横光利一「蛾はどこにでもいる」|作品に登場する語彙の解説

ことば調べ
蛾はどこにでもいる
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横光利一の短編『蛾はどこにでもいる』に登場する、ちょっと難しい言葉の意味を調べてみました。

劇団ののは、言語学や歴史学のプロフェッショナルではありません。
様々な文献や辞書をあたったり、プロフェッショナルの方に手助けをいただいたりはしていますが、あくまでも自力で調べ物をした結果を掲載しています。誤った情報が含まれている場合がありますので、ご注意ください。
また、調べ物をした結果、真実が突き止められないこともあります。
ご了承ください。

葬に示してくれた知己の好意【とむらいにしめしてくれたちきのこうい】

「葬」とはお葬式のこと、知己は友人・知り合いのことです。
妻のお葬式の時に、知人や友人に参列してもらったこと、助けられたり励まされたりしたことを差しているのでしょう。
お香典のような金銭のやりとりは諸説ありますが、大正〜昭和初期に広まったと言われており、そのことを差しているかどうかは定かではありません。

蚊帳【かや】

蚊を避けるために天井から吊る、テントのようなものです。
麻や木綿などの布で作り、風は通しますが虫は通れません。
主に寝るときに、布団の上に吊りました。
スタジオ・ジブリの映画『となりのトトロ』では、夜中にサツキとメイが目を覚ますと、トトロたちが畑にやって来て、それを蚊帳ごしに見るというシーンがあります。また、『火垂るの墓』では、主人公の清太と節子が、蚊帳の中にホタルを集めるシーンがあります。

桟【さん】

障子の骨組みとして縦横に組まれている、木でできた枠の部分です。

Wikipedia

観じ(る)【かんじる】

心をしずめて、物を正しく見ることを意味しますが、ここでは「感じる」に近い意味かもしれません。

美妙(な)【びみょうな】

なんともいえないほど、すばらしく美しいことです。「妙」には「すばらしい」という意味があります。

空漠(たり)【くうばくたり】

広々としてどこまでも続いているようすです。

茫々と(する)【ぼうぼうと】

広々としているようす、ぼんやりとしてかすんでいるようすです。

逆手を打(つ)【さかてをうつ】

何かに対して反対の考え方や方法で対応することです。
「死とは何だ」に対して、「死について考えるべきか」という自分の考えに逆の意見を出しています。自問自答しているわけですね。
日本国語大辞典には掲載されていますが、本作品以外に例文が見つからず、横光独特の表現のようです。
相撲用語、囲碁用語、将棋用語、方言などを当たりましたが、近い表現はあるものの、これと同一のものではありませんでした。

出来得べくんば【できうべくんば】

できるならば、という意味です。

悄然と(する)【しょうぜんと】

気にかかることがあって、元気がない様子です。

眩惑【げんわく】

あまりの美しさに目がくらみ、まどわされることです。

恋々とす(る)【れんれんとする】

それに魅力を感じることをやめられないこと、未練を感じることです。燃えさし

倦(く)【あく】

「飽く」「厭く」とも書きます。飽きるということです。
同じような状態がずっと続いて、嫌になってしまうことです。

念力【ねんりき】

現代では手を触れずに物を動かしたりする、超能力の意味で使うことが多いですが、ここでは、念の力、つまり強い思いの力のことです。

母屋【おもや】

敷地内にいくつかの建物があるような屋敷で、その中心となる大きな建物です。
母屋には主人の家族が住み、少し小さい建物の「離れ」には、客人や下宿人、使用人、隠居した老人が住みました。
また、農家などでは、蔵や納屋に対して、住居を母屋と呼ぶ場合もあります。

香炉【こうろ】

お香をたくための器です。金属や陶器、漆器などでできています。

手なぐさみ

「手慰み」とも書きます。手先でものをいじること。また、退屈をまぎらわすために手を動かすことです。

胸の方が(悪い)

ここでは、女性は「胸の方が悪い」と伝えようとしています。
ここでは、「胸」とは「肺」を、「肺が悪い」ということで、つまり結核を表現しています。

愁麗な【しゅうれいな】

秀麗とも書き、例えば「眉目秀麗」という四字熟語が有名です。
他のものより一段と立派で美しい様子を表す形容詞です。
ここでは、愁い(うれい)を帯びた麗しさがある、という意味だと推測できます。

敏捷な【びんしょうな】

動きがすばやい、という意味です。

日本間【にほんま】

日本の伝統技法を用いて作られた部屋のことです
ここでは、旅館の洋風の部屋ではなく、和風の部屋を表しています。畳が敷いてあり、布団で寝るタイプの部屋です。旅館に多いですが、ホテルにもあることがあります。

女中【じょちゅう】

江戸時代、裕福な武家や農家には住み込みの使用人がいました。
武家では、裁縫や習い事をし、花嫁修業の意味合いが強いものでした。
明治時代になると、中流家庭にも、住み込みで家事や子守をする女性の雇用が広まりました。

夜の膳【よるのぜん】

「膳」とは、一人前の食事を乗せるための、縁のついた小さなテーブルです。
現在でも、旅館や料亭など、和室で食事をする際に使うことがあります。
転じて、食事のことも指すようになりました。
ここで言う「夜の膳」は、夕食のことです。

Wikipedia

敢然と(する)【かんぜんと】

思い切って、強い意志を持って、という意味です。

参考文献

参考リンク

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