ー稽古場はどんな雰囲気ですか?
メンバーと勉強会をします。
歴史資料館を見学、ドキュメンタリーの番組を鑑賞したり、各々本を読んだり。
学び、知れば知るほど、つらくなります。
勉強を、してもしても足りません。
全てを知ることなどできないのは承知の上で、焦っております。
ー「オイル」の見どころはどんなところ?
この作品は、米国同時多発テロ事件からほんの僅かな間に書かれたものです。
それぞれひとつひとつが重たく複雑な問題を抱えている事象たちを、
短期間に、これだけ巧みに1つの短い物語に凝縮し関連づけた野田氏は、
わたしなどが言うまでもなく世界から評価を受けている通りの、天才作家です。
しかし、野田氏が“当時”的確に捉えた情景、そして“当時”込めたメッセージが、
今なお、“現在”のこととして鮮やかなのはどうしたことでしょう。
また10年経った頃には、この物語がピンと来なくなるぐらい褪せていたらいいのに。
ー演じる役はどんな役ですか?
主人公の富士です。
この物語の中には、色々な思想や立場を象徴する人が登場します。
結束を大事にし、常に集団に意見を合わせる人、
素早く時代の潮流に乗り思想を変えてゆける人、
権力や富を重要視し強い方を見抜きついてゆく人、
自分の民族や国家など属するコミュニティを大事に考える人、
強い怒りや悲しみを抱え、生きる意味を見失っている人、
……どの立場も、どの考えも、自分や家族や生活を守るがために。
しかし、どの立場も、どの考えも、戦争へ導くことができます。
富士は、大事な者を奪われたら復讐するのが道理だと考えている人です。
そしてそれを声高に主張する一方、
疑問を抱き、真理、答えを求め苦しんでいます。
彼女を信念と正義の人と見るか、退廃的で過激派と見るか、
住む場所や育った環境で変わりそうです。
ー
富士を演じるにあたっての苦労はありましたか?
(1)孤独です。
対話や展開などの外的要因と関係性からではなく、
元から確固たる内面を持っていて変化することもない。
役が単独なので、演技を作る過程も常に単独です。
つまり、無責任にやりたい放題です。
(2)
かべにぶつかるたまごの会『負傷者』以来、ヒロインが続いています。
ふざけたきわものの役が多いので、いつもヒロインがしっくり来ません。
変な顔をしたりしたくなりますが、演技指導様に今回も禁止されました。
「変な顔をしたい!俺は!変な顔を!したいんだ!!!!!!」
そんな、魂からほとばしり出る内なる声との熱き戦い、仁義なき試練です。
しかたないので電車やバスで乗り合わせた赤ちゃんに変な顔をして見せています。
親御様から変な目で見られます。
それもまた、仁義なき試練です。
赤子よ、強く育まれるが良い。
赤子よ、こら、泣くな。
ーあなたが今まで生きてきたうちで、一番大きな社会的な事件は何ですか?
そのときいくつで、どんなことを感じましたか?
米国同時多発テロ事件2001年9月11日)です、中学生でした。
アフガニスタンやイラクへの空爆が始まると、毎日が上の空でした。
9.11で亡くなった命と空爆で亡くなった命が同じように扱われていないような気がしていて、
それをうまく言い表せない、何もできない自分が許せませんでした。
と同時に世の中の芸術作家が次々と作風を変えたのが印象的でした。
ー意気込みをどうぞ!
やりぬくぜよ!!
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