ひとりごと言う派? 言わない派?

 

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ここからは、稽古でやった場面と、それについてキャストが話した内容をお届けします。
作品本文は、青空文庫からコピーしたものに、読み易いよう改行を加えています。
キャストが話した内容は、録音した物を文字に起こし更に編集しています。
なお、議論は明確な答えを出すものではなく、情報は必ずしも正確ではありません。
演出を付けるために自由な発想に基づいて発言しております。

 

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国木田独歩より 竹の木戸

 

お源は真蔵に見られても巧く誤魔化し得たと思った。ちょうど真蔵が窓から見下した時は土竈炭を袂に入れ佐倉炭を前掛に包んで左の手で圧え、更に一個取ろうとするところであったが、元来性質の良い邪推などの無い旦那だから多分気が附かなかっただろうと信じた。けれど夕方になってどうしても水を汲みにゆく気になれない。
そこで磯吉が仕事から帰る前に布団を被って寝て了った。寝たって眠むられは仕ない。垢染た煎餅布団でも夜は磯吉と二人で寝るから互の体温で寒気も凌げるが一人では板のようにしゃちっ張って身に着かないで起きているよりも一倍寒く感ずる。ぶるぶる慄えそうになるので手足を縮められるだけ縮めて丸くなったところを見ると人が寝てるとは承知ん位だ。

色々考えると厭悪な心地がして来た。貧乏には慣れてるがお源も未だ泥棒には慣れない。先達からちょくちょく盗んだ炭の高こそ多くないが確的に人目を忍んで他の物を取ったのは今度が最初であるから一念其処へゆくと今までにない不安を覚えて来る。この不安の内には恐怖も羞恥も籠っていた。
眼前にまざまざと今日の事が浮んで来る、見下した旦那の顔が判然出て来る、そしてテレ隠しに炭を手玉に取った時のことを思うと顔から火が出るように感じた。

「真実にどうしたんだろう」
とお源は思わず叫んだ。そして徐々逆上気味になって来た。
「もしか知れたらどうする」。
「知れるものかあの旦那は性質が良いもの」。
「性質の良いは当にならない」。
「性質の善良のは魯鈍だ」。
と促急込んで独問答をしていたが
「魯鈍だ、魯鈍だ、大魯鈍だ」
と思わず又叫んで
「フン何が知れるもんか」
と添足した。

そして布団から首を出して見ると日が暮れて入口の障子戸に月が射している。けれども起きて洋燈を点けようとも仕ないで、直ぐ首を引込て又た丸くなって了った。

 

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—読んでみてどうでしょう?

◆のあ:かおりん(Caori)の読み方ね。これが正解だよね。
◆Caori:あ、良かった。
◆のあ:昨日このシーン、まっつんがお源のセリフ読んでたんだけど、「大のろまだぁ!」でめっちゃ叫んでたよ。
◆Caori:出たよ。
◆のあ:「このお源で行ってください」って言ってたよ。
◆スズキ:いや、叫んだら大庭家に聞こえるじゃん。「裏の奥さんちょっとおかしいな」ってバレるでしょ。

 

—家政婦は見た? お徳、覗き見。

◆のあ:ねぇ、気付いた? お徳さぁ、実は、障子の破れ目からお源の家の中、見てるんだよね。
◆和華:あれ!? ホントだ。
◆Caori:お源の盗難を責めてるけど、自分こそ家宅侵入? ストーキング?
◆スズキ:いや、もしかして、木戸越に見えたのかな。
◆のあ:それは障子の破れ目がデカすぎるでしょ。
◆Caori:もう絶対近くまで行ってるよ、お徳のことだから。
◆スズキ:大して変わらなくない? 盗みと覗き(笑)
◆のあ:お源は必要があって仕方無くやってるけどね。
◆スズキ:お徳はねぇ……家政婦は観たをやりたいだけだからねぇ。

 

—「身に着かないで」ってどういう意味?

