海野十三から攻殻機動隊まで、SF文学展覧会!@世田谷文学館

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みなさん、こんにちは!劇団のの・緑色担当の梅田です。

このところ、劇団ののも参加した「文学フリマ」のように「足を運んで文学に触れる」イベントが多くなってきていますが、実は私梅田、今回人生初の「文学館」探訪に行ってまいりました!しかも大好きなSFの展覧会です!!

世田谷文学館 開館30周年記念 コレクション展 『海野十三と日本SF』

「士郎正宗の世界展」と「海野十三と日本SF」
【世田谷芸術百華】[世田谷文学館]開館30周年記念 コレクション展「海野十三と日本SF」

そう!ののリスナーのみなさんならご存じ、「日本のSFの父」と呼ばれる海野十三先生のコレクション展です。海野先生の作品は「ののラジオ」でもシリーズ化してポッドキャスト公開しています。

世田谷文学館が収蔵するコレクションを中心に当時の刊行物や、未完の原稿、日記、書簡といった貴重な資料、約200点を通して、海野先生とその影響を受けた次代のSF作家たち(小松左京、筒井康隆、星新一 …)の魅力をたっぷり知ることができる展覧会です。

そして!なんと世田谷文学館さんはそれだけでは終わりません。こちらの企画展も同時開催!!

世田谷文学館 開館30周年記念 士郎正宗の世界展~『攻殻機動隊』と創造の軌跡~

士郎正宗の世界展〜「攻殻機動隊」と創造の軌跡〜
2025年春に世田谷文学館にて、文学館の開館30周年を記念し「士郎正宗の世界展」を開催いたします。

「攻殻機動隊」と言えば、 全身を義体化したサイボーグである草薙素子少佐が率いる公安9課が、電脳犯罪やサイバーテロに立ち向かう、近未来を舞台にしたマンガ・アニメシリーズです。

この他、「アップルシード」や「ドミニオン」など、士郎正宗さんの作品とSF史を振り返る企画展です。

セタブン(世田谷文学館の愛称)さん、開館30周年ということもあって、かなり力が入ってます!「こんな強力2本立てなら行かないわけはないでしょ!」という話になって、劇団のののスズキヨシコ氏と意気投合して行ってまいりました。

そんなこんなで、わくわくしながらウェブサイトを眺めていましたら、何やら見慣れぬ文字を発見

ムットーニ コレクション上演会

ムットーニ。

みなさんはご存じですか、ムットーニ?

イタリアの新しいお菓子の名前のような。。。でも多分武藤さんのような。。。

で、よくよく読んでみましたら、ムットーニは人の名前で、「自動からくり」なる作品を作ってらっしゃる武藤政彦さんという、かなり有名な作家さん!(不勉強猛省しております。)

そしてなんと海野先生の「月世界探険」もからくり化しているとか!

世田谷文学館の凄まじさ…。ムットーニコレクション+海野十三展はもちろん、からくり人形で攻殻機動隊にもかけているこのセンス…。

この自動からくりは海野十三展の会期中ずっと上演されているようなのですが、私たちの行こうとしていた6月28日は、なんとムットーニさんご本人がいらっしゃって自ら語り上演するとのこと。

これは是が非でも行かねば!ふむふむ、なになに、ご本人口上付き上演回は日に3度、各回先着15名…。

激戦の予感!!世田谷文学館で開館ダッシュする日が来るとは…などと感慨にひたりながら、手に汗握り当日を迎えたのでした。

文学を丸ごと堪能できる世田谷文学館

世田谷文学館は京王線の芦花公園駅から徒歩5分ほどの(南口から出て左に向いてそのまま直進)、閑静な住宅街にあります。もともと近隣企業の工場跡地に住宅街を作る計画があったところ、文化施設も作りたいという要望が上がり建てられたとのこと。

小説や随筆などいわゆる「文学」と聞いて思い浮かぶようなものだけでなく、マンガや雑誌といったものも「文学」と捉えて多く収蔵しているようで、館内にある図書スペースには、企画展をやっている士郎正宗さんの「アップルシード」はもちろん浦沢直樹さんの「マスターキートン」といったマンガや、anan(1970年初版)やPOPEYE(1976年初版)、そしてなんと「ののラジオ」の「酒シリーズ」で読みました、坂口安吾「我が工夫せるオジヤ」の底本「美しい暮しの手帖 第一一号」(1951年発行)も発見!!

こども向けスペースには児童文学もたくさん置いてあって、館長の亀山さんがホームページでおっしゃっている「ジャンル横断的な多様性」に満ちた文学の魅力がぎっしり!この図書スペースだけでもあっという間に時間が溶けそうです。

なので、お子さんといっしょ本を読みに来たり、ひとり静かに小説やマンガに没頭したり、こんなことをしに世田谷文学館に来たって全然OKなのです。(しかも図書スペースは無料

そういえばほとんど文字を読むマンガってありますよね。(ハンター×ハンターとか、ハンター×ハンターとか…)

これも文学!!

(※置かれている本は入れ替わることがあります。詳しくは世田谷文学館「ライブラリーほんとわ」のページをご覧ください。)

いざ、探訪スタート!!

