キャスト日記:吉田素子『人には人の怪談話』

出た!! 吉田素子さんが、ブログ記事を書いてくれました!

怪談シリーズの3本、夢野久作『縊死体』、夏目漱石『夢十夜』、小泉八雲『雪女』が公開されたということで、今回作品と配役をプロデュースした吉田さんの、シリーズに寄せる思いを、お聞きください。

吉田さんのブログといえば、今まで2回とも、「まぁ、途中まででいいんだったら、いくらでも書いてあげるよ?」というやや上から目線で、堂々と途中で終わらせており……もはやそちらの方がホラーだったのですが。

今回もドヤ顔で「ブログ書いたわ」と、送って来てくれました。そして、読み進めてみると、これはなかなか面白い怪談論になっているので、お楽しみください。

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皆様、こんにちわ。

途中で終わるブログ記事でお馴染み、吉田素子です。

さて今回、吉田は『真夏の怪談話』シリーズの作品選定を担当しました。
理由は簡単。

「やっぱさー夏は怪談話やりたいよねー」

と、ノリで提案したからです。

如何せんノリで発言してしまったために、スズキ氏から、

「今回はもちこ(私のあだ名)が作品決めてねー」

とLINEをもらった時は焦りました。何を隠そう私、怖い話が苦手なのです。

当然、怪談話も好んで読んでいたことはありません。

やばい……

「やっぱさー夏は怪談話やりたいよねー」

……。

ノリで生きていた過去の自分をひっぱたきたい……

しかし、後悔先に立たず。

任されたからにはやってみようじゃないか。

こうして、吉田の怪談話選定がスタートしたのです。

まずはいわゆる怪談話に触れようと、青空文庫で掲載されている作品をさらさらと斜め読みしていきました。

江戸川乱歩、岡本綺堂、夢野久作、小泉八雲 etc……

これらを読み進めているうちに、私には1つの疑問が浮かびました。

「そもそも『怪談』とはなんぞや」

というのも、どうやら私の考えていた怪談話と作家先生たちが書かれた怪談話とは、ほんの少しだけ、ズレがあるように感じたからです。

ここで軽率な吉田の発言を思い出してみましょう。

「やっぱさー夏は怪談話やりたいよねー」

ふむ、つくづく迂闊ですね。しかしもう一点気になることがあります。

なぜ人は夏に怪談話をしたいんでしょうか……

ずばり夏は暑いから怪談話を聞いてゾーッと怖くなって、涼しい気持ちになりたいからですよね (´~`) 

「怪談話」というのは、イコール「怖い話」なのだ \(°∀°)/ 

それが私の見解でした。

でも、読んでるうちに、確かにあったんですよ。

「なんだこれ、怖くないしぶっちゃけよくわからん」って作品が。

これで怪談と言えるのだろうか。

怖くなきゃ意味ねぇだろこんちきしょう。

いつも上品な私の口も、悪くなりました。

そこで困った時はGoogle先生ですね。

もしかしたらそもそも定義が違うのかもと、「怪談 意味」で調べたら……
ありました!!

【怪談】(かいだん)
 (1) 化け物・幽霊などの出てくる気味の悪い話。
 (2) 真相がさだかでなく、納得のいかない出来事。

だそうです。

なぁんだ、イコール「怖い話」というわけじゃないのかぁ。

確かに私が読んだ作品は、得体の知れない奇妙な存在と対峙する人間どもを主軸に進められるものが、ほとんどでした。

また、その話のオチも「え、終わりかい」とか「結局なんやったんや」というものが多い気もしました。

納得いかないってやつですね。

なるほど、なんだか奇妙なものが出てきて、納得がいかない話ならそれが怪談なのか。

ここで、「いやいやだからそれは結局怖い話ってことでしょ」というツッコミが聞こえてきそうですね。

でもその作品が「怖い話」かどうかは、『作品に出てくる奇妙で得体の知れない存在』のことを、読み手個人が怖いと思うかどうかで変わっちゃうと思いませんか?

