夏目漱石「夢十夜 第十夜」|作品に登場する語彙の解説

コラム
夢十夜「第十夜」
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夏目漱石の短編『夢十夜 第十夜』に登場する、ちょっと難しい言葉の意味を調べてみました。

劇団ののは、言語学や歴史学のプロフェッショナルではありません。
様々な文献や辞書をあたったり、プロフェッショナルの方に手助けをいただいたりはしていますが、あくまでも自力で調べ物をした結果を掲載しています。誤った情報が含まれている場合がありますので、ご注意ください。
また、調べ物をした結果、真実が突き止められないこともあります。
ご了承ください。

パナマの帽子【ぱなまのぼうし】

「パナマ帽」と呼ばれる夏用の帽子です。麦わら帽子のように植物を編んでつくられています。
周囲につばがついていて、真ん中がへこんだ形をしています。
戦前、紳士の夏の正装として愛用されていました。

夏目漱石『夢十夜』に登場するパナマ帽

水菓子【みずがし】

果物のことです。果物は昔、菓子の一種とされていたために、「水菓子」と呼ばれました。
現在ではさまざまな果物を安く買うことができますが、明治時代、果物の多くは高価で貴重なものでした。

水蜜桃【すいみつとう】

桃(もも)の品種のひとつです。明治時代に中国から輸入され、栽培されるようになりました。
桃といえば、実が大きく、ジューシーで、甘い味をイメージしますが、それこそ水蜜桃の特徴。
現在日本で食べられる桃は、ほとんどが水蜜桃を品種改良したものです。それまで日本で栽培されていた桃は、甘さがほとんどなかったため、甘い水蜜桃は、大人気だったようです。

閑人【ひまじん】

暇な人。これといった用事がなく、昼間からぶらぶらしている人です。
庄太郎は働かなくても食べていける、名家の人なのかもしれません。

絶壁・切岸【きりぎし】

切り立った崖のことです。「絶壁」は通常、「ぜっぺき」と読みます。「断崖絶壁」といったりしますね。
「切岸」も崖のことですが、鎌倉時代から戦国時代にかけて、敵の侵入を防ぐために人工的に作った崖のことを特に指す場合もあるようです。

豚【ぶた】

イノシシを家畜化した動物です。
日本でも、弥生時代から豚を飼育し、食べていたそうです。江戸時代には豚肉食が一旦下火になりましたが、明治時代に入り、再び一般化しました。
きれい好き、知性の高い生き物としても知られています。
聖書の「マタイによる福音書 第8章28-34節」には、キリストが、人間に取り憑いた悪霊を豚の大群に移すというエピソードがあります。豚は、湖に突入し、溺れて死んでしまいます。漱石はこのエピソードを意識していたのでしょうか、定かではありません。

雲右衛門【くもえもん】

明治時代に実在した浪曲師・桃中軒 雲右衛門(とうちゅうけん くもえもん)のことです。
1万5千円(現代のお金で1億円相当)の出演料でレコード盤に浪曲を吹き込み、後にそのレコード盤をめぐって、ドイツ人と著作権を争う裁判を起こしたという記録が残っています。
相当な人気者、かつ先進的な人物であったことがうかがえます。

檳榔樹【びんろうじゅ】

インドネシア・マレーシアを原産とするヤシの仲間の植物です。
竹のように繊維が束になっていて、とても硬いのが特徴です。
表面はチョコレートのような色をしています。
種を噛むとリラックスできる作用があるため、タバコとして愛用する地域があります。

黒雲に足が生える【くろくもにあしがはえる】

「黒雲」は、雨を降らす黒い雲です。「黒雲に足が生える」というのはこの作品独特の表現ですが、黒雲は一般的に塊になって押し寄せてくるものですので、一斉に押し寄せる豚の大群を黒雲にたとえ、それに足が生えたよう、と表現したのでしょう。
また、文学において、黒雲は不吉なことの前触れとしてよく使われます。

無尽蔵【むじんぞう】

いくらでもあること、いくら取ってもなくならないことです。

必死の勇【ひっしのゆう】

「必死」は死にものぐるいなこと、失敗すると死んでしまうくらいの覚悟をもつことです。
「勇」は勇気、いさましいこと。
つまり、「必死の勇」とは、死にものぐるいでいさましく振る舞うことです。

参考リンク

作品の視聴、他の記事へのリンクはこちらから↓

作品についての考察はこちら↓

作品本編はYouTubeでも配信中↓

夏目漱石 夢十夜 第十夜 - 劇団のの 朗読・ラジオドラマ|Soseki Natsume "Ten Dreaming Nights – 10" – Japanese Reading
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