土田耕平の短編『狐の渡』に登場する、ちょっと難しい言葉の意味を調べてみました。
劇団ののは、言語学や歴史学のプロフェッショナルではありません。
様々な文献や辞書をあたったり、プロフェッショナルの方に手助けをいただいたりはしていますが、あくまでも自力で調べ物をした結果を掲載しています。誤った情報が含まれている場合がありますので、ご注意ください。
また、調べ物をした結果、真実が突き止められないこともあります。
ご了承ください。
科野の国【しなののくに】
現在の長野県にあたる地域です。奈良時代に表記が「信濃国」に統一される前の古い書き方で、歴史書『古事記』でも使われています。
土田耕平は、長野県諏訪市の出身で、舞台になった川の南西部に当たります。
踏みたがえ(る)【ふみたがえる】
踏み間違えることです。ここでは道を間違えることをさしています。
犀川【さいがわ】
長野県を流れる大きな川です。上流は梓川と呼ばれます。松本盆地、安曇野市を通り、千曲川に合流します。
人々の生活や歴史と密接に関わっており、伝承話もいくつか残されています。
渡し【わたし】
人や物を舟で向こう岸に渡すことです。また、それに使う舟や船着き場のことも言います。
日本では、橋がかけられない川や海が多くあったので、渡し舟が重要な役割を果たしていました。
現代でも一部の地域で観光や地元の人の交通手段として利用されています。
映画「男はつらいよ」で、当時既に廃止されていた矢切の渡しが映り、観光名物として復活したことが有名です。
艪【ろ】
舟を漕ぐための道具です。
舟の後ろに1本だけ固定されていて、左右にひねりながら漕ぐことで舟を前に進めます。大変操作が難しいようです。
映画『千と千尋の神隠し』で、リンが千尋をたらい舟で送るときに使っていました。
公園でよく見かける手こぎボートについている2本セットの棒は、櫂(オール)と呼び、艪とは区別されます。
尻べた【しりべた】
お尻のお肉が盛り上がった部分です。「しりっぺた」とも言います。
渡し賃【わたしちん】
渡し舟で渡る時の料金のことです。
日本の仏式の葬式では、死者があの世で三途の川を渡る渡し賃として六文銭を棺に入れる風習があります。
葛の葉【くずのは】
ツル植物で、野や里や林を覆い尽くすほど、広い丸みを帯びた葉が伸びることがあります。
ツルは、昔は道具などに使用されました。根っこは、葛切りや葛饅頭などの材料に使用されます。
小判一両【こばんいちりょう】
日本家屋において、床がなく土がむき出しになっている箇所のことです。台所や玄関などに土間がありました。
見せ変え(る)【みせかえる】
辞書では見付けられません。土田耕平の造語であると考えられます。
葛の葉を小判に見せかけて騙すことを表しています。
宿場【しゅくば】
旅行をする人が宿泊したり休んだりするための施設が集まった場所です。宿屋だけでなく、レストラン、道具屋、医者などさまざまな施設がありました。
宿場は江戸時代、各地をつなぐ街道のあちこちに置かれ、賑わいました。荷物を送る時の中継地点にもなっていました。
はたご屋【はたごや】
宿のことです。
お子供衆【おこどもしゅう】
よその子どもを丁寧に言う呼び方です。1人に対しても複数人に対しても使えるので、「お子さん」「お子さんたち」といった意味になります。また、江戸時代において、歌舞伎役者の若い役者、美しい少年俳優、江戸の岡場所(遊郭)の遊女のことを指す場合もあるようです。
ここでは、宿の主人は単に子どものことをさしていますが、コン助が美しい顔をしているということから、やや丁寧な意味を含んで呼んでいると考えられます。
状箱【じょうばこ】
「状」は手紙のことで、状箱は手紙や書類を入れておく木製の箱です。手紙を保管したり、誰かに頼んで送ったりするときに使いました。
参考文献
参考リンク
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