私は、人の恨みや怨念が「幽霊」となって出てくる怪談話は、素直に「怖い」と感じました。
「人の恨みは怖い」だったり、「そもそも恨まれるようなことをしでかしたこいつらが怖い」と思ったのです。
人間関係というテーマは、身近でリアルに感じることが出来たからでしょうね。

対して、幽霊ではない「妖怪もの」はあまり怖いと感じませんでした。
化け猫とかカッパとかですね。

おそらく、「そんな生き物ありえない」と思ってたり、状況に共感できなかったのが原因なのでしょう。

読んだ作品の中に、「海に出た漁師を、海坊主が船ごと襲い難破させてしまう」というストーリーの作品がありました。

この作品の筋や状況は理解できたのですが、「怖いか」と聞かれると、残念ながらそうは感じなかったのです……

(想像力が貧困なことも、致命的な原因だとは思います)

でも、ふと思ったのです。

「これって、海沿いにお住まいの方や、それこそ漁師の方だったら、きっととても怖いと感じるんじゃなかろうか」

(私の貧困な想像力が奇跡的に追いつきました)

身近な事象だからこそ、恐怖が一層煽られるというのはあると思います。

そうしたことを考えながら改めてこの作品を読むと、一度目に比べて不思議と恐怖を感じ「この話は怖い話だ」という印象に変わりました。

恐怖は人によって違います。

幽霊が怖い人。

海坊主が怖い人。

虫が怖い人。

高い所が怖い人。

人が怖い人。

当然のことではありますが、その人の年齢、性別、性格、生い立ち etc で恐怖の対象は変わってくるのです。

そしてそれは、人によって「怖い話」も違うということです。

今回は、『真夏の怪談話』というテーマだったので、できれば多くの人に「恐怖」を感じてもらい、涼しくなって欲しいと思っていました。

なので、恐怖を与える『奇妙で得体の知れない存在』は、作品によって違うものであるべきだ、という考えに至りました。

どれか1つでもいいから、怖いと思ってくれってことです(笑)

幸い劇団ののには、それぞれ違う味わいのある、個性豊かな役者が揃っています。

どの役者に、どんな作品を朗読してもらったら、より恐怖を演出できるか。
その点も、作品選定における基準として置きました (´ω`)

そして選んだのが、

小泉八雲『雪女』

夏目漱石『夢十夜』より「第十夜」

夢野久作『縊死体』

です。

『雪女』は、誰もが1度は聞いたことのある定番の怪談話として。

読後「本当に意味がわからなくて奇妙! 納得もできない! これが怪談話か!」と思ってしまった作品、『夢十夜』の「第十夜」も、入れない訳にはいきませんでした。
ちなみに、『夢十夜』は、栗田ばね氏が推薦してくれた作品です。

『縊死体』は、その奇妙な状況は勿論、語り手自身が恐怖の対象となる可能性を持った作品として。

3作品とも、それぞれの役者の持ち味を存分に生かしてくれるだろうという期待も込めて選びました (´ω`)

出来上がりが楽しみでした (*´艸`*)

そんな訳で、劇団ののの『真夏の怪談話』シリーズ、配信してますよ ♪
これを聞いて、皆さんも暑い夏を乗り切ってくださいねっ☆

って、夏終わっとるやないかーーーーーい!!!

しょうがないんです、こればっかりは。
劇団ののはクオリティを求める集団ですから、多少ののんびり配信ペースは大目に見てくださいや。

しかしすっかり秋になってしまったので、追加で秋っぽい話もやることにしましたよー!

作品は夢野久作『きのこ会議』!!!

秋の味覚、ひゅ~

演者はなんと、主宰・のあのえると、私、吉田の同級生コンビがお送りします!

てか2人で何かやるの初めてじゃね?

こちらは現在、誠心誠意練習中でございます!

皆さん楽しみにしててくださいねっ☆

(やった書き切った)

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うわぁぁぁ終わったーーーーーー!!

