みなさんこんばんは。「劇団のの」の水色担当、ばね です。
先日NHK Eテレで、なんと! 「朗読」をテーマにした番組が放送されました。ご覧になりましたか?
わたしは、見ました。
ほうほぅ、成る程。とためになることが多く、メモを取っていたのですが……
どうも残念ながらこの番組、NHKプラスでの配信などはないらしく。
どうせならみなさんにもご報告した方がいいんじゃないか?
しっかり記録して、後世にこの知見を伝えよう!
というわけで【かってにアーカイブ】を発足いたしました。
NHKの記者さんが番組サイトに書く詳細な内容レポート、みたいなムードで、書き起こしています!
2025年5月9日(金)20時~20時45分(初回放送)『おとな時間研究所』「朗読を楽しむ」
出演:常盤貴子、杉浦友紀(NHKアナウンサー)、高橋淳之(元NHK、フリーアナウンサー)ほか

今回、おとな時間研究所のテーマは「朗読」。常盤さんによる、川端康成『雪国』の情感あふれる朗読からはじまりました。
常盤さんも、舞台やラジオなどで朗読にとりくみ、
「やってもやっても奥が深い。世の中を知るほど楽しくなるのが朗読」
という印象をおもちだそうです。
PART1【朗読教室】
まずPART1では、フリーアナウンサー松浦このみ先生の朗読教室(「グスト・デ・ピーロ」)を取材しました。ここ数年はつねに満員で、順番待ちも出ているほどなんです。
教室にはさまざまな職業の生徒さんが集まっています。そのうちのお一人、看護師さんは、患者さんに声で伝える仕事でもあることから、朗読のレッスンに興味をもったそう。
また別の生徒さんは
「朗読は何も道具をつかわず、身一つ、自分の声ひとつ」
と、醍醐味を語ってくださいました。
それでは早速、先生から朗読のポイントを伺っていきましょう!
1.読む相手を意識する
「朗読は必ず聞いてくれている人がいるので、その存在を、利用するというか…」
自分のなかで思いうかべた「その人」に伝えるようにすることで、言葉が変わるのだそう。元・中学校の校長さんだった川本さんは、当時の生徒さんを思い浮かべて読んでみると……なんだか少し、温度感が上がったような気がします。
「伝えたい気持ちが高まりました」
さらに実は、対象は人でなくてもいい、とのこと!
教室では、目の前の花瓶のお花に向かって読んでみました。たとえペットボトルに向かってでも……対象を意識すると、声は変わるんだそうです。
2.『間』を意識する
「では私が相槌を入れてみるので、それに乗って話してみてください」
と先生が、生徒さんの朗読の合間に「なんていう名前?」「うんうん」と質問や相槌を入れていきます。
このように、文章のなかには書かれていない「相槌」や「接続詞」を入れることで、自然な「間」が生まれ、とても聴きやすい朗読になるのだそうです。
生徒さんからは
「あいづちで、聞いてもらえている実感があって読みやすいです」
という感想も聞かれました。
3.大切な言葉を見つける
さて、さいごのポイント。
長い文章を読むとき、すべての言葉を丁寧に説明しようとすると、ゆっくり……まるで泥沼で足を取られているような風になってしまいます。そこで。
「文章の『芯』を見つけましょう」
読む文章のなかから「ここさえ伝わればOK」というのが、文章の「芯」。そこに焦点を置いて読むことで、緩急が生まれ、意味も伝わりやすくなるのだそうです。
* * *
生徒さんからは「難しいと思い込んでいたけど、ふつうにやればいいんだなと教わりました」などの声が聞かれました。
それを受けて
「上手くなる必要も、いい声を目指す必要もありません。
ご自分が持っているものを、のびやかに、放つ。
それができれば、どなたの朗読も素敵になるんだと思います」
と先生……。
みなさん、とても伸びやかで、どんどん朗読が楽しくなっているようでした!

