「きのこ会議」ってご存知でした?
夏の暑さも引き、しかし、まだそんなに秋めいても来ていない、中途半端な気候のある日。
都内某所。
キャストの吉田素子さんと、会いました。
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色々話し終わった後、吉田さんから伝えられたこととは……
「そうえいばさ、夢野久作の『きのこ会議』っていうのがあって。ちょっと読んでみて」
と、いうことでした。
何せ、吉田さんは、怪談シリーズを選んでくれたのですが。
その時に配信した『縊死体』の作者、夢野久作さんの作品を読んでいて、これを見つけたそうです。
「こんなのあるんだ! 『きのこ会議』……なんて楽しそうなタイトルなんだ!」
と、吉田さんは、思ったそうです。そして読んでみると、これまた、はまってしまったそうです。
そこで、スマートフォンの画面で、一緒に青空文庫を読んでみたのですが。なんとたくさんのキノコが登場するのでしょうか。初めて見るキノコの名前が、たくさん並んでいます。
「きのこ会議」をやりたい
「いいね、いいね、これ劇団のので読んでみたいね」
と言うと、すかさず、
「あのね、わたしはね、このキノコたちの役を、全部自分でやるつもり」
と、吉田さん。
あ、もうそこまで決まっていたんですね、吉田さんの中では。
さっきまで、思い出した風を装って、
「そういえば、こんなのもあった気がする。もし良かったらどうかな」
みたいなテンションだったのに。
「うん。わたし、全部のキノコの役を、声変えて、演じ分けるから。全部を1人でやるよ」
ま、まじか。 この『きのこ会議』、前半はきのこたちが会議をしているんですが、後半に、人間の家族が登場するんです。4人家族。
「あ、そうそう、その家族の役もね、それも全員わたしがやるから。お父さんもお母さんも。娘も息子も。キノコたちとは、また違う感じで。トーン変えるし」
そ、そうか。
なんだろう、この堅い決心は。わたしは、未だかつて、こんなに意志の堅い吉田さんを、見たことがあるだろうか、いや、ない。
「でね、ナレーション部分はやってほしいんだけどさ。『はたらく細胞』っていうアニメがあるんだけど知ってる? あれのナレーションをコピーしてほしい」
わかりました。
演出は、見たことないアニメのナレーションをコピーすることになりました。
「でさ、いつも出してるテキストの、解説の部分あるじゃん? それには、こんな感じで……」
と、紙の隅に、なにやら、キノコの絵を描く吉田さん。
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ん? ……じばにゃん?
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「ポケモン図鑑みたいな感じで。キノコをキャラクター別に分けてね、特徴とか、分布とか、そういうのを書いてくわけ。毒の有無とか。きのこ図鑑的な?」
え、こんなにいっぱい出て来るきのこ、全部について調べるの……
「うん、調べる。わたしが調べるよ。あとさ、キノコ1つ1つに対して、まぁ、吉田が、このキノコについて思うひとこと、みたいな? キノコへのコメントをさ、書くよ」
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すごい、なんだろう、このやる気は!?
キノコへのコメントについては、正直「書くよ」って威張るほどでもない投げ遣りな内容だが。しかも、2枚目にしてさっそく「No Image」なのが不安すぎるのだが。 しかし、今日の吉田さんは何か違うぞ。
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まるで見えない力に突き動かされているようだ。この人は、一体何故そんなにきのこに惹かれているんだ!?
たしかに、『きのこ会議』は面白いとは思うけど、そこまで熱心になるようなことなのか?
と、わたしはこの時点では内心、吉田さんのやる気に対して押され気味でおりました。
きのこを食べました
所変わって。
キノコの話が深まりそうだったので、一緒にお夕飯をいただくことに。
しかし、ここでまた吉田さんのきのこ愛が爆発。
「あれ? 季節限定メニューにするよね? まさか裏切らないよね?」
え?
た、たしかに、見るとそこには2種類のきのこ料理が。
ドヤ顔で期間限定メニューを奨励してくる吉田さん。
「ほら、やっぱ、キノコなんだよ」
何が?