吉田さんがちゃんとブログを終わらせているーーーーーー!

新しいホラーの始まりです。

次は、ホラーとファンタジーの合いの子ぐらいの、なんだか不思議な童話シリーズが控えているので、お楽しみに!

 

大人ならリドルをたしなめ!

劇団のの「夏の怪談スペシャル」第1作目、その名も、『縊死体』=「首吊り死体」です。ぶるぶる。
“夏の” 怪談スペシャルって言って始めましたが、半年計画になっております。
今までもキャストが「ちょっとぉ、この人間関係、もはやホラーじゃ〜ん」って言うような作品はあったのですが。『竹の木戸』とか『秋』とか。ついに来ました、本物のホラーです!

 

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皆さんこんにちは。いつも複数名が出演する作品で名演技を見せてくれている、そしてまた、後半のフリートークに多数出演している我等が梅田拓さん、初の単独作品です! パチパチパチ。

 

ところで今回『縊死体』のテキストは、解説のページをお休みさせていただきました。「本文」と「語彙」のみになります。それにはマリアナ海溝より深い理由がありまして。

 

なんだか……調べられることが、何も無かった!!

 

って、言うとサボってるみたいなんですけど、スズキさんと「何を書こうかね」って、ちゃんと何度も相談したんですよ。そして「何も書けないね……」という無力感と悟りが溢れる結論に辿り着きました。

 

『蜘蛛の糸』にはお釈迦様が出て来るので、「輪廻」とか「地獄」について書きました。
『遠くで鳴る雷』にはキュウリや雷が出て来るので、「雷の仕組み」や「キュウリのレシピ」とか書きました。

 

で……。

 

『縊死体』には、まんま縊死体が出て来るわけなんですけど。「縊死」って首吊り死のことですからね……どうしましょうね……。
詳しく調べて事細かに書くのとか、イヤだし。なんか、「世界のいろんな死に方」とか図解するの、もっとイヤだし。って、なりました。

 

しかし、作品選びや編集の過程で出た、“A4見開きにはならなかったけど、ちょっとした世間話”を、したいと思います!

 

『縊死体』お聞きになっていかがでしたでしょうか?
まだというお方、ぜひぜひ聞いてください。
吉田素子さんは、暗い部屋で1人で聞いてて、とても怖くなって、途中でやめたらしいですよ。吉田さん、ぜひぜひ最後まで聞いてください。
内容とか効果音じゃなくて、とにかく梅田くんの声で怖くなったらしいです。わたしもスズキさんも、編集・確認作業してて怖くなりました。内容じゃなくて梅田くんの声で。

 

 

怖い話だからといって暗い感じで読むんじゃなくて、ちょっと前のめりにテンション高くて明るい雰囲気が、逆に怖いんですよ。笑顔で読んでるのかな? っていう声色なのです。

 

この男、一般的にはサイコパス殺人鬼、快楽殺人のお話だと考えられています。
あ、ちがうちがう、梅田くんじゃなくて、主人公の男の話です!!
恋仲になった女性があまりに美しいから絞め殺してしまう。それで、ホッとするんですって。
えー……。
「万一こうでもしなければ、俺はキ●ガイになったかも知れないぞ」とかぬかしてるんですけど、その発想が既に貴方……! 「ぞ」じゃないですよホント。
かわいそうな女の子。本人も、「可哀想な下町娘」とかぬかしてるんですけど、じゃあ殺すなよ……! と、多くの人が憤ることでしょう。(もし、彼の気持ちが解っちゃった人がいたら、先生は怒らないので、放課後にこっそり教えてください)

 

 

このお話が書かれたのは、大正時代です。
皆さんは、エド・ゲインやバンディなどの名前をお聞きになったことはありますか? いわゆる「全米を震撼させた」系です。仰天ニュースとかアンビリーバボーで再現ドラマになるような、有名なサイコパス殺人鬼/シリアルキラーの事件。
それよりも、何十年か前に書かれたものとなっております。なんとも時代の先取りな夢野さんですね。
もしかして、自伝……? ちょっと心配になってきました。

