本家本元の、野田秀樹さん演出『オイル』初演から 10年という時間が流れました。 あれから、わたしたちの生きる世界は、どう変わったでしょうか。 2001年9月11日に起きた米国同時多発テロ事件の首謀者とされる、 テロ組織アルカーイダの指導者オサマ・ビン・ラディンが、 2011年、米攻撃によって死亡しました。 崩壊した世界貿易センタービルの跡地には、高層ビルが建設され、 完成すれば、 それはニューヨーク中を見下ろす最も高いビルになるそうです。 2003年に開始されたイラク戦争は、 2011年の米軍撤退によって終結しました。 攻撃と支配の理由であった大量破壊兵器は、 結局どこにもありませんでした。 イラクやアフガニスタンでは、米軍や国際軍の攻撃により、 たくさんの民間人が死亡しました。 そして、爆破テロ、自爆テロ、人質拘束事件が世界中で多発し、 同じくたくさんの民間人が巻き込まれています。 記憶に新しいところでは、 アルジェリアの人質拘束事件、ボストンの爆破テロ事件がありました。 これだけ多くの命が失われ、 その度にわたしたちは悲しみや恐ろしさを学んだはずなのに、 怒りが攻撃を呼び、恨みが報復を呼ぶその連鎖を断ち切れぬまま、 同じことを繰り返し続けている。 これは、遠い外国で起きている他人事でははない、 すべては、わたしたちの生きる地球上で起きていて、 同じ人間の身の上に起きていること、同じ人間が起こしていること。 だから、わたしたちひとりひとりの問題なのです。 今日、わたしが家族や友人を攻撃され殺されたら。 明日、わたしはその犯人を徹底的に追いつめて攻撃し、きっと殺す。 絶対にそうしたくありません。 今、現実にはそう思っています。 でも、もし実際にそのような目に遭い、 ひとりで悲しみや怒りを抱えたら。 復讐する自分の姿を容易に想像できるのも、また事実です。 だから、この問題について、わたしは、皆さんと一緒に考えたいのです。 誰しも同じ状況に立たされる可能性がある。 だから、みんなで考えたいのです。 演出 のあのえる