◆のあ:このさ、「垢染た煎餅布団でも夜は磯吉と二人で寝るから互の体温で寒気も凌げるが一人では板のようにしゃちっ張って身に着かないで起きているよりも一倍寒く感ずる」っていう文章あるでしょ。このね「身に着かないで」って何?
◆スズキ:磯吉の身じゃない?
◆Caori:え、布団でしょ? 磯吉がいないから。布団の着てる方がよっぽど寒い、みたいな。
◆スズキ:体がしゃちばってるから布団が身に、貼り付かないってこと?
◆和華:わたし、どっちかっていうと、「水を汲みに行けない」という気持かと思ってました。
◆Caori:いやぁ布団が、じゃない?
◆のあ:サラッと読み流せるんだけど。でも、実は解らなくない? 辞書で調べても解らないし。
◆Caori:この文、主語は布団じゃん。「垢じみた煎餅布団でも」→「身に着かないで起きてるよりも」って繋がっとるからさ。これは布団のことを言ってるやん。
◆戸塚:うん、俺もそう思って読んでたな。布団のことかと。
◆スズキ:あ、なんか今納得した。着てるよりもむしろってこと?
◆Caori:うん、そうそう。そういうことあるよ。布団がすごい冷たくて、いつまでも暖まらなくて、着てるよりむしろ寒い、っていう。
◆和華:「身に付く」って、勉強とか習慣とか、学習したことが身に付かないっていう言葉じゃないですか? だから、そわそわ起きている状態よりも、ってことかな、って。
◆スズキ:それだと、寝てても起きてもそわそわしてるから、どの体勢でも一緒じゃない? 一緒なんだったら比較する必要無くない?
◆戸塚:これは布団のことでしょう。
◆のあ:うーん。誰か独歩を連れて来てほしいな。
◆スズキ:まぁ、確かに、辞書で出て来るのは集中とかそっちの精神状態なんだよなぁ。
◆のあ:文章全体の要旨としては、「本当なら暖かいはず」ってことを言ってるのは解るんだけど。最初はね、布団が体から浮いてる状態なのかと思ってたの。お源がしゃっちばってるのかな、って。
◆和華:あれ「しゃっちっばる」は?
◆スズキ:鯱張る。体が硬直してるってことかな。
◆のあ:この時代の人なら解る「身に付く」の意味があって、彼らには解るのかな、とか思ってた。

 

この件については、国立国語研究所に質問し、教えていただくことができました!

ずばり、身に着かないのは布団のことなのですが、わたしたちが思っていたのとはちょっと違いました。

「垢染た煎餅布団でも夜は磯吉と二人で寝るから互の体温で寒気も凌げるが一人では板のようにしゃちっ張って身に着かないで起きているよりも一倍寒く感ずる」

煎餅布団は、湿気を吸ったり乾いたりを繰り返し、しかも綿を入れ直していないので、パリッパリです。

それを踏まえ、以下のような意味でした。

「垢染た煎餅布団でも、夜は磯吉と2人で寝るから互の体温で寒気も凌げるが(元から布団着る意味は特に無し)、1人では、布団が板のようにしゃちっ張って、体に沿って貼り付かないで、もはや起きているよりもよっぽど寒く感じる」

しゃっちっ張ってるのは、お源の体ではなく、布団のことだったんですね!!!!!

 

—独り言って、言う派ですか? 言わない派ですか?