 

主人公は、新聞を買って公園のベンチに座り、自分が殺した事件が載っていないかと、目を通すのが日課になってます。
事件が記事になってないって判ると、ニヤッとする。
これはどういう心境なんでしょう? まだ事件が世間に発覚してないっていうのが嬉しいんでしょうか? 「ハハッ、バカな警察だ。つかまえられるもんならつかまえてみな! キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン!」っていう満足感なのかなぁ? 殺人を犯してから、もう1ヶ月の間、気になっちゃってるんですね。
ご遺体も1ヶ月間放置……Oh……

 

 

ところで。
このお話の最初、「どこかの公園のベンチである」で始まるんです。そう、解らないんですよね、具体的な場所が。
そして、読み進めて行くと、踏切の名前が登場。
今回の朗読音源では、音をボカしてあるの、お気付きになりましたか? スズキさんが、機械の音でキュルキュルッと加工してるんですよ。ホラーっぽくて、すごい怖い。かっこいい編集ですね。あの部分、本文では「××踏切」って書かれてるんです。
名前がハッキリ出て来なくて、場所が判らない。

 

 

だからもう、主人公が場所をごまかして体験談を語っているのか、見た夢の話をしてる設定なのか、はたまた妄想のつもりで言っているのか、よく解らないのです。

 

そんなこと言ったら、フィクションの小説だし、本当のことだったら夢野久作さんが逮捕されちゃうし、全部ウソに決まっているのですが。
例えば、今までの独歩や芥川の作品だと、地名、季節感、時間の移り変わり、情景描写がすごいリアルで、そのリアリティーゆえに感情移入させる手法を取る。そういう “作り込みが凄い作品” に慣れてしまっているので、ぼかしぼかしされると、釈然としないのです。シュールレアリスムの絵を眺めてるようなもどかしさです。

 

そして、その釈然としない重要な一因は、「リドルストーリー」ゆえだそうですね。

 

あ、そっかぁ! リドルストーリーだからか!

 

リドルストーリーって……何ですか?

 

リドル・ストーリー (riddle story) とは、物語の形式の1つ。物語中に示された謎に明確な答えを与えないまま終了することを主題としたストーリーである。リドル (riddle) とは「なぞかけ」を意味する。
(Wikipedia様様より)

 

例えば、この作品で言うと。
主人公はある時ついに、新聞に「怪死体発見」の記事を見付けます。でも遺体は「会社員らしい若い背広男」とある。(この時点で主人公がどう思ったかは書いてありません)
とりあえず、いてもたってもいられなくなって現場に見に行くと……!? やはりの! 男が見たのは自分の遺体。「これ自分じゃん! え、警察の罠?」
など思ってびびっていると彼女の笑い声が! 「あたしの思いがおわかりになって?」
わぁぁぁ!!! こわいよぉぉぉ!!!

 

ハイ!
気付きました?

 

最初に読んだ時、わたしはもちろん、何も気付きませんでした。流すことや理解しないことについては天才的なので。
この結末をパッと読んだり聞いたりすると「あぁ〜、そういうオチか〜、殺されたの主人公か〜」と思って通り過ぎてしまうんですが……言われてみたらおかしいぞ!?
では、一緒に検証、行ってみましょう! それ!

 

まず、首くくって死んだのが男なんだとしたら、その男の死体を見ている自分って、一体誰なの……?
1ヶ月の間、新聞記事を探していたと言ってるけど、本当は男はもう死んでたの!?
死んでたけど本人は気付かなくて、幽霊になって公園にいたってこと?
もし1ヶ月前に殺されたのが男なんだとしたら、「娘」とやらは本当は死んでないはず!
死んでないんだったら、聞こえてくる女の声が言ってる「あたしの思い」って何のこと?
あ、もしかして、たった今、過去が変わってパラレルワールドになったってこと!?
つまり、1ヶ月前に死んだ女の霊に、恨みで呪い殺されたってこと?
じゃあ、やっぱり女も死んでるってことになる。そうすると、女の遺体はどこにいったの!?

