ジャニーズ横光?

 

本日のお稽古も、アーバンな都会の会議室でした。

Google Map を見たら、交差点の真ん真ん中にピンが立っていたので、いや〜やっぱ都会は違うな〜どんなデザイナーズなコンセプトやねんと思い、たどり着いたら、本当に交差点の真ん中でした。

角っこのビルでした。わかりづらいです。全員が道に迷って遅刻しました。

 

 

今日は、横光利一『春は馬車に乗って』の、夫婦の会話の練習です。

夫がいないのですが、台本の前半にフォーカスして、夫と妻がどんな人なのかを、探ろうとしています。

 

 

のあ「この夫婦は、ネット上の読書感想とかだと、仲良しでほっこりして、泣けてくる、とか。夫が献身的ですっごい優しいとか言われてるんだけど、みなさんどう思われます?」

スズキ「うーん、なんかこう……優しさの定義の問題なのかもしれないけど、優しいか?」

もちこ「まぁ、確かにそう。優しいとは思うんだよね。ずっと看病してるし。でも、言葉の上でどうかと言われると」

のあ「柔らかい言葉を使う人ではないよね。現代的な、その、丸い言葉遣いをする王子様的な彼氏っているじゃん」

もちこ「あぁ、そうそう、それではないね」

スズキ「ぶっきらぼうっていうかね」

 

 

のあ「欲しい言葉をくれないよね。そこが、ともすればギスギスして見えるんだな」

もちこ「でもさ、体さすったりとか、結構ちゃんと付き添ってるんだよ。我慢強く。献身的なのはそうだろうな、と思うよ」

のあ「やっぱ、言葉尻の問題かな。昔の話だし、闘病してるから、渋く見えて、老夫婦を想像しちゃうんだよね。それで夫がすごいぶっきらぼうなおっさんみたいなイメージになっちゃう」

スズキ「若いはずだよね、この夫婦が横光利一と妻の話だったら」

やすな「20代前半か」

もちこ「うーん、想像するのはおっさんかな」

のあ「そうだね、完全に渡哲也で脳内再現されてたわ。着流しの渡哲也が縁側から目細めて海眺めてそうだもん」

やすな「妻も、今まで結構しっとり読んじゃってましたね。若いってなると、声どうしたらいいんだろう、っていう」

 

 

夫の言葉は、現代人の我々からすると、ともすると高圧的に見えますし、どうしても落ち着きのある年配夫婦のイメージが拭い去れないわたしたち。

そこで、3人で代わる代わる夫の役を回し読みをして、色々な読み方を試してみました。

 

まずは、シーン1から。

夫=演出のあ、で。

 

まずは、シーン1から。

 

* * * * *

 

妻「まあね、あなた、あの松の葉が、このごろそれは綺麗に光るのよ」
夫「おまえは松の木を見ていたんだな」
妻「ええ」
夫「俺は亀を見てたんだ」

2人ともしーんとする。

夫「おまえはそこで長い間寝ていて、お前の感想は、たった松の葉が美しく光ると云うことだけなのか」
妻「ええ、だって、あたし、もう何も考えないことにしているの」
夫「人間は何も考えないで寝ていられるはずがない」
妻「そりゃ考えることは考えるわ。あたし、早くよくなって、シャッシャッと井戸で洗濯がしたくってならないの」
夫「洗濯がしたい?」

答えの意外さに笑う。

夫「おまえはおかしなやつだね。俺に長い間苦労をかけておいて、洗濯がしたいとは変ったやつだ」
妻「でも、あんなに丈夫な時が羨ましいの。あなたは不幸な方だわね」
夫「うん」

夫は、考える。
妻と出会ってから結婚するまでの4-5年間、妻の家族の反対に遭い、大変だったこと。
妻と結婚してから、母と妻との間に挾まれた2年間の苦痛な時間。
母が死に、妻と2人になると、急に妻が肺病で寝込んだ、この1年間の艱難。

夫「なるほど、俺ももう洗濯がしたくなった」
妻「あたし、いま死んだってもういいわ。だけども、あたし、あなたにもっと恩を返してから死にたいの。このごろあたし、そればかり苦になって」
夫「俺に恩を返すって、どんなことをするんだね」
妻「そりゃ、あたし、あなたを大切にして、……」
夫「それから」
妻「もっといろいろすることがあるわ」
夫(しかし、もうこの女は助からない)
夫「俺はそういうことは、どうだっていいんだ。ただ俺は、そうだね。俺は、ただ、ドイツのミュンヘンあたりへいっぺん行って、それも、雨の降っている所でなくちゃ行く気がしない」
妻「あたしも行きたい」
夫「お前は絶対安静だ」
妻「いや、いや、あたし、歩きたい。起してよ、ね、ね」
夫「ダメだ」
妻「あたし、死んだっていいから」
夫「死んだって、始まらない」
妻「いいわよ、いいわよ」
夫「まあ、じっとしてるんだ。それから、一生の仕事に、松の葉がどんなに美しく光るかっていう形容詞を、たった1つ考え出すのだね」

