倉」のセリフは、もっと音楽鳴りそうな感じで言ってよ。
◆のあ:「次回、お源死す!」っていう感じの。クライマックスを司るおいしい役なんだけど。
◆栗田:だから、情報としては、「1俵盗まれた」んだってことと、「佐倉」っていう単語がピーンと聞き取りやすいといいよね。
◆中馬:さ〜くら〜ぁ。
◆のあ:それじゃ寅さんだろうが。
◆中馬:違いますよ。「さくらーぁ」って「カードキャプターさくら」で、シャオラン君がさくらのことを呼ぶじゃないですか。
◆のあ:そっち!? 寅さんだったけど。文章の中の単語1箇所だけ物真似入ってたらおかしいでしょ。
◆中馬:さくら〜ぁ。
◆のあ:あれ、段々「ちびまる子ちゃん」のクラスメイトに聞こえて来た。
◆吉田:もっと元気良く言いなよ。
◆Caori:元気な方が刺さるじゃん。
◆中馬:えー。だってこの後お源が死んじゃうの可哀想だな、と思うと。
◆のあ:あなたが殺すのよ。
◆中馬:あ〜。俺かぁ〜。でも知らないのかぁ〜。
◆のあ:中馬じゃなくて増屋だから。増屋、未来から来た人になっちゃうじゃん。
◆栗田:他人事だからこそ明るく言えるでしょ。
◆中馬:俺、何でも自分事だと思っちゃうから。
◆のあ:ジブンゴトって初めて聞いたな。さっき1回ちゃんと言えた時もあったのにね。
◆中馬:言い方を統一するのは難しいですよ。人間の細胞は、常に入れ替わっているから。
◆のあ:え?
◆中馬:海馬も入れ替わって行くから。細胞が循環して、新しくなった俺、それはもう別人だから。
◆のあ:代謝いいなオイ。

 

—キラキラふりがな。

◆スズキ:中馬のテキストでは、「炭は何処へ片付けたのですか」って、どうなってる? さっき「どっか」って読んでなかった?
◆中馬:えっと、「何処」は「どっか」って振り仮名ですね。
◆スズキ:あぁ〜ここは「どっか」が正しいんだ。面白いね。「どこに片付けたか」って訊くと、片付けた先の場所を質問してるけど、「どっかに片付けたのか」って訊くと、片付けたことそのものへのクエスチョンだからね。
◆吉田:お徳の「何炭を盗られたの?」で「なに」って読むのも面白いよね。
◆Caori:そうね、もう炭ってことは解ってて、炭の種類を特定したいんだもんね。
◆スズキ:これはもう文字を黙読することを大前提にしてるから面白いよね。
◆中馬:なんか、カラオケの歌詞の字幕みたいッスね。「永遠」って書いて「フォーエバー」って歌うみたいな。
◆スズキ:「本気」と書いて「まじ」とか。
◆栗田:「瞬間」と書いて「いま」とかね。

 

—お清さんは心配性?