◆のあ:実は、お源の独り問答って、本当の独り言じゃなくて、思ってるだけの時もあるよね。前半でお源が大庭家について考えてるところとか、実はただ考えてるだけだったり。ところで。みんな、独り言って言う? っていう話を、さっき前半の稽古でしてたのね。
◆和華:お! 面白いですね。
◆のあ:そしたら、完全に2チームに分かれたの。中馬とよっこ(スズキ)は言う派。かおりん(Caori)とわたしと戸塚は言わない派。
◆スズキ:1人暮らしとかしてて、家に帰って来て、誰もいない部屋に向かって「ただいま」とか言わない?
◆のあ:わたし絶対言わないんだよね。だから、「お源ってめっちゃ独り言を言うな〜」って不思議がってたわけ。言わないよね。
◆戸塚:俺も絶対言わないと思います。誰もいない場合は。
◆のあ:わたしの友達は、テレビ見てて、誰もいなくても「えー、ウケる」とか「へ〜」とか感想を言うらしいのね。
◆和華:あぁ、あるかも。わたし言うかもしれません。
◆のあ:あ、言う派が増えた。
◆スズキ:なんだろう、思考を整理するために、外部出力しないと、って感じ。
◆和華:解ります解ります! 料理してる時とか。
◆スズキ:パソコンで何か打ってる時とか。
◆和華:しますね。「あぁ、早くしなきゃ」とか「ここをこうして〜こっちはこうして〜」とか。
◆のあ:え、それはオーディエンスいなくても?
◆Caori:オーディエンス(笑)
◆のあ:せめて犬とか。猫とか。ハムスターとか。まぁぬいぐるみとか。話し掛ける対象がいないと、空中に向かって声は出さないかな。
◆和華:あぁ、我々のは、会話ではないんですよ。あくまでも。
◆スズキ:そう。1人で完結するの。
◆Caori:あ、待って、わたし、机蹴って、「ごめん」とか言うかも。
◆のあ:それは机に?
◆戸塚:俺、それも絶対言わないっすね。他に机について座ってる人がいたら言うけど。
◆のあ:わたし、その状況で「イテッ」とか「あっ」て言うか言わないかも怪しいな。
◆Caori:えー、でも、家に向かって「ただいま」とか、ごはんに向かって「いただきます」とか言ってるじゃん。それは話し掛ける対象じゃなくて?
◆のあ:待って。そしたら、かおりん(Caori)はそっち側だよ(笑)
◆戸塚:そうだね。俺たち多分それすらも言わないから。
◆Caori:あ、じゃあ2人にとっては、声を出す時は、絶対にコミュニケーションツールなんだね、言葉は。
◆のあ:そうねぇ。
◆戸塚:うん。
◆スズキ:我々にとっては、独り言は思考整理のツールだから。
◆和華:はい。
◆スズキ:どっかに外部出力しないと、思考が進まないのよ。外付けハードディスクみたいな。2人は、音声にしなくても、無言のまま脳内で情報が整理できるんじゃない?
◆のあ:確かにあんまり書き出したりもしないかも。かおりん(Caori)はその間ぐらいかな。
◆Caori:挨拶みたいなのは言うね。
◆のあ:もしかしたら独り言派の方が多いのかもしれないね。なんかカルチャーショックだな。圧倒的に言わない人の方が多いと思ってた。
◆スズキ:これ調べたら面白そうだね。
◆Caori:そういえば! 職場の後輩で、ずっと「あ、しくった!」とか「わ!」とか言ってる子がいて。気を引きたいのかと思ってた。あれは独り言なんだ!
◆和華:そうかもです。
◆Caori:「あー、ホントどうしよう!」とか言ってるから、何か聞いてあげた方がいいのかと思って気を遣っていた。
◆和華:多分、放っておいていいんじゃないかな(笑)
◆スズキ:多分、思考整理中だから。気にしないであげて。
◆のあ:いや解らないよ? その後輩に限っては、お徳の「まぁ驚いた」かもしれないよ。
◆Caori:あ、どっちなんだろう。その線もありうるな、あの子は。だって相当デカい声だよ?
◆スズキ:精神の範囲が部屋の広さまで拡張されてるんだよ。これ、統計取りたいな。あなたは独り言を言う派? 言わない派? 思考整理型、精神拡張型、挨拶型!
◆戸塚:心理テストみたいだな(笑)

 

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