 

* * * * *

 

 

スズキ「おー。なんかジャニーズっぽかった」

のあ「えっ?」

もちこ「いや、ジャニーズっぽかったよ」

のあ「えっ?」

もちこ「というか、ニノっぽかった」

のあ「そうなの? あ、でも、今自分で演技してみて、発見は色々あった。あのね、気づいたのはね、やっぱり挑発してるね、こいつは」

妻「あぁ、そうです、夫の口調が若返ったことで、上から目線で嫌味言ってるよりは、必死でつかかって来てる感じしましたね。でも、これ妻も結構負けてないですよね。だから」

スズキ「うんうん、部分によっては妻が夫をやりこめてるっていうか。不意打ちしてるとこもあるよね」

もちこ「うん、ひるむニノもいたね」

のあ「そうそう、ひるんだね。妻の返しが意外だったり、痛いところついて来るから、ウグ……ってなるよ、結構」

やすな「ああそうです? わたしも言い負かしてやろうって思ったり、イラッと来たりしました。お互い挑発し合ってますね。これ」

スズキ「だから意外に若いノリなのかも」

もちこ「ツンデレ的な? あるよね、オラオラ系みたいな。俺様みたいな。少女漫画に出て来る男」

のあ「どこかで聞いたことあるような」

スズキ「芥川龍之介『秋』ですね」

もちこ「そうですね。完全に俊吉ですね」

 

 

やすな「ああ、そうなんですね?」

もちこ「なんかねぇ、こういう会話をするのよ。俊吉と照子っていう夫婦なんだけど」

のあ「正直、それは頭にあった。俊吉が明確にあったというよりは、芥川っぽさは考えてた。彼らもね、一筋縄じゃいかないやりとりをするんだよね。夫が、なんかこじゃれた嫌味を言って、妻が負けじと小粋な答えを返す、みたいな」

やすな「流行ってたんすかね」

スズキ「まぁ一種の流行りはあったんじゃないかと思うんだけど。こういうのがオシャレでイケてる会話だったんだろうか。文学界隈では」

のあ「完全に同時代だからね。いやでも完全にわかりました、これは。最後のセリフとかさ、さっきまでは、なんで病人に向かってこんなひどいこと言うんだろう、なんでこんなに意地悪なんだろうってずっと思ってたんだけど。わかりました」

もちこ「えー、ずるいなぁ、早く教えなよ」

 

 

では、ここから、夫にニノ演出を付けてもう1度、見てみましょう。

 

* * * * *

 

妻「まあね、あなた、あの松の葉が、このごろそれは綺麗に光るのよ」
夫「おまえは松の木を見ていたんだな」
妻「ええ」
夫「俺は亀を見てたんだ(←なぜかここで俺語りを始める。構ってちゃん?)」

2人ともしーんとする。(夫の方がちょっと、妻の沈黙が気になる。沈黙が少し怖い)

夫「おまえはそこで長い間寝ていて、お前の感想は、たった松の葉が美しく光るということだけなのか(←妻に何か物を言わせたくて、なぜか挑発してしまう)」
妻「(落ち着き払って)ええ、だって、あたし、もう何も考えないことにしているの(←妻の方が一枚うわてかも)」
夫「(必死にその上を行こうとして)人間は何も考えないで寝ていられるはずがない(←また挑発しようとする)」
妻「そりゃ考えることは考えるわ。あたし、早くよくなって、シャッシャッと井戸で洗濯がしたくってならないの(←妻は、相手の予想通りの回答をする人間ではない。そのトリッキーなとこが多分、夫の心をくすぐる、妻に恋してる理由なのかも。浅倉南的な)」
夫「(不意を打たれたので素の口調で思わず)洗濯がしたい?」

答えの意外さに笑う。(笑うのも、素で)

