芥川龍之介「秋」|会話劇だけど行間が多い

稽古場日記
稽古場日記

今日の稽古は、俊吉役の戸塚駿介くん、ナレーターの吉田素子さん、信子の夫役の梅田拓くん、照子役のスズキヨシコさん。

  • 信子と夫の部屋は和室? 洋室?
  • 夫の演技は普段の梅ちゃんのようでいいのでは
  • ナレーションは噛みそうな文章ばかり
  • 朗読作品にしたけど、この物語は、実は会話劇じゃなくて端的なセリフばかり

などなど、おしゃべりしました。

今日の稽古もナンセンスに始まります

のあ:戸塚。

戸塚:ん?

のあ:今日さ、稽古場来る時さ、自転車でわたしが尾行してたの、気付いてた?

戸塚:は?

吉田:尾行? 同じ稽古場に行くメンバーにおいて尾行ってある? 一緒に来いよ。

のあ:いや、最初ね、黙って併走してたんだけどね、全然気付いてくれないんだもん。

戸塚:え? いた?

のあ:2-3mぐらいのところ。心の中で「やっほー、戸塚」って呼び掛けてたのに。

戸塚:いや、そりゃ聞こえないわ。気付くわけないでしょ。

のあ:気付いてほしかったんだよ。でもすごい一心不乱に前を向いて漕いでるからさ。だからスネて、途中から尾行に切り替えた。自転車を漕ぐ戸塚の後ろ姿を眺めながら来た。

戸塚:マジで知らない。怖いわ。

吉田:愛情が歪みすぎでしょ。

のあ:戸塚って可愛いし大好きなんだけどさ。

戸塚:おう。

のあ:家に帰るとすぐ忘れる。戸塚の存在を。

戸塚:後半部分、俺に伝えなくて良くない?

吉田:でもちょっと解る。私も忘れる。

戸塚:ねぇ。

信子と夫の部屋って和室? 洋室?

のあ:どうしてもどうしても洋室をイメージしてしまう。大正レトロの重厚な擬洋風の、暗い色使いの調度品にさ。ベルベット張りの大きな肘掛け椅子に夫が深々と腰掛けて新聞読んでるみたいな。でも実際、明治・大正期ってそんなに和風の家、流行らなかったというか、好まれなかったらしいんだよ、住居としては。

吉田:はっきり書いてないもんな。どっちとかって。

スズキ:でも、やっぱり決めよう。

吉田:演技に影響あるし。

スズキ:あ、待って。でも少なくとも、冬に2人が会話してる時、あれがあるのよ。あれが!

のあ:あ、長火鉢!

スズキ:それ!

吉田:あ、そうだ! 

スズキ:だから和室だ。夫が長火鉢の向こうに妻の顔を見出してるから。ということは、目線の高さにあるから、正座してるよね、畳の上で。

吉田:その通りだ。

のあ:なんでこんなに洋風だと思っちゃうんだろう?

スズキ:会話の内容かな。

のあ:なんかNHKとかでやってる、イギリスの貴族の映画みたいじゃない? この、信子が怒られて夫の背に向かって泣いてるシーンもさ、ベッドを想像しちゃんだよね。

吉田:確かにものすごくベッドを想像してたわ。布団じゃないね、イメージしてたのは。

のあ:金色の柵がついててね、壁が煉瓦色でね。

スズキ:いやいや、布団です。だからこの人たち凄い和風な生活送ってるんです。家の中では夫は和服なんじゃない?

のあ:『竹の木戸』の真蔵みたいな。サザエさんの波平みたいな。

スズキ:まぁ真蔵の一種だよね。大正期における、真蔵と同じ立場じゃない? エリートサラリーマンだから。

梅田:真蔵の一種……真蔵って分類学的に種なんだね(笑)

吉田:そういう生物なんだね。

スズキ:そうです。では、信子の大阪の家は、和室をイメージして演技だね。

吉田:よぉし。じゃあナレーターも、和室をイメージして読むよ♪ 和風に読むね、和風に!

のあ:うん。

吉田:チッ、あんま変わんねーなー、ナレーターは。和風ってどこに出すの?

のあ:渋さじゃん?

