容赦ない「ハイ!」

さて、午前中、芥川龍之介の短編作品の収録が済んだ後、
みんなでワイワイ、『秋』の稽古をしました。
国木田独歩『竹の木戸』に続く、ドラマ形式の作品です。
雪の中、集まってくれました。

 

いい季節ですね、暖かい日もあれば、寒い日もある。
椿の花が素敵です。
竹久夢二の絵のようですね。
大正ロマンの『秋』の作品にピッタリ。

 

そしてこちらも素敵。
おひなさまがまだ飾られていました。
立派な段のおひなさま。
これは、もはやアンティークの領域。

演出が、移動する度に、何度も供え物のお椀や菱餅をひっくり返すので、
何度も直すのが大変です。
直しているところの写真を撮っていたら、
吉田さんに「反省と学習をしろ」と怒られました。
しています。

 

テキストを、役ごとにではなく、
輪になって座って、時計回りに順番に読みました。

うめちゃん(梅田拓)が「ハイ!」と言ったところまで、読みます。
彼の裁量次第で、長く読まされたり、短く終わったりします。
「え、そこで?」と思うところで「ハイ!」と言われることもあります。
ボーッとしていて、「え、どこ?」と言っていると、「ハイ!」が飛んで来ます。
噛むと、もちろん、容赦なく「ハイ!」と締め切られます。
演出は、3文字ぐらい読んで噛んだので、次に回されました。

 

持参のICレコーダーで自分の声を録音する戸塚くん。
復習するためだそうです。
真面目です。

 

Caoriさん、『竹の木戸』で明治時代の女性、お源を演じ、
今回は大正時代の女性、信子を演じます。
貧しい生活をし、育ちがそれほど良くなく、言葉使いも悪いお源に比べ、
同じ東京で暮らしていても、女学校に通い、良い生活をする信子。

でも、Caoriさんが演じると、何故か共通点が見えて来ます。
漂う色気や儚さなど。
って言いながら、お菓子食べてる写真ですみません。
大正ロマンなCaoriさんをお楽しみに。

 

と言いながら、今回、キャストさんに送ったメールで、
完全にキャストを逆にお知らせしていたため、
稽古場で混乱が起きました。

夫役: ○梅田拓 ×戸塚駿介
俊吉役: ○戸塚駿介 ×梅田拓
信子役: ○Caori ×スズキヨシコ
照子役: ○スズキヨシコ ×Caori

みんな、台本への書き込みを直していました。
凄いですね、人間って、こうも間違えるもんなんですね。
最低な演出ですね。

 

今回はナレーターで長い文章を読む、吉田さん。
初日から、嫌がっています。

残念ながら、ナレーターは間違えではなかったです。
ナレーターはナレーターです。

 

前回ナレーターだった戸塚くんは、今回キャストです。
女性2人に取り合われる、魅惑の男の役です。
イケメンボイスをお楽しみに!

 

今回、長い長いセリフがあり、緊張気味のよっこ(スズキヨシコ)です。

信子の妹、照子の役です。

 

みんなで、作品や、わからない単語について話しました。
Caoriさんが疑問を持ったのは、
「キリスト教の匂いのする女子大学趣味の人生観」という言葉。
特に、大正時代には、学生や作家を初めとし、色々な思想が流行りましたから、
トルストイズム、社会主義、キリスト教などの考え方が出て来ます。
作品に登場する人物は、文学を学んだり仕事にしたりしているので、
活発に思想を議論し合っています。
それを理解するのが、ちょっと大変です。
これもやがてブログや解説で説明していこうと思います!

 

梅ちゃんが気になったのは、
信子がぼんやり考えごとをしている時、
昼に食べた魚の生臭さが口から消えない、という表現です。

「僕わかる、これ。
 こういうことあるもの。
 ここの一部分、好きだなぁ」
と、お気に入りの様子。

 

今後、4人の登場人物の人間関係を、どう読んでいくのか、
とても楽しみです。
あ、ナレーターの活躍も楽しみですね。

 

キャスト日記:Caori『人の心は変わらない』

 

お源の役を演じた、女優Caoriさん。
今まで、幾度となく、シェイクスピア劇などの古典作品に向き合ってきました。
その彼女だからこそ、
現代に生きるわたしたちと、作品の世界を、繋げてくれるように思います。

 

☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆ 。*・☆

 