◆栗田:今の演技だと、お清がちょっと意味深過ぎじゃない?
◆スズキ:あ、本当? 何がそうさせるんだろう。
◆栗田:なんだろう、心配し過ぎなのかな、この時点で。お清が元気無いとか具合悪いのかと思うぐらい。または、お源の顔色がそんなにヤバいのか!? って印象を与える。不必要に不安を煽ると、もう既にここでお源の死を予感してる感じ。まだ、お源が死ぬなんて夢にも思ってないはず。
◆スズキ:お清さんは心配性だと思ってた。
◆栗田:心配性だとは思うけど。その今出してる、か細さとか、元気の無さって、細君が担ってる気がする。細君は青白そうだな。細君みたいな女、俺、凄い好き。
◆のあ:気持悪いなぁ。
◆栗田:素晴らしいじゃないですか風邪引いただけで死にそうな女。
◆のあ:夏目漱石の小説に出て来そうな、何考えてるかちょっと解らない人ね。
◆栗田:いいなぁ。お清は、それよりはもうちょっと健康的でもいいんじゃないかな。
◆のあ:お清の立場として、心配するべき点があるとすれば、お徳が昨日の騒ぎの続きで、お源さんに直接「炭盗んだ」云々言い出したらどうしよう? っていう懸念はあるよね、きっと。
◆スズキ:お源をお徳から「守ってやりたいな」と思う気持ちは無いのかな。
◆のあ:仮に、守ってやりたい気持があったとして。で、例えば、お清が深刻に「顔色どうしたの?」ってお源に訊いて、相談乗るモードになったとして。もしお源が真剣に「昨日まで貧乏で炭が買えなくて辛くて泣いてたんですけど、今日はもう大丈夫になりました」とか言って来たら、どうしよう、って思わない? すかさずお徳が「炭?」って反応するじゃん? だから、気を遣ってるなら、サラッと振る舞うと思う。
◆吉田:うんうん。お清は、いい距離感とかわきまえてると思うんだよね。踏み込まないんじゃないかな。世間話の感覚じゃないかな。
◆栗田:だからって別に、「表面上、今まで通りにしなきゃ!」っていう変なギクシャク感が出るほどでもなく。この時点では、お清的に、特に裏の意味は無いでしょう。ただ単にお源の様子が疲れてたから気付いて口にしたってだけで。
◆スズキ:なるほどね。お源って、どのぐらい顔色悪いのかな。
◆Caori:わたし大泣きした後、顔に赤い斑点出たりするけど。そういうのかな。
◆吉田:うん、目が腫れるとか。泣いたな、って判る程度じゃない?
◆のあ:クマができてるとか。顔が青白い、とか。

 

—やっぱり強いお徳。

◆のあ:「おはよう」の4文字でこんなにアピールできるもんなんだね。
◆Caori:「おはよう」はヤバい。
◆吉田:お徳はね、人を傷付けるためだけに生きてるから。
◆Caori:レディースじゃん。
◆吉田:何かひどい皮肉を言いたくてしょうがないんだよ。……そんな気持になったことないな(笑)

 

—テキストを見ずに耳だけで聴いてみると?

◆栗田:文字追わずに目を閉じて聴いてると、「お清」「お源」「お徳」が、ガンガン出て来ると、誰が誰か混乱する。
◆のあ:真蔵と磯吉は判りやすいけどね。
◆スズキ:みんな「お」付いてるし。
◆栗田:スーッと行かれると、内容をこっちでキャッチしないといけなくなる。だから、ナレーションも、語尾はフェードアウトしない方がいい。
◆のあ:「語尾で息を抜かない」ってヤツね。
◆栗田:ナレーションの「こうなるともう喧嘩だ」は、これはどういう立ち位置なの? 完全なる地の文じゃなくて、お徳の脳内の考えを代弁してる感じでしょ。なんか解り辛いんだよね。
◆吉田:そうね、「と思って」とか、補足が無いからね。
◆栗田:ここだけ急に「」無しで。突然何なんだ? って思う。
◆スズキ:実況かな。お徳側に入り込んでるよね結構。
◆のあ:今、自分は、実況のつもりで読んだ。ちょっと講談師みたいな。
◆栗田:あんまり急がないで読んだ方がいいかもね。
◆Caori:リズムは今みたいな早いの好きだったんだけどね。
◆吉田:わたしも。
◆栗田:聴いてるだけだと、ちょっと解り辛いんだよね、

 

推理! どこから嘘なのか!?