夫の演技は普段通りの梅ちゃんで

のあ:夫の話し方はもうちょっと若々しい感じでもいいかもね。

梅田:なんかね、もしかしたらね、確かに、この口調っていうの? 時代感とか、そういうのに引き摺られて、ちょっと威厳を出そうとしすぎてるかもしれないねぇ、僕自身が。

スズキ:結構、若いはずなんだよね、この夫。30行ってないぐらいかもよ。

梅田:いやぁ、そうよね、そうそう。

のあ:信子が小説書いてる時に、「いよいよ女流作家になるかね」って言うじゃない? これも、「なるかね」っていうのは、おじさん口調っていうよりは、ちょっとふざけてる感じかな、って思って。

スズキ:ほろ酔いだから、テンション上げてもいいのかもね。

のあ:うん、元気な感じね。

のあ:梅ちゃんの普段の感じ。

梅田:僕の普段……。

吉田:解る。こっちのことをね、全て受け入れてくれているあの感じだよね。

梅田:受け入れる……あの感じ……。

吉田:受け入れてくれてるよ。

梅田:そうなんだふーん。

吉田:あら?

梅田:まだねぇ、僕、自分の普段が解ってないかもしれない。

のあ:梅ちゃんは語尾を上げる。

スズキ:確かに。上げる。

梅田:えー! そうなのー?

のあ:梅ちゃんはオチを決める時だけグッと語尾を下げるね。

梅田:ひー!!

吉田:今のは言わないであげた方が良かったね。

のあ:え?

梅田:あんまり仕組みを明かすのは良くないよ。僕の仕組みをさ。

吉田:「仕組みを明かす」(笑) 恥ずかしいね。

梅田:恥ずかしすぎるね。

のあ:あ、解った。梅ちゃんの普段は、だから大泉洋さんだよ、大泉洋。

梅田:結局それか。理解した。「女流作家にでもなるかね?」

のあ:急に上手くなったな。

梅田:この「なるかね」がね。やっぱりおじさんのイメージだね。僕がおじさんを演じるのが好きすぎるんだよね。おじいさんとか。

スズキ:まぁ似合うからね。

のあ:内なるおじさんをさ、ちょっと封印してよ。

吉田:「内なるおじさん」(笑)

梅田:あのさ、おじさんの引き出しと大泉の引き出しがさ、常に半開きなのよ。ちょっと開いてるから、すぐシュッとやってパッと引き出せちゃうわけ。おじさんはすぐそこにるんだよ。呼んだらすぐ来るんだよヤツらは。

スズキ:ちょっと一旦閉めよう。

梅田:うん、閉めた。あいつはもういない。

ナレーションは噛みそうな文章ばかり

吉田:これいきなりド頭がさー、「残暑が初秋に振り替わる」って言えないんだけど。ねぇ、言えないんだけど。

のあ:もちこなら言えるよ。

吉田:何を根拠に言ってるの? あとさ、「一・二時間ずつ机に向かうことにした」もやばくない? 「ずつ机」ってなにさ。「つ」が3つも繋がってるよ。芥川って馬鹿なんじゃないの? ナレーションもうやらなくていい? 泣きそう。もうやりたくない。

スズキ:記号のダッシュっていうの? 「—」をどう読むかっていうのも難しくない?

吉田:そうそう、目で文追ってると記号があるって解るけど、耳で聞いてると意味分かんないよね、急に文章途切れてさ。

のあ:ある程度は編集で間を空けたりとかね。音の高さだけ調節してくれてれば後で編集できるんだけど。勿論、もちこが表現したい間でいいんだけど。

吉田:もちこが表現したいことなんて特に無いから全部編集して。

吉田:ねぇねぇ戸塚くん。

戸塚:お?

吉田:これはみんなには内緒なんだけどさ。

のあ:聞こえてるよ。

スズキ:聞こえてるね。

戸塚:この距離でこの声量だからね。

吉田:ナレーション経験者の戸塚くん。なんかさ、セリフがあると、ナレーション読みづらくない?

スズキ:すげえ、何言ってるんだ、あの人。

戸塚:セリフがあるからこそ、それ以外の部分をナレーションと呼ぶんだけどね。

吉田:そうだけどさ。1人で朗読するんだったら、自分で勝手にペース作れるじゃん。でもさ、他のキャストがどう読むか分かんないから、好き勝手には読めないじゃん。

戸塚:そういう企画だからね。劇団ののが。

吉田:だから焦って噛むんだよ。

スズキ:あいつ、梅ちゃんのせいにしてるぞ。

梅田:ディスられてるな。

吉田:ね? ナレーションって大変でしょ? 戸塚くん。噛むのは私のせいじゃないでしょ? 