先日、ちょっとお偉い方から、「現代で演劇やるなら、やっぱり今の人の心を反映した劇をやってほしいよね。今だったらLINEとかTwitterとか? 昔の人にはないツールを使うってことは、やっぱり心理描写も変わるでしょ」と言われ、私は、「一理ある」と思いながらも、すごく反発心が生まれてしまったのです。

なぜなら、ツールが変わったとしても、人の心はそんなに変わらないんじゃないかと思ったからです。

 

 

例えば、平安時代の女性が月を見ながら、いつ来るかわからない男性の訪問を待っている時と、送ったラインがいつまでも既読にならず、「一体いつになったら返事が返って来るんだろう」と悶々としている現代と……一体、何が違うんだろうと思ってしまったのです。

だから、「使う物や環境が異なっても、基本的な人の心理は変わらないんじゃないかと思う」ということを、生意気にも伝えてしまいました。

 

これは、現代ではない劇、古典や昭和・明治時代の作家が書いたお話を演劇にする時は、いつも考えるテーマです。

 

 

今回で言うと、「竹の木戸」は私たちが今生きている時代とは随分違っていて、私が演じるお源さんの家は、貧乏だから、たいそう寒くて、せんべい布団1枚を夫婦2人でシェアするような環境で眠っています。

私が住んでいる家はマンションだから、地面から底冷えすることもなければ、ベッドであったかい布団をかぶっていて、1人で眠っているからといって寝冷えもしません。

でも、寒くて寒くてとても惨めな気持ちや、明日のことが心配になる気持ちが、全くわからないわけではなく。カーテンが薄いから、窓の隙間から風が入ってくると、しんと染みるほど寒くて、しょうがないから、ダンボールとガムテープでなんとなく隙間をふさいでみると、ちょっと、しょんぼりする気持ちに。

寒さが続くと、どんどん落ち込んできて、「そういえば明日ご飯を作るための肉がないんじゃないか」とか、
「いや、でも、お肉って最近高いし、魚にしようかな」とか、「うーん、でも魚も値上がりしているし、いっそ大豆でハンバーグをつくらなくてはいけないんじゃないかな」とか。

そのうち、「来月の携帯代がものすごく高いんじゃないかと」心配になってきて、「ああ、そういえば、光熱費も高めかもしれない」と思うと、いてもたってもいられなくなったり。別に、今の自分がものすごく貧乏というわけではなく、普通なのだけれど、なんだかいらないことがどんどん心配になって、不安な気持ちになってきたりすることもあるのです。

 

 

隣の芝生は青いと分かってはいても、他の人たちと自分を比べて落ち込む日があったり、「あの人は自分と同じような年で同じような境遇なのに、頑張っているんだなあ」と感心してみたり。誰かの正しくない行いを見付けてしまった時、なんとなく表沙汰にするのが面倒で、見て見ぬふりをしてしまったり。

これはちょっとした一例ですが、「竹の木戸」の登場人物たちの感情のひとはしを、現代の自分も似たように感じることがあります。

 

 

生きる時代によって、人の感じる感情が全く同じとも思わないのですが(ちなみに、これは「君の名は」がヒットした理由をスマートフォンの流行になぞって書かれたネット上の文章を見て、はたと膝を打ったことに基づきます)少なくとも同じ瞬間はあるわけで、それはシェイクスピアでも、もっと昔のギリシャ悲劇でも言えると思います。

だから、あえて自分と登場人物を遠ざけないで、自分に近付けて考えてみたり、はたまた、わざと遠ざけてみたり。色々なアプローチで脚本に向き合えるのが、演劇の面白さだとも思います。

 

 

今回も、今とはちょっと違う時代と、違う環境のお話で、ともすれば「近寄りがたい」「なんだか、おかたそう、わかりづらそう」と言われることもありますが、全然そんなことはなくて、現代に生きる自分たちでも理解できる気持ちが散らばっています。

 

劇団のの「竹の木戸」お楽しみに★

 

浮かれすぎクリスマス

 

大勢での収録を、クリスマス直前に行いました!

 

どうです、この大庭家の浮かれっぷり。

もしこの時代にクリスマスを祝っていたら、
お徳の仕切りは凄かったでしょうね。
新橋に買い出し、礼ちゃんのプレゼントの調達。
クリスマスツリーの選出、飾り付け、設置場所。
七面鳥の焼き具合、靴下作り。

そして、磯吉は、
どっかの庭からモミの木を切り倒してきて、七面鳥を誘拐して、
金次の家でクリスマスケーキを貰ってくることでしょう。

 

お菓子も豪華。

スズキ家の手作りクッキー。

Caoriちゃんが買って来たクリスマスケーキ。

中馬くんが里帰りの折に買って来てくれた、
肥後、五十四万石饅頭。

あれ?
「風が語りかけます」のCMで有名な埼玉の十万石饅頭じゃないの?
加賀百万石は大河ドラマの「利家と松」?