夫「おまえはおかしなやつだね。俺に長い間苦労をかけておいて、洗濯がしたいとは変ったやつだ(←やっぱりちょっと一捻り、上から言いたい)」
妻「(やはり落ち着き払って)でも、あんなに丈夫な時が羨ましいの。あなたは不幸な方だわね(←妻は、自分の病気が重いこと、家事をすることができないので夫がかわいそう、ということを夫に印象付けたい)」
夫「(ちょっと上の空で)うん(←妻の病気の話を真正面から突きつけられて、一瞬黙りこんじゃう)」

夫は、考える。
妻と出会ってから結婚するまでの4-5年間、妻の家族の反対に遭い、大変だったこと。
妻と結婚してから、母と妻との間に挾まれた2年間の苦痛な時間。
母が死に、妻と2人になると、急に妻が肺病で寝込んだ、この1年間の艱難。

夫「(ここで真面目に返すと、この話に向き合わないといけないので)なるほど、俺ももう洗濯がしたくなった(よくわかんない方向でごまかそうとする。また俺の話かよ)」
妻「(夫のごまかしを受け入れない真っ直ぐとした感じで)あたし、いま死んだってもういいわ。だけども、あたし、あなたにもっと恩を返してから死にたいの。このごろあたし、そればかり苦になって(←死の話を真っ向勝負で突きつける)」
夫「(ちょっと焦って、でも努めて冷静に)俺に恩を返すって、どんなことをするんだね(←かろうじて後半の話を拾う)」
妻「(これは意外な返しだったので、実際あんまり考えてなかったと思う)そりゃ、あたし、あなたを大切にして、……」
夫「それから(←妻が答えに詰まってるのをちょっと楽しんでいる)」
妻「(勝ち気な感じで)もっといろいろすることがあるわ(←こういうところがやっぱり妻の可愛いところ)」
夫(しかし、もうこの女は助からない)(←心の声。自分でも本当はわかっているが、妻とはそういう話をしたくない、向き合いたくない)
夫「(ここで、映像なら、ちょっと妻の床から離れて縁側に歩き出し、目を合わせないように、海をぼーっと見たりするかも)俺はそういうことは、どうだっていいんだ。ただ俺は、そうだね。俺は、ただ、ドイツのミュンヘンあたりへいっぺん行って、それも、雨の降っている所でなくちゃ行く気がしない(←もはや、現実逃避しすぎて、本当に脈絡の無いことを口走ってる)」
妻「あたしも行きたい(←わがままさと、元気だった頃の好奇心から純粋に行きたい気持ちと、夫に突きつけたい気持ちが混ざっている)」
夫「(ちょっと真剣に心配になっちゃって焦る)お前は絶対安静だ」
妻「いや、いや、あたし、歩きたい。起してよ、ね、ね(自分でもめちゃくちゃ言ってるのがわかってて、でもわがままを言いたい)」
夫「(本当に叱りつけて)ダメだ」
妻「あたし、死んだっていいから(やっぱり、死ぬんだっていうことを夫に言いたい)」
夫「(ちょっと言葉に詰まって、間を開けてから)死んだって、始まらない(←やっと押し出した、ズレた答え)」
妻「いいわよ、いいわよ(←向き合ってくれないことへの苛立ちが顕になり自暴自棄みたいな発言)」
夫「(死んでもいいということに本当に憤慨して、でも冷静ぶって強めに)まあ、じっとしてるんだ。それから、一生の仕事に、松の葉がどんなに美しく光るかっていう形容詞を、たった1つ考え出すのだね(←軽口っぽく、ちゃんと安静にして療養してほしいということを言っている。これを言うのがやっと。早く逃げたい)」

 

* * * * *

 

のあ「こんな感じですかね」

スズキ「なるほどね」

 

もちこ「そう考えるとやっぱ若いな」

のあ「うん。チャラくありたい、って感じた。必死で自分を保ってる。でもこれ2人とも相当頭よくないとできないな、こんなの。わたし頭ついていかない。何か言われても、ほーん?ってなっちゃう」

もちこ「わたしも無理だわ」

のあ「なんでそんな意地悪言うんだろう……ってなって、病気でつらいし、言い返さないでぼーっとしちゃいそうだな」

妻「妻は、この人は、ずっと自分の死に向き合ってて。普段から。夫にもそれを早く共有したいんだけど。夫はそこから逃げ続けてる。そういうことなんですね。そこから始まってるんですね、この話。妻はずっと自分の死を話をしようととして機会うかがってますもんね」

 

 

のあ「だから、口調はチャラいんだけど。俊吉とは何か違うよね」

もちこ「違うね。この夫は心の中は上から目線じゃない。ほんとは妻と向き合ってるよね」

 

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