戸塚:モノに寄ると思います。作品によりません? この作品は大変そうだなとは思うけど、例えば……

梅田:優しいなー、戸塚くん!(涙)

スズキ:良かったね、もちこ。隣の席が優しい戸塚くんで。

梅田:ホントだよ、怒らないでちゃんと話聞いてくれて。

のあ:戸塚は穏やかだな。ルンバのように穏やかな子だよ。

戸塚:ルンバじゃねーよ!(怒)

スズキ:怒ってる……!

戸塚:人をルンバ呼ばわりして!(怒)

スズキ:それはダメなんだね。沸点がよく分からないな。

のあ:わたしに厳しいだけなのでは。

吉田:ところでさ、戸塚くん、「襟飾りの絽刺し」も言いにくくない?

戸塚:ああ、それ俺も読みづらそうだな、って思ってました。「ロザシ」ね。

吉田:ここだけ戸塚くん読んでよ。

戸塚:おかしいでしょ、ひとことだけ俊吉の声になったら。俺もそんなに滑舌良くないしね。

吉田:嘘だ。

吉田:あのさ、私の舌はさ、分厚くて短いのよ。

戸塚:それは……え!? コメントしづらいな……。

吉田:じゃーもうちょっと言葉を選ぶけど、つまり、ラ行が苦手なんだ。

戸塚:俺も苦手ですよ。

吉田:ホント!? どうしたらいい? 早くコツを教えてよ。

戸塚:だから、苦手だから別に解決してないんですけど。直前までラ行の発声練習とか早口言葉とかをひたすら練習するっていうのはどうですか?

吉田:やっぱ地道な方法しか無いんだね。

戸塚:う、うん……。

吉田:ラ行の言葉がいっぱいあってイヤだよ。

戸塚:そうですよね、これだけ出て来ると読みづらいですよね。

吉田:あーあ。私も、早く次回作でトリッキーな女の役とかやりたいな。

戸塚:とりあえず今回はナレーション頑張ろうよ。

吉田:うん。

この作品は実は会話劇ではない

のあ:もちこの言うことも一理あるんだけどさ。

吉田:聞こえてた? 内緒話だったんだけど。

スズキ:だから全部丸聞こえだから。

のあ:前後のセリフが無い、っていうのがこの作品難しいよね。セリフだしのテンション決めかねるじゃん?

戸塚:そうなんですよね。別に、会話ではないっていうか。信子と俊吉のシーンとか、照子と3人のシーンも、セリフそれぞれ喋ってるんだけど、別に繋がってはないんですよね。だから、1人で空中に向かって喋ってるようなやりづらさはある。なんか、空気読めてない言い方してるんじゃないかって不安になる。

スズキ:あー、本当だ。間が省略されてるんだね。

のあ:まっつんの言葉を借りれば、全部ナレーション処理されてるってヤツね(笑)

吉田:だからナレーションの量多くない? 責任重大じゃん。不安だよぉ(泣)

梅田:そういえばさぁ、信子と夫もさぁ、微妙に会話になってないっていうか。共演っていうのと違うよね、これはまた。同じ場面の同じ空気を作ってるんだけどさ? でも、『竹の木戸』みたいな、相手のセリフを受けて、返事を返す、っていう、明確な会話ではないんだよね。

スズキ:普通の会話は多分あったんだろうけど、芥川によって抜き出されてるっていうか。

のあ:ハイライト掛かってるからね。このあいだあいだに、とりとめないやりとりが隠れてるはずだよね。

スズキ:このナレーションに隠れた部分は、キャストも醸さなきゃいけないわけだよね。

のあ:これがこの作品の特色って言えるのかな。語られざる部分があるから、憶測を呼ぶっていうか。

スズキ:キャラクター同士も、なんいうか……お互いバチバチをやっちゃうんだろなー。

梅田:矢印よ、矢印。ビュンビュン飛んでるのよ Wi-Fi のように。

参考リンク

作品の視聴、他の記事へのリンクはこちらから↓

作品に登場する古い言葉、難しい言葉の読み方や意味の解説はこちらから↓

作品本編はYouTubeでも配信中↓

芥川龍之介 秋 第1話 - 劇団のの 朗読・ラジオドラマ|Ryunosuke Akutagawa "Autumn" 1/4 – Japanese Reading
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