 

わぁん。こんなにいっぱい矛盾点がある。書いてる自分が1番混乱しております。
こんな風に、数々の謎の連鎖が残ってしまう、というよりもどんどん生まれて行ってしまう、自己矛盾を孕んでいる、それが、恐るべし、リドルストーリーだ!
自主的に「なぞかけ」しておいて、答え言わないで終わるの、ちょっとひどくないですか? モヤモヤさせられたこっちサイドからしてみたら、軽い当て逃げ被害ですから。

 

実は、世界にはこういうモヤモヤ話がたくさんあるらしく。わざわざ創るんですよ、そういう、理論上答えが出ないやつを。
なにせ、リドルストーリーには「知的な読後感」があるそうです。まぁ、たしかに頭使うしね……。モヤモヤしたい人とか、哲学したい人とかには、結構ウケがいいみたいです。頭がいい人にも、かなり人気っぽいです。(っていう情報の出どころが『NAV●Rまとめ』なのが、早速賢くなさそうなんですけど)
大人の味なんですね、きっと! 松前漬けとか。カニ味噌とか。スコッチとか! トリックアートとか現代音楽が解る人は、いけるんじゃないですか?(謎の偏見)

 

わたし、いくつか読んだけど、無理でした、リドル! モヤモヤする。
まだ早かったみたいです。ずっとオムライスとハンバーグでいいです。
やっぱ、大人の階段リドルでのぼる、その先に待っているのは、謎の答えじゃなくて、無駄に謎かけされても寛容でいられる心構えなのでしょう。

すれちがう夫婦の悲しき会話

梅田拓くんの『縊死体』と、みんなの『注文の多い料理店』の収録をする裏で、戸塚くんが読む『雪女』について、話し合いました。

 

『竹の木戸』でも『注文の多い料理店』でもナレーターを務める戸塚くん。初の、単独作品です!
さすが声優!! 主人公の巳之吉と雪女の声を見事に演じ分けております!
そして声がいい。やっぱり声がいいぞ、戸塚くん。

 

 

男性の声で女性の役をやるのって大変なのかな? やっぱり違和感あるかな!? と思ってたけど、そうでもないんですね!
『縊死体』では梅田くんが殺された娘の声を演じているし、『夢十夜』では栗田ばねくんが謎の美女を演じてるし。
『雪女』の戸塚くんも、なかなかのものなんですよ。メンバーのもちこ、こと吉田素子さんは特に、この戸塚くんの雪女のセリフの部分を皆さんにオススメしたいと言って、絶賛していました。他の部分も薦めてあげてください!
3人とも同じように、ナレーションの時よりもマイクに近付いて、そっと囁き声で話すのが面白かったです。別に誰かが指示したわけではなく。高い声を出すというよりは、小さい声を出すイメージなんですね!
歌舞伎の女形みたいな、たおやかさというか、しとやかさというか。着物の、か細い、青白い女性が目に浮かぶ!! むしろ、劇団のの女性陣には出せない雰囲気かも……。

 

と、ここで、更に深めるため、Caoriのアネゴと素子のアネゴから、指導が入ります。

 

 

まず、巳之吉って、何歳!? っていうところから相談です。
初めて雪女に会った時は、18歳。でも、巳之吉が実際喋るのは、何年か経ったラストシーンから。その間の場面は全て、ナレーション処理なのです。このラストの時、何歳なんだ?
戸塚くんが悩んでいるのは、一人称が「ワシ」だからです。ワシって、おじいさんのイメージしかないけど、この時はメジャーだったんでしょうか。関西や四国の方で一人称ワシの地域もありますが。当時はどうだったんでしょうか?
そういえば、『竹の木戸』に出ていた中馬智広くんも、元気な10代の若者の役だったけど、「明治時代の口調に引っ張られて、おじいさんぽい演技になりそう」って悩んでいました。