PART2【高橋アナを迎えて】
ここからは、元NHKアナウンサー、高橋淳之さんをお迎えしました。高橋さんは『ラジオ深夜便』のアンカーを勤め、ご自身での朗読教室も主催されています。
さらに実は、杉浦アナの新人時代、研修担当だったそう!
常盤「杉浦アナは、どんな……?」
高橋「彼女は……元気でしたよ」
杉浦「(笑)」
高橋「研修の時は真面目で静かなんですが、終わって同期と飲みに行ったりすると、本当に、元気でですね……」
常盤「(笑)」
高橋「きっと、この人は若いあいだ悩んだりするだろうけど、きっとやっていけるだろうなと思いましたね」
そんな(?)高橋さんに、まず「朗読」と「音読」の違いについて伺いました。
声で伝えるという点は同じですが、「音読」は自分が楽しむこと、「朗読」は、相手がいること。聞く相手の存在をはっきり意識するのが「朗読」なんだそう。
文章を、自分を通して、外に出していく営み。とのことです。
高橋さんが教室を開いて感じるのは、とにかく参加者の皆さんが「変わっていく」こと。変わっていく自分を楽しむ、その様子が後押しになって、高橋さんも朗読をライフワークにしていくことになったのだとか。
「間」を意識する……ひとりツッコミ
こちらでも、「間」を意識することが重要、という話に。
高橋さんは、
「ふう~ん」「それからどうした?」「おっ、そこかよ!」
等々、「ひとりツッコミ」を入れる……そこで沈黙が挟まる……ことで、丁度いい「間」ができるのだそうです。
「話し始め」は力まない
朗読の話しはじめ、出だしは力まないこと。
そして最後は、息を吐ききって消える……。この繰り返しで、聞き手の頭に届くようになるそうです。
「全てにおいて大事なのは『息で伝える』ことです」
朗読のセラピー効果?
常盤さんから、海外では朗読がセラピーとして行われている、というお話も。みんなで丸く座って、回し読みをするのだそうです。
普段の生活では、感情を込めたり、吐き出す、ということがなかなかありませんから、それを文章に乗せていくことで「癒し効果」があるのかもしれません。
また、声を出すと、空気の振動になります。それが耳だけではなく体全体にも届きます。同じ空間・空気を共有している……という連帯感も癒しに繋がるのでは、と高橋さん。
PART3【人生後半 朗読にチャレンジ】
ここからは、埼玉県に住む かおりさんへの取材をさせていただきました。
息子さんが社会人となり、これからの人生を考えたとき、朗読へのチャレンジをはじめたそうです。
「子供が小さい頃に読み聞かせをしていて、私自身も楽しかったっていう記憶があったんです」
きっかけは、社会貢献の「読み聞かせボランティア」という存在を知ったこと。色んな施設を巡って、朗読をおこなっています。

「色んな人に届けるには、ちゃんと勉強した方がいいだろうと思って」
半年前から、東京までじつに2時間の道のりを往復し、松浦先生の教室に通っています。
そして自主練習のほうは「恥ずかしいから」という理由で、ご家族のいない昼間に……。
いま取り組んでいるのは葉室麟「忘れ花」(『嵯峨野花譜』に収録)。5人の生徒さんが、それぞれ役割を与えられ、読み繋いでいきます。自分のパート以外も、しっかりと声に出して読み込みます。
夫の茂行さんは……。
「都心に出るのが苦手なタイプなのに。一人で楽しそうに通っているので、積極的になっているのかなと」
それに対して
「1時間くらいかけて近づく間に、だんだんと『朗読モード』になっていくという感じ。思いがけない自分に出会う」
と、かおりさんは語ります。
さて、今日は教室の日。かおりさんのパートに、先生から
「このセリフは”意を決めている”感じの言葉なので、間を空けたり頭をゆっくり言わずに、一文を一息で言いましょうか」
とアドバイスが入りました。
言葉をこぼさないための説明的な読み方を、避ける。さらに、セリフを受ける人物がドキッとする強さを込められるとよい、とのこと。なるほど、場面の深みが増していきます。
「本当に来るのが楽しくて。ナチュラルな自分を出しても良いのだな、って。受け入れてくれる仲間、先生がいて。本当に感謝しています」
みなさん、本当に楽しそう。
今月の発表会では、はじめて人前で朗読を披露します。ふだん練習を見せていない茂行さんと息子さんも、招待しているそうです!
