国木田独歩「竹の木戸」|あらすじ・説明 上2

コラム
竹の木戸
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まさに井戸端会議

さて、11月になりました。

エリートの大庭家の裏に、植木屋夫婦が引っ越して来てから2ヶ月経ちました。

その日は、女中のお徳、そして植木屋の妻のお源は、2人で井戸端で洗い物をしていました。

これは大庭家の所有している井戸ですが、植木屋夫婦は貧しくて自費で井戸を掘ることができないので、大庭家の主人の好意で、インフラを借りて、炊事や洗濯に使用しているのですね。

それまでは、お源は大庭家の門から行き来していましたが、それがまどろっこしいということで、裏庭に出入り口を作って出入りするようになったのでした。

この日は、まさに、木戸が完成した日。

お徳は、植木屋の磯吉が貧しいので大工さんを頼むことができず、自分で適当に木戸を作ったことをからかいます。「これが木戸だろうか、掛金は何処に在るの。こんな木戸なんか有るも無いも同じことだ」と、聞こえよがしに、わざわざ大きな声で言います。

大庭家では、裏庭に出入口ができたため、不審者が簡単に入って来るのではないかと、心配しているのです。最近も、近所の軍人さんの家の庭、洗濯中に金だらいを置きっぱなしにしていたら、それが盗まれるという事件があったようです。

お徳さんは、植木屋夫婦のせいで大庭家に泥棒が入るのではないかと嫌味を言っているのです。もしかすると、植木屋さんたちが泥棒だ、ぐらいの嫌味かもしれません。

お徳とお源は、お互い、竹の木戸の開け閉めをきちんとすること、外に大事な物を置きっぱなしにしないことなどを話しました。

そして話題は、炭の価格高騰の話に。

大庭家では大きな俵で炭を買って、軒下に置いています。お金持ちだから、まとめ買いやストックができるのですね。植木屋夫婦は、大庭家が買っているのと同じお店ですが、自分でザルを持って行って歩いて行き、バラの炭を量り売りしてもらっています。どちらにしても、値段が高くて大変です。

現代でも、1980〜90年代ぐらいまでは、ボールを持って豆腐屋さんにお豆腐を買いに行ったり、行商が売り歩いたり、そんな買い物の仕方は、メジャーでした。今では、「量り売り」というと、なんだか西洋の市場や、コンセプトのあるお菓子屋さんなど、おしゃれなイメージもありますね。

お徳はしょっちゅうお源に嫌味を言います。もしかしたら、お源をライバル視しているのかもしれませんね。最後は仲良く話したようですが。

お源とお徳はライバル

さて、夕暮れ時、真蔵が会社から帰って来ました。真蔵は、洋装のまま、下駄を履いて、裏庭に来ます。

昔の男性は、会社にはスーツを着て行き、家では和服で寛いでいました。アニメ「サザエさん」の波平さんやマスオさん、「ドラえもん」ののび太くんのパパが家で着物を着ているシーンが多いのは、その名残です。

きっと、日没前にお徳がせかしたので、着替えてひと息つく暇が無かったのでしょう。

お徳は「大変な木戸でございましょう?」と言いますが、真蔵は「植木屋さんにしちゃよくできてる!」と笑います。

お徳は、おそらく一緒に悪口を言ってほしかったのでしょうね、真蔵がスルーしたので、アテがはずれました。

ちなみに、この話は全部、お源が住んでいる裏の小屋には丸聞こえです! 当時の家は木造なので、音がよく通るのです。お源は、夕方ひとりで家にいて、これを聞いていたわけです。

お源は、大庭家に対して、親切な人たちだと感謝していますが、女中のお徳さんに対しては複雑な気持ちを抱いています。

「房州(千葉の辺り)出身の田舎者のくせに、大庭家で可愛がられているからっていい気になって」

「でも、一生懸命働いて、感心だ」

悪く言いたい気持ちもあるし、なんだかんだ褒められる点もある。年頃も、出身の身分も似たような相手なのに、身を置いている環境に差があるため、お互いにちょっとしたライバル心があるのでしょうね。

こんなことをぼんやりと考えていると、日が暮れてしまいました。お源は、ひとりで過ごしている時間が長いので、考え事をしがちです。

お源の家の炭は、もうそろそろ無くなりそうです。炭が無いと、火鉢も使えないし、お湯も沸かせない、お米も炊けません。

お米は、こんな釜で炊いていたのでしょうか。お米を炊くのに時間が掛かりそうです。

炭は、暖房であり、台所の火種です。現代で言えば、電気のような必需品。

寒いし、お腹も空くし、炭が無ければ、主婦としてはとても不安になりますよね。

ランプの影が伸びる下に座って溜息をつくお源は、髪の毛も乱れ、なんだかあわれな様子でした。

頼りない夫と貧しい生活

そこへ、仕事が終わった磯吉が帰って来ました。

磯吉は、ごはんを食べ、煙草を吸うばかりで、あまりお源の話を聞いていません。今日は、給料の前借りをして来る予定でしたが、それもうまく行かず。お源は、明日お米を買うのも大変なのに! とぼやきます。

磯吉は仕事を休んでばかりで、働き者ではないようです。なので、夫婦はいつも貧乏でした。植木屋職人たちの奥さんの集まりからも、「あんな男と一緒にいるなんて、お源はバカだ」と言われていました。

磯吉はとても無口な男で、何を考えているかよく解りません。それが不気味に見えるので、大庭家の女性陣は磯吉を怖がっていました。でも、お源はそれを、ちょっと自慢に思っていました。そして、「磯吉は腕のいい職人だし、まぁ、本気を出せば大丈夫」と思っていたのです。磯吉に惚れ込んでいたのですね。

11月の夜は冷えます。夫婦は、ぺちゃんこの布団をひと組しか持っていません。また、小屋のような家は隙間風もひどい。磯吉の背中は、布団から外にはみ出してしまっていました。

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