 

ではここで、物語の中で何年経っているのか、見てみよう! ジャン。

 

 

最初に雪女に出会ったのが、18歳の時。
1年後、お雪という女と道端で出会い、ほどなく結婚。
結婚から5年後、お雪を嫁として気に入って喜んでいた巳之吉の母も、他界してしまう。
そこから数年後? のある時、例の事件勃発! お雪は雪女だとカミングアウトして、消えてしまう。
というわけで、絶対に6年以上は経っているから、巳之吉は24歳以上ということになります。

 

ただ、戸塚くんが指摘しているのは、子どもが多すぎる!! と。男女10人いるんですよね。
当時の農村だから、そのぐらいいて当たり前なんだけど、年子だとしても6年で10人はちょっと計算が合わないから、もうちょっと後かも、とのこと。
(吉田さんが提唱する「3つ子を2回+双子を2回。そういう遺伝体質なんだよ」説は無視することにします)
そして、雪女は再三「子どもたちを宜しく」という旨を言って消えるので、まだ養育費も掛かるお年頃なのでしょう。完全に育ち上がって年取った後というわけでもなさそう。

 

となると、最低24歳、大体30歳ぐらいまで? と、想定してみました。
うーん、「ワシ」かぁ……。
当時は寿命も短かったから、老け込むのも早かったのか。一般的な一人称だったのか。
あるいは、巳之吉は、千鳥の大悟さんなのかもしれない。ハイ! きっとそうなのでしょう。

 

そしていよいよ、クライマックスについて。臨場感を出すには、どうしたらいいのか。

 

 

ある夜、縫い者をしているお雪の傍に座って、巳之吉は雪女に出会った時のことを話し出します。
巳之吉は、「18歳の時、色白で綺麗な人を見たんだ。今のおまえにそっくりだよ」と言い出します。
お雪は目を上げずに、「話してちょうだい、どこで会ったの?」と尋ねます。
巳之吉はペラペラと、その時のことを話します。「恐ろしかった。その女は大変白かった。あれは夢だったのか雪女だったのか」と。
するとお雪は、縫い物を投げ捨て、巳之吉の上にかがみ込み、「それはわたしです。子どもたちがいなかったらあなたを殺すところだった。でもあなたは子どもたちを大事に育ててください。子どもたちに何かあったらただじゃおかないから」というようなことを言うと、白い霞になって消えてしまいます。

 

◆ノア「この、縫い物しながら、目を上げずに話聞いてるところが、ドラマっぽいよね。小道具が効いてるね」
◆もちこ「たしかに。料理しながらとか。パソコン打ちながら、とか。あるよね。後ろ姿だけ映すとか」
◆ノア「振り返らないけど、ふと手が止まる、的な」
◆もちこ「あるある(笑) 」
◆ノア「内心めっちゃ怒ってるけど、わざと猫なで声で返事しながら聞いてるわけね」
◆Caori「『ふ〜ん、それでそれで〜?』って感じね」

 

◆ノア「……お雪、めっちゃ怒るね、最後。なんでこんなに怒ってるんだっけ」
◆戸塚「いや、そこが話の根本でしょ! 他言するなって言ってあったのに、言っちゃったから怒るって話でしょ!」
◆Caori「誰にも言わないで、って約束したのに」
◆ノア「この人はさ、せっかく何年も黙ってたのに、なんでこんな感じでポロッと言っちゃったんだろう。うっかりすぎるよね」
◆戸塚「母親にすら言うな、っていう約束で、まぁ結局、母親には言ってないんですよ。途中で死んでるし」
◆もちこ「調子に乗ったんじゃん?」
◆ノア「油断したか」
◆もちこ「そうだね、完全に油断してるね、こいつは。気抜いちゃったんじゃん?」

 

