ナレーターも演技します

 

—さりげなく、最後を飾るのは…。

◆のあ:あ、ここは戸塚だけのシーンかな。
◆スズキ:いや! 実はここにね、「お源さん、お源さん」っていうセリフがあるんだよ。さりげなく。
◆のあ:あ、お清さんの金田一感が1番出る場面だ!

 

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ここからは、稽古でやった場面と、それについてキャストが話した内容をお届けします。
作品本文は、青空文庫からコピーしたものに、読み易いよう改行を加えています。
キャストが話した内容は、録音した物を文字に起こし更に編集しています。
なお、議論は明確な答えを出すものではなく、情報は必ずしも正確ではありません。
演出を付けるために自由な発想に基づいて発言しております。

 

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国木田独歩より 竹の木戸

 

お徳は老母からも細君からも、みっしり叱られた。お清は日の暮になってもお源の姿が見えないので心配して御気慊取りと風邪見舞とを兼ねてお源を訪ねた。内が余り寂然しておるので
「お源さん、お源さん」
と呼んでみた。返事がないので可恐々々ながら障子戸を開けるとお源は炭俵を脚継にしたらしく土間の真中の梁へ細帯をかけて死でいた。

二日経って竹の木戸が破壊された。そして生垣が以前の様に復帰った。

それから二月経過と磯吉はお源と同年輩の女を女房に持って、渋谷村に住んでいたが、矢張豚小屋同然の住宅であった。

 

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—お清が告げ口をしたのでは……!?

◆のあ:老母と細君が怒るとこ、見てみたいな…。細君って怒るんだね(笑) 「みっちり」って「みっしり」から来てるのかな?
◆Caori:重みと密度を感じるわ。
◆スズキ:何を叱られたんだろうね。何言われるんだろう。
◆のあ:あ……ねぇ、気付いちゃった。これ、お清が告げ口したんだよ。老母と細君に。
◆スズキ:おや?
◆のあ:だってさ、老母も細君も、2人ともこの場にいなかったはずだもん。お徳がやらかした時。お徳自分で言わないでしょう「わたしやらかしました」って。
◆スズキ:いやいや、お源が「まぁ佐倉だよ!」って叫んだのが、大庭家まで聞こえてたかもしれないよ?
◆のあ:さすがに叫び声聞こえたら「お隣の奥さんヤバいなぁ〜」ってなるでしょ(笑)
◆Caori:えー、だって、話し声が聞こえるぐらいだから、死ぬ音すら聞こえそうじゃない?
◆スズキ:どんな音かな。
◆Caori:「ドン」とか。
◆スズキ:今のは完全に金田一だったな(笑) いやぁ、もっと静かにぶらさがるんじゃないかなぁ。

 

—お清は、知らないで声を掛けている。

◆スズキ:ねぇ、お清って、心配そうに言うのと、今ぐらい元気に言うのとどっちがいい?
◆Caori:今ぐらいの方がいいと思うんだけど。元気な方がいいよ。
◆スズキ:知らないで「大丈夫?」って訊いて、後でショック受けるってことね。
◆Caori:そうそう。

 

—ナレーターにも演技が求められます!

◆のあ:ラスト、とづ(戸塚)の声で読むとより悲しい話に聞こえるな。
◆Caori:より豚小屋が「豚小屋」に聞こえるわ。
◆のあ:とづ(戸塚)は何か読んでて疑問点とか不安ある? はい、無いね。
◆戸塚:あぁもうじゃあ無いです。
◆スズキ:締切が早いよ(笑)
◆戸塚:これ、俺はスタンスとして、どういう雰囲気で終わらせたらいいかな?
◆のあ:あるじゃん、疑問。
◆戸塚:あるんだよ。
◆Caori:やっぱりちょっと、しっとりっていうか。ある程度、憂いている方がいいんじゃない? 淡々とやられすぎたら、「あ、戸塚って頭おかしいのかな」ってなるじゃん。
◆戸塚:ナレーターに人格認めないでよ(笑)
◆スズキ:後味の悪さがあった方がいいよね。
◆のあ:明るく終わられたらねぇ。「豚小屋だった♪」みたいな。
◆戸塚:それはサイコパスだわ。

◆戸塚:あのさ、「中があんまりひっそりしてるので」はどの辺りから死んでる予感があればいいのかな。
◆Caori:今は結構、もうおどろおどろしくやってるよね。
◆スズキ:金田一の予感だね。
◆戸塚:うん。今は結構、最初から死を予感する空気出して読んでる。
◆のあ:お清は声掛けてる時点では、風邪引いてるだけだと思ってるからねぇ。
◆スズキ:障子の破れ目の間からさ、ぶら下がってるお源の足が見えたりしなかったのかな。
◆Caori:お徳じゃないんだからさ! 覗かないでしょ、人んちの中(笑)
◆スズキ:いやまぁ、お清は知らないよ、この時点ではね。
◆和華:これ、ナレーションで後処理ですもんね。
◆のあ:そうなんだよね。じゃあどこから助走しようかって話だよね。
◆スズキ:いきなりだよね、死ぬの。
◆Caori:直前が「まぁ佐倉だよ!」の絶望で、あとは全くお源出て来なくて、それで次もう死んでるからね。
◆のあ:まぁ不穏なこと続きではあるよね。
◆戸塚:そう。
◆Caori:でも自殺は斜め上だからね。え〜、そこまでかぁ! っていう。
◆スズキ:そうそう、せめて、大喧嘩とか。夜逃げするとか。その程度ぐらいしか思い浮かばないからなぁ。
◆のあ:やっぱナレーターが雰囲気変えられるのは、死んだことを読むその瞬間から、じゃないかな。

 

—ラストの衝撃はお源の死だけに留まりません。

◆Caori:でもさぁ、磯吉の再婚が1番マジかよだし。
◆スズキ:ミラクルだよね。
◆Caori:磯吉……。
◆和華:お源死んだところで終わらないですからね、この話。
◆のあ:梅ちゃん(梅田)もこの「豚小屋」で話が終わるってとこに強く反応してたけど。栗田ばねが気付いたことがあって。老母は「物置小屋みたいなとこ」とか、ナレーターもお源と住んでる家については「古倉のすみこみたいなとこ」って言ってるのに。ここだけ、この磯吉が住む小屋だけ、語りが「豚小屋」って言ってるって。
◆スズキ:ほんとだ。
◆Caori:このワード、戸塚チョイスかぁ。「豚小屋かよ。かっこわら」って声が聞こえて来そうだわ。
◆のあ:これが戸塚から磯吉へのせめてもの成敗か。
◆戸塚:独歩じゃなくて俺?
◆スズキ:戸塚君は神の視点なんじゃない?
◆のあ:そもそもナレーターは「視点」しか持ってないものだけどね。
◆戸塚:視点しかないのに制裁は加えてるのかよ。

 

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