 

引き続き、暖房が効かない寒い部屋での稽古です。

 

☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆

 

ここからは、稽古でやった場面と、それについてキャストが話した内容をお届けします。
作品本文は、青空文庫からコピーしたものに、読み易いよう改行を加えています。
キャストが話した内容は、録音した物を文字に起こし更に編集しています。
なお、議論は明確な答えを出すものではなく、情報は必ずしも正確ではありません。
演出を付けるために自由な発想に基づいて発言しております。

 

☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆

 

国木田独歩より 竹の木戸

 

翌朝になってお源は炭俵に気が着き、喫驚して
「磯さんこれはどうしたの、この炭俵は?」
「買って来たのサ」
と磯は布団を被ってるまま答えた。朝飯が出来るまでは磯は床を出ないのである。

「何店で買ったの?」
「何処だって可いじゃないか」
「聞いたって可いじゃないか」
「初公の近所の店だよ」
「まアどうしてそんな遠くで買ったの。……オヤお前さん今日お米を買うお銭を費って了やアしまいね」

磯は起上って
「お前がやれ量炭も買えんだのッて八か間しく言うから昨夜金公の家へ往って借りようとして無ってやがる。それから直ぐ初公の家へ往ったのだ。炭を買うから少ばかり貸せといったら一俵位なら俺家の酒屋で取って往けと大なこと言うから直ぐ其家で初公の名前で持て来たのだ。それだけあれば四五日は保るだろう」
「まアそう」
と言ってお源はよろこんだ。直ぐ口を明けて見たかったけれど、先ア後の事と、せっせと朝飯の仕度をしながら「え、四五日どころか自宅なら十日もあるよ」

 

☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆

 

—嵐の前だね。

◆Caori:喜んでるから、むしろ切ないな。
◆吉田:お源可愛かったね。
◆スズキ:可愛かったね。
◆Caori:めっちゃ喧嘩したのに、翌日はこんなに普通にケロッとしてね。
◆栗田:ヤンキーだからね。
◆吉田:磯吉が、朝ご飯できるまで「床を出ないのである」って……起きろ!
◆Caori:そうなんだよ。クズすぎて。心の中では、怒りでプルプルして次のセリフ言えないわぁ。
◆のあ:あ、お源じゃなくて、かおりん(Caori)がね。
◆Caori:お源は元気そうだね。ホント、ここ立ち直るの早いなぁ。
◆スズキ:なんかね……こう、部屋が寒い中でやってると……実感が湧くなぁ。

 

—どこまでが本当で、どこからが嘘!?

◆吉田:ねぇ。よく、こんなべらべら嘘が言えるよね。
◆スズキ:磯吉?
◆吉田:なんか、もはや本当に怖くなったんだけど。
◆Caori:サイコパスだよ。
◆栗田:こんなもんでしょ。
◆中馬:これは、布団の中でどう言い訳をしようか考えてるんじゃない?
◆栗田:いやぁ、そこまで考えてないでしょ多分。何も考えてないよ。
◆Caori:これ、言ってることほとんど嘘じゃん?
◆吉田:いや、ところどころ「ホントのこと」が折り混ざってるから、余計怖いんだよ。
◆栗田:うん。これは途中まで、別に嘘じゃないでしょ。ホントでしょ。
◆中馬:まず、おまえが、やれ炭が買えないだのってやかましく言うから、ゆうべ、金公の家へ行く。
◆吉田:そして将棋をする。
◆栗田:そうそう、22時まで将棋して、で、「2円貸して」って頼んで、断られる。それからすぐ、初公の家へ……あ!? 「初公」!? ……んとこ行った?

◆皆:行ってない(笑)
◆中馬:ここから嘘ですかね。初公の所に行く。で、炭を貸すからお金を少し貸してと頼む。1俵ぐらいなら、俺の家の酒屋で取って行けと言うから、すぐ、その店で、初公の名前で貰って来た。
◆吉田:よくまぁペラペラとっ!
◆スズキ:あ、じゃあ最初は本当のことを言ってて、途中から嘘になった?
◆のあ:初公っていう所からが嘘か。
◆栗田:え、でもさ、最初に、まだ磯吉が布団にいる時に、お源が炭を見付けてすぐ、「まぁこれはどうしたの? 何処で買ったの?」って訊いてて。
◆スズキ:で、磯吉が「何処だっていいじゃないか」って答えて、お源がそれに対して「訊いたっていいじゃないか」って返して、「初公の家の近所の店」だって既に答えてる。
◆のあ:あ、もうここで初公が出て来てるね。
◆吉田:じゃあ、もうこの時点で嘘ってことじゃん。
◆Caori:やばい。もう最初から嘘つこうと思ってるのか。
◆栗田:「何処だっていいじゃないか」で、辞めとけばよかったんです。……お源が。
◆皆:お源が、かよ!(笑)
◆栗田:追い詰めるから嘘つく羽目になるでしょうが。