◆ノア「もう時効だな、と思ったのかな。いい奥さんと可愛い子どもたちに囲まれて幸せに暮らしてて、年も取って、怖いもんなしになってたのか」
◆もちこ「まぁ、そんぐらいお雪に気を許してたんだろうけどさ。お雪なら大丈夫かな、っていう」
◆ノア「信頼して話してくれたことに、喜ばないのか、お雪は」
◆Caori「信頼して話してくれたっていうより、やっぱ油断してる感じの口調な気がするんだよね。軽々しく喋るから、雪女としては腹立つじゃん?」
◆戸塚「お雪、消えなくちゃいけなくるから。巳之吉に喋られちゃったら」

 

◆ノア「その縛りね、ルールね……自分で縛ったのに」
◆戸塚「お雪? 雪女? 自体が縛ったっていうより、妖怪のルールっていうかさ。そうなってるもんなんじゃないかな」
◆もちこ「この世界の中の常識ね、掟的な」
◆戸塚「そうそう、本人の意志だけでどうにかコントロールできることじゃない、妖怪界がそうなてって、人間界に行くには条件付きで、やっぱそのある程度の制限があって、それが破られたら戻らなきゃいけないっていう」
◆もちこ「そういうのあるよね、他にもそういう話」
◆ノア「鶴の恩返しとか。人魚姫? じゃあ、巳之吉め、おまえのせいで離れなきゃいけなくなったぞ!? っていう怒りか」

 

◆もちこ「いや、でも、そのわりにさぁ、お雪も煽るんだよな。巳之吉が話し始めたら、その人どこで会ったの? とか自分で訊いちゃうんだね、っていう」
◆ノア「自ら誘発してるぞ」
◆もちこ「そうなのよ! 『ちょいちょ〜い、その話はしない方がいいんじゃない?』っていう助け船をさ、出せばいいじゃないのよ」
◆Caori「そこでさ、巳之吉自身が『あ、やばいやばい!』って自分で気付いて踏みとどまるのを、期待してたのかも」
◆もちこ「なんだよ、めんどくさいな」
◆Caori「女心だよ」
◆ノア「そして察しなかったか、女心を」
◆もちこ「無理だよ、この男には」

 

 

◆Caori「あとさ、他の女のこと綺麗って言われたらカチンと来ない?」
◆戸塚「まぁ、同一人物なんだけどね、お雪と雪女。他の女かどうかって言われると微妙なところ」
◆ノア「まぁね、美しいって言われてる本人だからね、複雑だね」
◆もちこ「わたしなら普通に喜びそう。むしろ自分から『なぁなぁ、あれ、わたしやったんやで?』って言いたくなるわ」
◆戸塚「それは、自分からバラして自滅することになるけど、いいんですか」
◆もちこ「あ、そっか、やっぱ言わない(笑) 聞きながら、にやにやして、内心『ク〜ッ』ってなると思う」

 

◆ノア「お雪は、自慢してるわけではないけど、最後、消える前に3回も『それ、わたしなんたで?』って叫んでるよ。『それは私、私、私でした。それは雪でした』だって。ねぇ、3回って凄くない? 英語だと違和感ないのかな」
◆もちこ「あぁ、それはあるかもね」
◆ノア「Me! Me! っていう叫び」
◆Caori「日本より感情表現が激しい、みたいな」
◆ノア「激しいよね、ここだけ急に。『私、私、私でした』って選挙カーみたいじゃない? 『私、私、私でございます』みたいな」
◆Caori「何回も強調するのも、自己主張じゃないかな、って思って。これはさぁ、お雪からしたら、いくら綺麗って言われてもやっぱり嬉しくないよ。だって、巳之吉が雪女をお雪と違う女だと思って褒めてる限りは、やっぱり自分と比べて他の女が褒められてるっていうことになるわけじゃん?」
◆もちこ「あ〜、なるほどな。自分であって自分じゃないのね?」
◆Caori「そうそう、巳之吉が誰のことだと思ってほめてるかが重要。だから、自分の存在を訴えてるんだろうな、っていう感じがする」

