新美南吉「手袋を買いに」|作品に登場する語彙の解説

新美南吉『手袋を買いに』メインビジュアル コラム
てぶくろを買いに
コラム

新美南吉の短編『手袋を買いに』に登場する、ちょっと難しい言葉の意味を調べてみました。

劇団ののは、言語学や歴史学のプロフェッショナルではありません。
様々な文献や辞書をあたったり、プロフェッショナルの方に手助けをいただいたりはしていますが、あくまでも自力で調べ物をした結果を掲載しています。誤った情報が含まれている場合がありますので、ご注意ください。
また、調べ物をした結果、真実が突き止められないこともあります。
ご了承ください。

真綿【まわた】

現在では「綿100%」と言えば植物の綿花を収穫して作った物のことを差しますが、真綿は蚕(かいこ)の繭(まゆ)を煮た物を引き伸ばして綿にした物で、絹(シルク)の一種に当たります。 日本では、室町時代に朝鮮半島から木綿の種が渡来して生産が定着する以前、綿といえば真綿のことを差していました。木綿が登場したことによって、区別するために”真”綿と呼ばれるようになりました。

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牡丹色【ぼたんいろ】

花の牡丹の花弁の色をそのように呼び、華やかなピンク色です。着物の色としても好まれました。 作中ではキツネの子どもの手が冷えて、そのような色になっているとされています。キツネの手元の毛は黒っぽい濃い色で、肉球があります。通常、雪が降る気候の土地に生息する野生のキツネやタヌキは、凍った土の上や雪の上を歩いてもしもやけにはならないはずなので、新美による擬人化の表現だと考えてよいでしょう。

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キタキツネ Wikipedia
アカギツネ Wikipedia

お百姓【おひゃくしょう】

農業を主な仕事とする、農民や農家の人のことをさします。
ただし、ややバカにしたニュアンスを含む使い方をされることもあったため、平成に入ってから、あまり農家の方を「お百姓さん」と呼ばなくなりました。

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シャッポ

西洋の、つばのある帽子の総称で、フランス語の「chapeau(シャポー)」が訛ったものです。ここでは山高帽やシルクハットなど紳士のものを表しています。
その後、キツネの子どもが看板を発見した時には「シルクハットの帽子の看板」となっています。
慣用句で「シャッポを脱ぐ(=脱帽する)」とは、帽子を脱いで相手に敬意を表す仕草から来たもので、敵わない相手に降参する様子を差します。
帽子屋で手袋を求めているのは、ベルトや手袋などの身に付ける雑貨を置く「洋品店」のようなものであったからだと推測されます。

シルクハット Wikipedia
山高帽子 Wikipedia

白銅貨【はくどうか】

白銅でつくった硬貨。
白銅とは、銅にニッケルを15~25パーセント加えた合金で、銀白色です。硬度がありもちが良いため、硬貨や装飾品に多用されます。 十銭や五銭の硬貨に使用されました。

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一寸【いっすん】

昔の長さの単位「尺貫法」に基づく測り方です。1寸=約3cm。

コバルトの影【こばるとのかげ】

「月が出たので、狐の毛なみが銀色に光り、その足あとには、コバルトの影がたまりました」とあります。 「コバルトの影がたまりました」とは、「コバルトのような色をもつ影ができた」という比喩表現であると考えられます。影は本来「たまる」ものではありませんが、雪を踏んでできた窪みに水たまりのように滞在していることをそのように表現していると考えられます。 コバルトは金属で、純粋なものであれば銀白色です。しかし、一般に「コバルト」と言えば、画材や顔料としてのコバルトブルーのイメージが強くあるでしょう。雪は日光や月光の下では青い光を反射します。また、「足あとには、コバルトの影がたまりました」は「キツネの毛なみが銀色に光り」と並列で書かれていますが、キツネの毛並みと雪にできた影が両方とも銀色であれば、わざわざ表現を変える必要はあまりないとも考えられます。以上の二点から、劇団ののでは、青色の方を指しているのではないかと推測しています。

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参考文献

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