◆栗田:あれ? でも「初公の家の近くの店」ってのはホント?
◆吉田:え、行った?
◆スズキ:「どうしてそんな遠くで買ったの?」って訊いてるよ、お源が。その店と増屋とは別の店なの?
◆Caori:初公の家の近所の店が、イコール増屋?
◆吉田:盗んだのは、増屋でしょ。
◆中馬:はい、ウチから盗んでますけどっ!
◆吉田:ウチ(笑)
◆のあ:稽古初日で増屋のアイデンティティーが凄いな。
◆中馬:はい、増屋です。
◆のあ:中馬ちの店は近いよ、お源の家から。
◆栗田:あ、近所なの? 別に増屋があるのが「近く」とは言ってなくない?
◆吉田:いや、近いはずだよ。大庭家もお源も増屋で炭買ってて、この日だって増屋が庭に来て、みんなで仲良く喋ってるぐらいなんだから。
◆スズキ:そうだね。お源も「なんでそんな遠くまで行ったんだ?」って疑問に思ってるから。
◆吉田:「いつも行く近所の増屋に行けばいいじゃん」ってことよ。
◆のあ:まとめると、大庭家と植木屋夫婦の小屋は隣通し。1km以内の距離に金公が住んでる。帰り道に増屋があって、磯吉がそこで炭を盗んでるから、増屋も1km以内。初公はこのエリアより、多分遠くにあって、その近所に本当にそういった酒屋があるかは、磯吉の作り話だから、解らない。っていうことですね。

◆スズキ:大体、磯吉も、増屋で買ったら、「増屋だよ」って言うでしょ。
◆吉田:いや。この男は足のつくようなことはしないさ。
◆栗田:そうか目的が解った。磯吉は金公と初公しか友達がいないんだよ。
◆皆:え、可哀想(笑)
◆栗田:でも、金公は近所に住んでて、詳しい話したらお源にバレちゃうから、とりあえず初公の名前出したら、まだお源に食い下がるから、新しい作り話ができて行くんだ。これは、店きっかけじゃなくて、自分の知り合いきっかけで嘘ついてる。お源の生活圏から出た話だと、より想像がつきにくいから。
◆のあ:その後お源が事実を追跡しづらくなるね。
◆スズキ:もしかしたら、友達はいっぱいいるけど、1番遠いのが初公かもよ。

 

—磯吉は、俳優さんなら誰?

◆のあ:これ、世間的には、盗んだのはお源がやったことになるしね。見た目、これを苦に自殺したことになるから。
◆栗田:あ、そっか。
◆のあ:お咎め無しだから、磯吉。
◆栗田:だってぇ〜、こんなんと一緒にいるからいけないんだよ。お源はおかしいんだよ。
◆Caori:やっぱ、磯吉イケメンなんじゃないの? 一緒にいることにステータス感じてるんだよ。
◆のあ:その件に関して、この前、和華ちゃんと稽古したんだけど。和華ちゃんが凄く面白い説を出してて。磯吉は、マジで、ただ気持ち悪いだけの男で、お源だけがたくましい妄想力で、魅力を感じてるんじゃないか、って。
◆スズキ:あぁ、そうそう。この人の良さが解るのはわたしだけ! っていう。
◆Caori:まぁ、そうだね。いわゆる “ダメ男” っていうものが、必ずしも世間的なイケメンとは限らないよね。
◆のあ:いるじゃん、誰が見ても絶対に「モデルさんみたいにかっこいい!」って思う訳じゃないんだけど、そのコミュニティーの中では常に恋人が絶えなかったり、その人を狙ってる人通しがバチバチしてたり。特定の層の人を心理的に惹き付けてコントロールする仕草とか言動を、無意識に身に付けている可能性はある。
◆Caori:すごい解る。すごい、いる、そういう人。
◆吉田:渋谷村の新しい妻も、お源に似てる性格なのかもね。