 

 

◆ノア「なんか混乱してきたな。複雑だね。この人は、この妖怪は? 雪女として約束を破られた悲しみと、お雪として他の女の話をされた悲しみと、2つ混ざってるっていうことか」
◆Caori「そういうことそういうこと。1人の中にどっちの面もあって、どっちの人格? としても悲しいし、怒るってこと」
◆もちこ「妖怪格ね、妖怪格」

 

◆もちこ「要はさ、巳之吉が黙ってりゃ良かったんじゃないの?」
◆戸塚「うん、何度も言うけど、そういう教訓の話だからね、喋るなって言われたことを喋っちゃいけない、っていう話だから」
◆Caori「約束破るとこうなりますよ、的な話ね。昔話って大体そうなってるよね」
◆ノア「生活の知恵を授けるためのお話多いよね。森に入るとオオカミに食われますよ、とか。これは何? やっぱり自然の猛威?」
◆戸塚「うーん、そうかな、多分。吹雪とか、凍死とか。これ一応、武蔵の国って言ってるから、関東の話なんですよね、雪国じゃなくて」
◆Caori「地球温暖化する前だしさ、もっと寒さとか厳しかっただろうね、関東も」

 

◆ノア「巳之吉って、そんなに悪いことしてるわけじゃないよね? 仲良く夫婦生活送ってるし」
◆もちこ「そうなんだよなぁ。我々はさぁ、『竹の木戸』の磯吉とか、『秋』の俊吉を知ってしまってるからさぁ。巳之吉は比べたらもう、全く悪くないよ、いいヤツだよむしろ」
◆Caori「みんな吉が付くね」

 

◆戸塚「読み方としては、どうしたらいいんだろう?」
◆ノア「トータルとして考えると、巳之吉が安穏としてる方がいいんじゃない? やっぱり」
◆戸塚「あ、なるほど、そっちか……」
◆ノア「お雪は、わざと促したり怒ったりしてるけど、何にも気付かずペラペラ喋るのんきな巳之吉、っていう感じで。安心しきってる感じ」
◆Caori「その方が、お雪の怒りが倍増されそうだし。幸せな結婚生活から、それが終わるっていう対比も出そう」
◆ノア「これ、最後、巳之吉、なんでお雪が消えたのか理解できなくて、呆然としちゃいそうだね、このテンポだと。しばらくしてから気付きそう」
◆もちこ「ね。巳之吉側からしたら、結構、助走なく急に怒り出した感じするから、わぁぁってなるよね」

 

◆もちこ「悲しいな、最後、消えてくとこ、凄い綺麗だよね、文章。ここ感動しちゃうんだよな。白い霞になってキラキラキラ! って消えてく感じ。映像で思い浮かべちゃうよね」
◆戸塚「これ、サジ加減が難しくて。急に怒り出して、結構喋るけど、叫んでる途中で声が弱々しくなってくるって書いてあるから。どこから変えればいいのかな」
◆もちこ「弱々しいって、声の大きさのことじゃない?」
◆Caori「最後の最後まで結構しっかり怒ってるもんね、セリフ的には」
◆戸塚「そう。口調っていうより声の大きさとか、聞こえ方として弱くなるんだろうけど」
◆もちこ「普通に怒って読んでいいんじゃない? 編集だよ編集。あとは編集する人にドンと任せよう。好きに読もう」
◆Caori「そうだ、編集だよ編集」
◆もちこ「綺麗に読んで。とにかく綺麗に。そして悲しく」

◆Caori「そして儚く」
◆戸塚「難しいな……」
◆もちこ「大丈夫、君ならできるよ(適当)」

 

ところで、ふと横を向いて、真面目に戸塚を指導するかおりんを見たら、宗教画みたいになってましたので、ごらんください。
ロマネスク様式のキリスト教絵画にも見え、曼荼羅のようにも見える。つまり、ありがたさのハイブリットです。