「今、キノコがキテるんだよ!」
まぁ、旬の食べ物だからね。そりゃ巡ってくるよね。
「いや、いいんだよ、無理しなくて。他の好きな物、食べなよ」
食べづらいよ。普通のメニュー食べづらいよ。
もはや選択肢は2択しかないようだ……! 我々は、2つのキノコ料理を注文。
「で、どうする? 夕飯食べる流れになったけど、もう話すこと特にないね……結構全部決めたし……」
そうなんだよなぁ……。
「よし、わかった、フリートークで何を話すか、トピック決めておこう」
と、再びノートを取り出し、キノコのイラストを落書きしながら、思考を深める、吉田さん。
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「おっけい、キノコトーーク!! ……え? どうする? 2人で何話そうね。キノコについて……キノコとの個人的な思い出とか。ある?」
思い出かぁ……(遠い目)
「ないか。わたしも別にないわ」
わたしは思った。
では、この人は何故そんなにキノコに思い入れを持っているんだろうか。思い出1つもないくせに。
「じゃあ……キノコ占いする? そんなあなたは、マイタケ! みたいな。動物占いみたいなやつだよ。クジ引いて、読み上げていく……あ! あみだくじ、どう? 辿っていくと、キノコのどれかにたどり着くんだよ」
それを、音声でやるのですか?
「はい、じゃ、とりあえずキノコ占いは決定で。っていうか、もう話すことなくない? あ、あと、キノコの豆知識とか。こんなレシピがおいしいとかね。じゃ、わたしキノココーヒーについて話すわ」
キノココーヒーってなんだろう?
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「キノココーヒー、あるんだよ、そういうのが。あ! そうだ! ……あ、いやぁ、でもこれはなぁ〜」
お、なんだ? どんなアイディアでも、キノコ占いよりはマシなのでは。
「や、キノコと言えばさ、きのこの山と、たけのこの里、どっちが好きか、っていう論争、あるじゃん?」
ん?
それは…… それはお菓子の話であって、きのこの山は、キノコではない! もはやキノコの話ではないぞ!
「ねぇ、正直どっち派?」
大変言いづらいが、わたしは幼い頃より、生粋のたけのこ派なのでした……。
いや、どちらも好きなんですよ、出されたらどちらも食べるよ。2つ並んでたって、きのこを買うこともある。 でも、世界の終わりにどちらかしか残せないとか、無人島にどっちかしか持って行けないって言われたら、たけのこ派なんですよね。
「偶然にも今年さ、公式に、全国できのこVSたけのこの戦いがあって。たけのこ派が僅差で勝ったんだよね。日本人はもっとキノコに愛を持つべきだよ。それを訴えていこう」
吉田さん、気付け。 あれは、お菓子だ。 小麦とチョコでできたお菓子なんだ。1ナノグラムのキノコエキスも入っていないんだ。
「でもさ〜ぁ、あれ、キノコじゃないんだよな。お菓子なんだよな」
気付いたか。
「それはね、思ってた。でも他に話すことないから話そう。あとさ、うちらはさ、もうちょっとちゃんと、キノコについて学ぶべきだよね。とりあえず、まずは Wikipedia 読もう。だってさ、知らないこといっぱいあるよ。例えば、キノコって漢字あるじゃん? なんでたけかんむりなのかな、とか、気にならない? (検索)あ、くさかんむりだったわ! あっはっは! でもさ、なんで○○タケって言うのかな、とか、気にならない?」
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たしかに。くさかんむりなのに。「しいきのこ」とか「まいきのこ」じゃなくて、「しいたけ」「まいたけ」っていうのは、何故なんだろう?
「ねぇ! 知ってた!? よく「ベニテングダケ」って言うじゃん。あれ、間違ってるんだって。竹は「青竹(あおだけ)」とか「真竹(まだけ)」って言うけど、キノコは濁っちゃいけないらしいよ!」
え、そうなの!?
そうそう、そういのを待っていたんだ。そういうのを話そう。
なんか、キノコに興味が湧いてきました。もっと調べようと思えてきました。 こうしてまた1人、キノコの魅力に取り憑かれた人間が増えていくのでした。
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ところで、季節限定のキノコメニューでしたが、大変おいしくいただきました。
キノコいっぱい入ってるし。やっぱり、キノコってすごい美味しいですね。独特の強い風味と、噛みごたえ、でも柔らかくて。不思議な食べ物です。
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今ひとつテンションが見えづらい吉田さん。
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お店のお兄さんも、キノコの風味に負けない独特さでした。
吉田さんのお膳は逆さまに置かれました。
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そして、わたしのデザートは、食べている途中で持って行かれました。
「ごゆっくりどうぞ!」と言って、下げられてしまいました。
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世の中は、まだ解明されていない不思議なことで、満ちあふれています。
参考リンク
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作品に登場する古い言葉、難しい言葉の読み方や意味の解説はこちらから↓
作品に登場するきのこのイラスト入り図鑑はこちらから↓
作品本編はYouTubeでも配信中↓