◆のあ:嵌っちゃった側は生産性無いから、次々に犠牲者を生み出していくんだけど。
◆Caori:磯吉側は相手が誰であっても同じなんだろうな。
◆のあ:何故か責められたりしなくて、みんな「あの男に惚れちゃったあたしが悪いの」みたいなことになるんだよね。
◆吉田:むかつく。
◆のあ:そう、うちの稽古場は、「アンチ磯吉派」が多いんだけど、和華ちゃんは、またちょっと違う立場を取ってて、「磯吉悪くない」っていう擁護までは行かないけど、「惚れたお源が悪い派」かな。
◆中馬:論文の中には、磯吉は純粋で「心が綺麗なんだ」とか書いてあるヤツもありましたよね、確か。
◆のあ:中馬、論文まで読んだんだ、凄いね。
◆栗田:な〜んかやっぱり、喋り方といい、浅野忠●がちらつくんだよな〜。
◆のあ:どういうこと?(笑)
◆栗田:浅●忠信がパンツ一丁でやってるような役だよ。
◆のあ:ますます解らない。
◆吉田:いや、ごめん、わたしはちょっと解るぞ?(笑)
◆のあ:え!?
◆栗田:動物みたいなタイプかな。綾野●ですよ。映画とか。
◆中馬:「そこのみにて光輝く」の綾●剛みたいな。
◆Caori:綾野●解るわぁ。どっちかというとそっちだね。
◆スズキ:え! コウノドリ先生!?
◆吉田:あ、うん。人は合ってるけど(笑) もっと悪い人の役をやっている時があるんだよ。
◆スズキ:ほぉ。
◆中馬:●野剛ならしょうがないな。
◆Caori:うん。綾野●なら別にいいよ。
◆吉田:磯吉は綾●剛だったんだね。許す。
◆栗田:あ〜。森●未來がクズやると「うわぁ」ってなるのに、綾野剛がやるとモテるのは何なんだぁ〜。やだなぁ〜。

 

役者には役者の読み方で

 

引き続き、暖房が効かない寒い部屋での稽古です。
この日は、色んな人が朗読する音声を聴いて、参考にしました。

 

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ここからは、稽古でやった場面と、それについてキャストが話した内容をお届けします。
作品本文は、青空文庫からコピーしたものに、読み易いよう改行を加えています。
キャストが話した内容は、録音した物を文字に起こし更に編集しています。
なお、議論は明確な答えを出すものではなく、情報は必ずしも正確ではありません。
演出を付けるために自由な発想に基づいて発言しております。

 

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国木田独歩より 竹の木戸

 

磯吉が帰って来た。
頭が割れるように痛むので寝たのだと聞いて磯は別に怒りもせず驚きもせず自分で燈を点け、薬罐が微温湯だから火鉢に炭を足し、水も汲みに行った。湯の沸騰るを待つ間は煙草をパクパク吹していたが
「どう痛むんだ」
返事がないので、磯は丸く凸起った布団を少時く熟と視ていたが
「オイどう痛むんだイ」
相変らず返事がないので磯は黙って了った。その中湯が沸騰て来たから例の通り氷のように冷た飯へ白湯を注けて沢庵をバリバリ、待ち兼た風に食い初めた。

布団の中でお源が啜泣する声が聞えたが磯には香物を噛む音と飯を流し込む音と、美味いので夢中になっているのとで聞えなかった、そして飯を食い終ったころには啜泣の声も止んだのである。
磯が火鉢の縁を忽々叩き初めるや布団がむくむく動いていたが、やがてお源が半分布団に巻纏って其処へ坐った。前が開て膝頭が少し出ていても合そうとも仕ない、見ると逆上せて顔を赤くして眼は涙に潤み、頻りに啜泣を為ている。