PART4 【朗読レッスン】
ここからは高橋さんと、朗読のレッスンへ。
常盤さんは、朗読もお芝居と同じく、言葉をかけるところ、言葉の「立て方」でいつも悩むのだとか。
高橋さんは、やはり文章の「芯」……周りを削っていくと残る言葉、名詞や動詞はなんだろう? と考えるといいます。これが伝わればいいんだ、という言葉を見つける作業が必要だそうです。
演技と朗読は違うものですか? との杉浦アナの質問に常盤さんは。
「まったく、違うものだと、わたしは思いますね……。
演技は、顔も体も見えているのでそこに助けてもらえるところがある。
朗読は、なにも武器を持っていない状態で、そこの状況を理解してもらわないといけない」
まさに声ひとつなのが、朗読なんですね……!
ここから、高橋さんに3つのポイントを伺っていきました。
朗読、3つの基本
1)どういう姿勢で読むか?
テーブルに体重をかけない。
足は組まず、軽く開いて、腰で支える。
腰から上は自由にできるようにする。
そこで背を伸ばすと、横隔膜が下がって、息が入る。
それで充分。
無理に腹式呼吸しなくても、普段の呼吸の息で読めば大丈夫。
2)口の形
口は、だらしのない「あ」。
すべての母音を、力を入れないまま喋って良い。
「い」や「お」でも、口をすぼめない。
口の筋肉を動かすと、喉が絞まってしまうから。
大事な共鳴場所なので口はゆったりとしておく。
3)4,5メートル先に届くように声を出す
のどぼとけを触りながら「あ~」と楽に声を出して、震えを感じてみる。
「もしもし」と言ってみると……クッ、と上がる。これが声帯の緊張の証。
人に声を届けようとしている証、なんです。
そうして4,5メートル先まで届ける意識で読みましょう。
読み方の工夫
スピードを変えてみる。
今日のテキストは、新美南吉「手ぶくろを買いに」。子ぎつねがお母さんを恋しくなって、走っていくシーンがあります。ここを「居ても立ってもいられなくなった」気持ちで、スピードアップして読んでみます。
そのあと、お母さんぎつねが待っているシーンでは、お母さんがゆったりと待っているスピードに落としてみる。
この子ぎつねとお母さんの違いで、表現できるものがあるのでは、と高橋さんのご指導が。
いざ、朗読会!
さいごに、お三人による「てぶくろを買いに」の朗読が披露されました。
高橋さん、杉浦アナ、そして常盤さんへとバトンを繋いでいき、見事な終幕です……!
「人に届けたい、と思ったとき、届いたその喜びが自分に返ってくる」(高橋さん)
「自分という楽器で色んな表現にチャレンジして、新しい自分と出会う」(杉浦アナ)……
朗読には、そんな楽しみがあるのかもしれません。
これから朗読を始める人にアドバイスを、と言われた高橋さんは……。
「朗読をする人ってちょっと苦手だったんです。出しゃばりでおしゃべりで……まあそういう人多いですけどね。(一同笑)
一般の方の熱意を見ると、やっぱり伝えたいものがあるんですよね。
わたしも50歳を過ぎてから始めました。いつでも、遅すぎるということはまったくありません。本があればできます」
常盤さんも、
「楽しかったです! でもやっぱり奥が深くて難しい。読むこと、準備をする時間を楽しみたいなと思いました」
と、笑顔でしめくくり。
みなさんも「おとな時間」に、朗読をはじめてみてはいかがでしょうか?
ここまでご覧いただき、ありがとうございました!
あ、ちなみに「てぶくろを買いに」は、劇団ののでも朗読しておりますよ!