極めろミステリー!

本日は、加賀美もちこさんが、脚本にファミチキの油を垂らしたところから始めたいと思います。

『竹の木戸』からお馴染みのスズキヨシコ邸でしたが、今日は、お引越しした新居にて、稽古です。

新スズキ邸の最寄りのファミマで、お気に入りのファミチキを食し、そして台本に油をこぼした、もちこさんです。

笑うしかない、田島裕人くんです。

今日は、相方の栗田ばねさんがいませんが、江戸川乱歩の『指環』を気合いを入れて練習します!

今日のメンバーは、ひどいです。稽古の内容を思い出すために、録音した音声を聞いたら、冒頭から

スズキ「はい、お茶だよ」

もちこ「あ、ありがとう。Teaだね」

スズキ「茶だよ」

もちこ「ティー」

スズキ「ちゃ」

もちこ「ティー」

スズキ「チャー」

裕人「ティーチャー! あははははは」

ノア「今日のメンバーはダメだ……」

スズキ「誰か、止めてくれないと……」

もちこ「戸塚くんが必要だよね。(茶碗を転がす音)あぁっ!」

裕人「なははははははっ」

という会話が入っていて、とりあえず、聞くのをやめました。

さて、気を取り直して、暇な時に、もう一度聞き直しました。

壁際に椅子を2つ並べて、電車の座席に見立て、2人で並んで演技します。

ちょっと気になるのが、この、背景において主張の強い、黄色い鳥のカレンダー。

AとBが緊迫してやり合ってても、なんかちょっと、和んじゃうなぁ。

まずは、AとBが、お互いに泥棒であることを隠して、上品ぶって敬語で話す前半の練習です。

座っているBの元に、隣の車両からやって来て話しかけるA。そして、幾つも遠回りな質問をして、Bにカマを掛けようとします。

AとBは、よっこ×もちこ、もちこ×裕人、裕人×よっこ、と、ローテーションして、役も組み合わせも入れ替えました。

動画を撮りながら、立ったり座ったりして、演技しています。

Aは、しっかり間を取って、あの手この手で畳み掛けた方が、Bが怪しく感じて来るようです。

気付いたのは、このお話の1番重要である「心理戦」「駆け引き」を上手にやろうとすると、みんな『相棒』の水谷豊さん風になっていく、ということです。

「あなた、こないだの方ですよねー?」「これはこれは、おやぁ? おかしいですねぇ?」「と、いうことは……、はてー?」

さて、全員水谷化したところで、休憩。お昼ご飯とおやつで一服です。

のりまきをいただきました。いつもおいしいごはんをありがとうございます……!

そしてこちらは、甘いお菓子と塩味のお菓子を、混ぜて入れた、カオスの図。無頓着の極みです。

ぜひ、水谷さんの紅茶と一緒にいただきたい。

ここで、劇団ののがYouTubeで音声配信を行う新企画、NonoTubeの試験録音を視聴しました。

これは、もちこさんが読んだ、おしるこのレシピを聞いているところです。本当にただ、レシピを読んだだけなのですが、これがなかなか面白いです。

次は、栗田ばねさんが読んだヒカキンさんのYouTube番組を、ひたすら文字起こしして静かに読んだだけの音声を視聴。

静かに淡々と読み聞かされる「ぶんぶん、ハローユーチューブ」は、ひどいです。

さて、一服した後は、お互いに正体を明かし、急に江戸っ子風になる、後半を練習。

まずは、1人1セリフずつ、順番に、何も考えずに、べらんめえ調でセリフを読みました。

落語、泉谷しげるさん、石倉三郎さんなどを意識して。

全員で早口で読んでいると、だんだん江戸っ子リズムに慣れてくるものです。スラスラ読めるようになって来ました。

そして、次に肝心なのが、前半の上品ぶっているところから、後半に突入する、境目のところ。

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A 併し、不思議ですね。とうとうあの指環は出て来なかったというじゃありませんか。どうも、不思議ですね。
B …………
A …………
B ハハハハハハ。オイ、いい加減にしらばくれっこは止そうじゃねえか。

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この、水谷の「ど〜うも、不思議ですね〜?」の、わざとらしさ。

訪れる、2人の沈黙。沈黙の中でAがBを盗み見るのか、じっと睨みつけるのか、すまして遠くを見つめるのか。Bが口火を切るのを今か今かと待つその心は!? そしてBは何を考えているんだ!?

そして、遂に、この猿芝居の滑稽さにこらえきれなくなり、沈黙を破るように笑い出してしまうBの、フフ……フフフ……ハーッハッハッハッハッハッ!!!!! という、絵に描いたようなワルモノ笑い。

を、練習してみました。

この切り替え、結構、大事です。沈黙を破るのを急ぎすぎると雰囲気が出ないし、笑い声の後のセリフがゆっくりすぎるとタンターンという江戸っ子っぽいリズムが出ないのです。

ここで、もちこさんのワンポイントアドバイスが出ました。

「セリフをかまないようにするには、もったいぶるといいよ」

あえて演技でもったいぶるように見せつつ、次のセリフをかまないようにしているのだそうです。その手があったか。

と、ここでもう一度、電車の並びで演技をしました。動画を撮りながら。

ところで、後で見返してみると、これ、江戸川乱歩のミステリーじゃなくて、すごく、ベタな月9のひと場面に見えますね。

この日は、横光利一『春は馬車に乗って』の、お医者さんのセリフも、練習しました。

主人公の夫に、妻の病状「もう助からない」ということを伝える、大事な役目。作品に出て来る、唯一の第三者の役です。

お医者さんのイメージについては、最後までもめました。メンバーの中で、イメージが統一されませんでした。

ひどいことを言っていると気付かずに、あっさりと言ってくる人、悲痛な感じで伝える人、事務的に義務感を持って淡々と伝える人。

これは、横光が、あえて医者の情報を削ぎ落としているからです。

この物語に出て来る他人、つまり夫と妻以外の人物は、大変上手に制限されています。夫が遠目に見る海辺の子どもたちは風景と一体化していますし、スイートピーをくれたらしい知人というのは、登場はしません。

医者は、夫と会話を交わす、唯一の他人です。しかし、これは生身の人間としてではなく、夫が妻の死を実感する装置として登場させられた人物です。なので、医者を描写する余計な情報が、全て排除されているのです。

これをどう演じるかで、夫の演技、場面の雰囲気、後半に対する感情移入の仕方が、変わって来ます。こういうところが、“文学に演出を付ける” 醍醐味と言えるでしょう。

「この医者が、どこを見て言っているのかって、大事な気がする。主人公の目を見て言っているのか、それとも目を合わせられなくて、キョロキョロそらして話しているのか。なんか背中に腕を組んだりして、窓の外眺めながら言ってるのか。随分、言い方は変わると思う」と、考え込む田島くん。

結局、「目はしっかり合わせて言っている。残念には思っている。決して平気で言っているのではないだろう。しかし、という方向性になりました。

では、そんなわけで、今日は和やかなメンバーによるキレのない稽古でしたが、ミステリーの稽古だったので、もちこさんがテーブルの角で後頭部を強打する不穏なシーンで、終わりたいと思います。

一度ぶつけ、もう二度とぶつからないよう、何度も振り向き、座り位置を確認し、やっぱりもう一度強打した瞬間。そんな画像で、締めくくりたいと思います。

おのれの敵は、おのれ。

みなさん、ごきげんよう。