などと言っておりましたが、五十四万です。
十万より多い、百万より少ない。
五十四万石饅頭は、大変おいしい、
おいしすぎて五十四万個食べられるおいしさでした。

https://www.kobai.jp/goju/

 

お徳とお源の井戸端でのシーンを録っているところです。

2人、本当は仲良しです。

お源、お徳、マイクチェックです。
交互に「あ」と言って音を入れています。

お清、録音を確認。
職人と化しています。

お源は貧乏なはずなのですが。
なんでしょう、この金持ちそうな顔は。

この帽子がここまで似合う人はあまりいませんね。
本当は磯吉じゃなくてサンタクロースの妻なんだと思います。

紅茶を片手にご機嫌で収録。

この後、彼女は、浮かれすぎて、盛大に紅茶をこぼしました。
機材は無事でした。

 

お源とお徳が、演技に納得が行かず、
物凄く、長い収録となりました。
この男が暇になりました。

そして、この男も。
田舎の駅の待合室か、山小屋のようですね。

そして相変わらず、部屋全体を温めてくれない、アラジンランプ。

おもむろに昼食を食べる中馬くん。
何故か、かっこつけて来ました。

 

と、ここで、暇そうだったので、
中馬くんに、お昼ごはんのピザを買いに行ってもらいました。

 

1度、録音真っ最中に、ガラッと開けて、中馬くんが戻って来ました。
みんなで「おい!」となりました。
まるで演劇のワンシーンのようでした。

 

そして、また、録音真っ最中に、ガラッと開けて、中馬くんが戻って来ました。
また、みんなで「おい!」となりました。
まるで演劇のオチのシーンのようでした。

 

増屋の御用聞きは、ピザの配達人になりました。

ちなみに、彼、この帽子を被って自転車に乗って店まで行ったこと、
帰って来てから気付いたようです。
お店の人も、物凄い浮かれたクリスマスパーティーが開催されていると思ったことでしょう。

大変おいしくいただきました!

 

お昼を過ぎても、まだお源とお徳のシーンが続いております!
待機中のベンチは、寒い。
防寒必須です。

 

ミッションをコンプリートし、
またもや暇になってしまった中馬くん。
おもむろにチキンを食べております。

骨しかないのに、何故か、かっこつけて来ました。

 

さて、お源とお徳がようやっと納得し、他のシーンをいっきに録りました。

時間が無くなってしまったので、
家族会議や、朝の井戸端のシーン、
実は全部別録りして、編集で繋いでいます。

 

さて、最後に、効果音を録りました。
磯吉が煙管をふかすシーンと、ごはんを食べるところです。
煙草は梅田くん、ごはんは中馬くんがやっています。
実は本人じゃないんですね。

 

中馬くん、空のお茶碗で、必死に、
ドラえもんが歩く時の音みたいなのを出してくれました。
何か違う。

そこで、本当に何か食べた方がいい、ということになり、
ここで登場するのが、あの、肥後の五十四万石饅頭です。

だがしかし、中馬くん、
またドラえもんみたいな音を出し、
ディズニーに出てくるハイエナの舌なめずりみたいなヨダレの音を出し、
最後に急にお饅頭を取り出して、
カサカサ言わせて紙を剥いて、
マイクに向かって顔を突き出して、凄いスピードでもぐもぐもぐもぐっと噛み、
わざとらしく、「あ〜っ」と息を漏らしていました。

みんな、声が入ってはいけないので、必死に笑いを堪えています。

音を確認する真蔵。
1人で聞いて、笑いすぎて、撃沈していました。
小さなカサカサ言う紙の音と、無音が入っていたようです。

 

自分でも確認。

そんなに真剣に聞く音ではない。

 

結局、茶碗にお饅頭を入れ、お茶を掛け、
お茶漬けのように掻き込んでみました。
そちらの音が、本編では使われております。

 

ちなみに、この後、後片付けをしていたら、
サンタの帽子が1つ足りず……
中馬くんは、よほど寒かったのか、被ったまま家に帰ってしまったようです。