「どうしたと云うのだ、え?」
と磯は問うたが、この男の持前として驚いて狼狽えた様子は少しも見えない。
「磯さん私は最早つくづく厭になった」
と言い出してお源は涙声になり
「お前さんと同棲になってから三年になるが、その間真実に食うや食わずで今日はと思った日は一日だって有りやしないよ。私だって何も楽を仕様とは思わんけれど、これじゃ余りだと思うわ。お前さんこれじゃ乞食も同然じゃ無いか。お前さんそうは思わないの?」
磯は黙っている。
「これじゃ唯だ食って生きてるだけじゃないか。饑死する者は世間に滅多にありや仕ないから、食って生きてるだけなら誰だってするよ。それじゃ余り情ないと私は思うわ」
涙を袖で拭て
「お前さんだって立派な職人じゃないか、それに唯た二人きりの生活だよ。それがどうだろう、のべつ貧乏の仕通しでその貧乏も唯の貧乏じゃ無いよ。満足な家には一度だって住まないで何時でもこんな物置か――」
「何を何時までべらべら喋舌てるんだい」
と磯は矢張お源の方は向ないで、手荒く煙管を撃いて言った。
「お前さん怒るなら何程でもお怒り。今夜という今夜は私はどうあっても言うだけ言うよ」
とお源は急促込んで言った。
「貧乏が好きな者はないよ」
「そんなら何故お前さん月の中十日は必然休むの? お前さんはお酒は呑ないし外に道楽はなし満足に仕事に出てさえおくれなら如斯貧乏は仕ないんだよ。――」
磯は火鉢の灰を見つめて黙っている。
「だからお前さんがも少し精出しておくれならこの節のように計量炭もろくに買ないような情ない……」
お源は布団へ打伏して泣きだした。
磯吉はふいと起って土間に下りて麻裏を突掛けるや戸外へ飛び出した。

戸外は月冴えて風はないが、骨身に徹える寒さに磯は大急ぎで新開の通へ出て、七八丁もゆくと金次という仲間が居る、其家を訪ねて、十時過まで金次と将棋を指して遊んだが帰掛に一寸一円貸せと頼んだ。明日なら出来るが今夜は一文もないと謝絶られた。
帰路に炭屋がある。この店は酒も薪も量炭も売り、大庭もこの店から炭薪を取り、お源も此店へ炭を買いに来るのである。新開地は店を早く終うのでこの店も最早閉っていた。磯は少時く此店の前を迂路々々していたが急に店の軒下に積である炭俵の一個をひょいと肩に乗て直ぐ横の田甫道に外て了った。

大急で帰宅って土間にどしりと俵を下した音に、泣き寝入に寝入っていたお源は眼を覚したが声を出なかった。そして今のは何の響とも気に留めなかった。磯もそのままお源の後から布団の中に潜り込んだ。

 

☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆

 

—磯吉は一応、お源に「どう痛むんだ」と質問している。

◆栗田:これ、2回訊いて無視されるじゃないですか。やっぱり2発目はキレていいの?
◆皆:キレないよっ!
◆栗田:どう痛むんだぁぁぁ!? オォォォイ!!!!!(叫)
◆皆:叫ばないでよっ!
◆栗田:叫びたい。
◆のあ:「狼狽えた様子は無い」って書いてあるじゃん。
◆栗田:狼狽えるのと、キレるのは、違います。狼狽えずに、キレる。
◆のあ:キレてたらそれは、狼狽えた結果キレてんじゃん(笑)
◆栗田:え〜。

 

—「貧乏が好きな者はいないよ」も叫ばないでね。

◆Caori:これは、「うるせーな」って感じの言い方? でも怒り過ぎない感じ。
◆吉田:イライラで、まぁ、それこそ叫びそうなんだけど、押し殺して、これが出たんだろうね。
◆スズキ:だからこそ、外に逃げ出す訳だしね。
◆Caori:だから最初に金次と将棋するのかね? 1度、イライラをクールダウンしようとしてるのかな?
◆のあ:妻が家で泣いてるのに、なんで将棋して遊んでんだよ、って感じもあるけどね(笑)

 

—磯吉が家を飛び出した時、勝算はあった? 無かった?

