芥川龍之介「秋」|「玉子を人に取られた鶏」は照子!? 信子!?

稽古場日記
稽古場日記

引き続き、稽古です。

  • 信子・俊吉・照子の夕食のシーンは結構複雑な矢印が飛び交っている!
  • 信子が文学を再会しようと言ったのに対して誰も返事してくれなかったね
  • 照子って、しばらく会ってないうちに俊吉の影響で成長してない?
  • 信子って本を読む人なのかな?
  • 「グールモンの警句」って何?
  • 大激論、「玉子を人に取られた鶏」って信子のこと? 照子のこと?
  • なんで俊吉の家の庭の草、生えっぱなしなんだろう?
  • 俊吉は、誰に向かって月が綺麗だと呼びかけたんだろう?
  • 照子と信子、どっちの方がかわいそうなんだろう?

などなどを、実体験や読んだ感想を交えながら、ざっくばらんに、おしゃべりしました。

劇団のの解釈を、お楽しみください!

演出の頭の中にある固定観念は役者が壊す!

のあ:さっきからねぇ、話してて思ったけど。多分わたしが時代背景が古いモノを見過ぎているんだね、映画にしてもドラマにしても。書生さんの格好してさ、酒瓶持って「ぼかぁね」とか言って文学語ったりとかするのも、すぐ頭に浮かぶわけ。

スズキ:何見てんだよ(笑)

のあ:あはは! 

のあ:こういうセリフならこういう役だろう、この役ならこの演技だろうっていうのが頭の中に手本としてありすぎるんだと思うなぁ。だから役者さんの気分とか感じ方で、それが崩されてく感じが面白いね。演出つけるのも難しいなぁ〜。

夕食の会話は難儀

のあ:この夕食のシーンの会話はなかなか難しいですよ。

Caori:深いやりとりだね……。

スズキ:セリフそのものはそれぞれ短いんだけどさ、言葉の裏でものすごい思いと視線が交差してそうだよね。

吉田:ピピピピピってね。

スズキ:ああ、それ梅さん(梅田拓)がよく言うやつね。梅さんはそれを矢印と表現してたね。

吉田:やだぁ〜、こういうのもぉぉぉお。

Caori:言いたいことをハッキリ言え、ってね?

吉田:そうそう。何がグールモンやねん。何がミューズやねん。って思わん? 「おしゃれなことを言い大会」やんこんなもん!!

スズキ:やっぱ流行ってたんじゃない? こういうのが。70年代ぐらいまでこんなイメージ。『コクリコ坂』とか『風立ちぬ』とかに出て来る人みたいな。

信子の投げたボールを誰も拾わなかったね

Caori:信子が「わたしももう1回文学やろうかな」って言ってさ、みんなに「いいね! やりなよやりなよ!」って言ってもらいたいのにさ、誰も拾わないじゃない? 信子の投げたボールを。これ悲しい。

のあ:拾う……のか〜。ある意味、俊吉のこの「ミューズたちは女だから」っていうのは、男しか芸術できない、女のおまえじゃ無理だっていう反論かな? 「小説を書こうかしら」っていうのは、これって独り言をボソッと言った感じかな。それとも明るく話しかけたのかな。

吉田:ね。しかも「熱のある目つきをした」って凄いな。何か強い気持ちを思い出したんだろうね。やっぱ本当に心の底から湧き出て思わず口をついて出た言葉なんじゃない?

Caori:それをバッサリ行かれるわけよ、俊吉にさ!

のあ:今さぁ、優しい男なら「いいじゃんやってみなよ」って言うんだろうかな、って思ったんだけど。

スズキ:あぁ、かつて新婚の頃の夫みたいにね。

Caori:そうじゃん、あいつ最初わりと信子の文学話、応援してくれてるサイドだったよね。

のあ:でもさ、 “本当に” 優しい男だったら「向いてないから辞めておきなよ」って言うのかもしれないな、って、ふと思って。

Caori:う。なんか、それも解る気がする。

スズキ:だからさ、決して安易に「やってみれば?」とは言わない俊吉を追っちゃうわけよねