ー稽古場はどんな雰囲気ですか?
若い世代が集まっているため、とてもエネルギッシュな稽古です。
扱っている問題が現代日本のあり方、そして世界情勢に関わることなので、勉強会をしたり、キャスト間で集まって議論することもあります。
ただ楽しいだけじゃない、本気だという姿勢がみられる稽古場です。
ーここを見てほしい!なんてところありますか?
やはり、演技を見てほしいです。
戦時中、戦後の社会問題を背景に、それぞれのアクターが何を想いその時代を生きようとしたのか、感じてもらえると嬉しいです。ちなみに、殺陣も演技の一環です。
ー「オイル」の見どころはどんなところ?
対象者を絞らない商品はどっちつかずで流行らないといいますが、この作品は芝居が好きな人でも、研究者でも、主婦でも、仕事人でも、老若男女が何かを感じ、それぞれの人なりに気に入る部分があるベストセラー商品のような位置づけにあると思っています。
各場面に散りばめられたメタファーから、何を感じるのか、それが楽しい感情であり、複雑な心情であったり、発見であったり様々。自分だけの見所を自分の目で肌で探し出せる、それが今作品の見所です。*本気です。
ー演じる役はどんな役ですか?
古事記には名のない神様、そして第二次世界大戦中にアメリカの軍事情報部(MIS)としてGHQの命を受け島根県に派遣された日系米兵の二役を演じています。
共通しているのは、三人いる神または進駐軍の中では「知」を担っているところです。「役柄」でいうとお局とイケメンでもありますね。
ー日系米兵を演じるにあたって、苦労したことなどありましたらお聞かせください
日系米兵は日本人なのか、アメリカ人なのか。
二世であるが故に、「私」はアメリカ人だ。しかし「私」はアメリカ人であり、日本人でもある。そして祖国はアメリカである。つまりロイヤー伍長とは両親とは異なる人種意識で暮らしている私とは全く違う人間です。日本人の両親をもち、母国語と母語の違いも大学に入るまで知らなかった純日本人の私が、アメリカ人として、どのような気持ちで島根県民や原爆、そして9.11のテロをみるのか、どう「私」は考えるのか、アイデンティティの違いからみる世界を知る事に苦労しました。
そんな苦労を経ながら、私が得た「私」を理解するヒントは案外近くに、とてもシンプルに存在してたんです。すなわち、どの社会問題一つとっても、同等のものとみなすことはできない、しかしながら、歴史が証明している人類の失敗は省みられる事なく、軸を変えずに繰り返されている。今も、おそらく未来も。
ーあなたが今まで生きてきたうちで、一番大きな社会的な事件は何ですか?
そのときいくつで、どんなことを感じましたか?
2001年9月11日の同時多発テロそして2005年4月に起きたJR福知山線脱線事故(2005年4月25日)です。
2001年時点では、小学生でした。夜中に父母が珍しくテレビをつけていて、一緒に見たことを覚えています。「アメリカのムービーみたいに..」というセリフが劇中にありますが、まさにそれでしたね。
両親の反応をみて、これは今までに無い未曾有の事件なんだということを肌で感ていました。同時に死ぬ恐怖と亡くなる人への同情を当事者と傍観者の2つの立場から感じ取っていたように思います。
後者については、学校帰りに母がテレビの前で立ち尽くしていたのを今でも覚えていますね。実家が関西ということもあり、明日は我が身という気持ちがあってか、遺族、生存者、そして死者の物理的、精神的な痛みを伴う「死」への恐怖をあの事件から強烈に感じ取っていました。
ー意気込みをどうぞ!
私は「私」で突っ切ります!そんな「私」が、少しでもあなたの見所に引っかかりますように...
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