◆栗田:だから、磯吉って、最初から “泥棒” じゃないんだよね。最初は、合法的にお金を借りようとしてるんだよ。友人から。やっぱり、明治時代は、お金の貸し借りが文学になるんですよ。漱石の小説とか。金借りないと始まらないんだろうね、やっぱり。

 

—お源って、どのぐらい泣くんだろう?

◆栗田:これ、お源の涙のペースも、かなり細かく指定されてるね。
◆吉田:涙のペース(笑) そうね。
◆のあ:すすり泣くとか、袖で拭くとか、結構細かいね。
◆スズキ:かおりんさんの演技を、もっと舞台の演技みたいに、大袈裟にやってみてもいいんじゃないかな。1度マックスで読んでみる?
◆Caori:演技をマックス?
◆スズキ:そうそう。

 

—ちょっと、色んな音声を聞いてみよう!

◆栗田:だから、ちょっと、これ聴いてみましょうよ。(PCを開く)

◆スズキ:なになに?
◆のあ:今日ね、午前中の稽古で、とづ(戸塚)と3人で、色んな音源聴いたんだ。
◆スズキ:あ、そうなの?
◆のあ:朗読とかアナウンスを教えてる講師の先生とか、あと大御所俳優さんのとか。

 

—「竹の木戸」の朗読を聴いてみました。

◆Caori:凄く、王子様っぽいね。
◆のあ:ミュージカル俳優みたいだよね。
◆Caori:はぁ〜、結構、お源の役では泣くんだね、このシーン。
◆スズキ:思ったより演技するね〜ぇ。
◆のあ:そうだね。かおりん(Caori)すすり泣きとか続けてていいよ。もう。
◆Caori:あ、ホントに?
◆のあ:劇団で朗読してることの意味が無いとなぁ、と思って。綺麗に読むっていうことは、もっとプロフェッショナルな先生たちがやってることだし、我々には多分完璧にはできないじゃない? 勿論、ある程度の基準は満たすべきだし、基礎練習とか努力するべきなんだけど。
◆スズキ:何が違うんだろう?
◆のあ:わたしとか、もちこ(吉田)がやって来たメソッドの朗読は……まず、滑舌とか発音は基本的に絶対正しく読まなきゃいけない。なるべくニュートラルに読む。変な抑揚を勝手に付けたりしないように、必ず意味に則した高低差を付ける。感情の起伏とか、演技に近い部分で言えば、聞き手の想像をかき立てる程度の読み方で、自分の思い込みで派手派手に演じたりするのはNG。
◆吉田:そうなんだよなぁ。

◆のあ:でも、わたしが集めてるのは何らかの形で、小劇場で演技してる役者さんたちだから。もっと自由でいい。本に忠実であれば。そのためにこうやって議論してる訳だけど。
◆栗田:あ、じゃあ俳優さんの聴きましょう。

 

—栗田ばねオススメ、橋爪功さん、高倉健さんの朗読を聴きました。

◆Caori:最初から凄いなぁ……喋り始める最初の1音目から、センテンス全体を見越した音の入り方とペース配分だよね。凄い。説得力あるし、内容がスルスル入って来るなぁ。わたしは綺麗すぎるよりこっちの方が入って来る。
◆のあ:うん。なんか、ある程度、読んでる人の生きて来た軌跡みたいなものが、役者さんだからこそ、出てる気がする。やや引っ掛かる部分残してるから、聞き逃したり、理解できない部分とかが無いよね。
◆栗田:オススメです。

 

—アニメ「サザエさん」を、音だけで聴いてみました。

◆栗田:凄いでしょ、これ。
◆吉田:恐ろしい抑揚だね。
◆栗田:解りやすいんですよねぇ……、本当に。