ムットーニさんライブ上演会の整理券ゲットのため、世田谷文学館には09:45頃に到着。もうちょっと早いほうがよかったか?などと、どきどきしながら向かうと、やはり既に列ができていました!まだ10人ほどだったので、少しほっとして最後尾に。

世田谷文学館の正面入り口前
静かな街に佇む落ち着いた雰囲気

09:53、係員さんが出てきて開館前の説明。ふと後ろを振り返ると、なんと列が膨れ上がって50人は並んでたんじゃないでしょうか。おいおい!やっぱり激戦!各回15名×3回=45名のムットーニ枠に既に50人以上。。。甘く見ないでよかった、などと胸をなでおろし、いざ入場です。

世田谷文学館の正面入り口脇を泳ぐ鯉たち
入口脇には立派な鯉!炎天下だったので和みました。

入るなりいそいそと(さすがにダッシュはしてません(笑))整理券配布場所へ。思いのほか人がいないなぁと思ったら、列に並んでた半分以上の人はさっさと士郎正宗展へ行っていました。宣伝・マーケティングも大きいしそりゃそうなるか、と自分を落ち着かせて、その日最初の回(13:30)を無事ゲット。

よし、これで準備万端!ということで、以下のプランで巡ることにしました。

①士郎正宗展→②海野十三展→(お昼)→③ムットーニコレクション上演会

士郎正宗の世界展~『攻殻機動隊』と創造の軌跡~

「士郎正宗の世界展」パネル

こちらについてはたくさんの方が感想を公開しているので、展示内容など詳しくはぜひそちらをご覧ください!

とにかく下書きから原画からコラボアーティスト作品(CLAMP、弐瓶勉、北久保弘之などなど…。)、仕事道具や子供のころからの愛読書など「士郎正宗ワールド」を形作る要素がずらり!

士郎正宗さんの作品、例えば攻殻機動隊なんかはディストピア的で結構重苦しい印象かもしれませんが、キャラが明るくケラケラしゃべったり表情もポップだったりするので、どんどん読めちゃうんですよね。

草薙素子もアニメや映画だと深刻そうな顔をしてますが、原作マンガだと結構明るいタッチで描かれています。

「士郎正宗の世界展」展示
原画を眺めていたのに、気づいたら作品の世界に入り込んでいました。アップルシードまた読もうかなぁ。

士郎正宗展さんの作品って、

  • 人体をサイボーグ化するとは
  • 電脳化した人間は人間なのか
  • ロボット(AI)に心はあるのか
  • ロボット(AI)にも人間のように権利を認め尊重すべきか
  • 生命とは何か

というような本質的なテーマを語る世界観の中で、魅力的で重層的に関係しあうキャラや兵器、ビークルやロボットなどが絡みあって、「想像/考察しがい」のあるところが、その後の日本のSF作品に大きな影響を与えている要素だと個人的に思っています。(新世紀エヴァンゲリオンなどなど。)

いやぁ、あの配線いっぱいついている機械やロボを見るだけでも、「SFしてる!」ってわくわくしてしまうんですよね。

「士郎正宗の世界展」和室にいるフチコマたち
士郎正宗作品と言えば!みんな大好きフチコマちゃんたち!高らかに主張しています。

そんな中、「SF史と士郎正宗」というパネルが目に留まりました。

時代を代表するSF作品と士郎正宗さんの作品の歴史がずらっと並んでいるのですが、士郎正宗的SF年表が60年代から始まっているんです。

「士郎正宗の世界展」の「SF史と士郎正宗」パネル
まだ見たり読んだりしてない作品が見つかって、メモメモ。

ちなみに年表の一番直近だと唯一、ギャレス・エドワーズ監督の映画「ザ・クリエイター/創造者」が入っているのはすごく腑に落ちました。通じる世界観があるので、まだの方はぜひご覧ください!

士郎正宗さんのお生まれが1961 年ということなので、60年代より前がないのはそりゃそうかという感じですが、60年代と言えば、手塚治虫、石ノ森章太郎、藤子・F・不二雄の黄金期。

鉄腕アトムにサイボーグ009、ドラえもん、海外だとフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」やアイザック・アシモフの「I, Robot」など。どれも今やSFのクラシック作品たち。

でも、年表を見ながら気になってしまったんです…、

その60年代より更に前の時代、SFはどのように描かれていたのか?

H・G・ウェルズやジュール・ヴェルヌたちが19世紀後半に発表したSF作品たち(タイム・マシンや海底二万里など)がどのように日本に入ってきて、どのようにこの60年代と今につながっているのか?

AIが考えたノーチラス号
AIくんの考えた、ノーチラス号

そして、気づきました…。

この答えは、そう、海野十三展が補完しているということに…!

いやぁ、すごい!セタブンさんのこの上ない完璧な構成力には参りました。士郎正宗さんの絵をたっぷり堪能して、いざ海野十三展へ!

※ちなみに攻殻機動隊の新作アニメシリーズが2026年に公開とのこと。発表されたメインビジュアルの草薙素子が原作マンガのようなポップなタッチで描かれていて、ちょっと楽しみです。

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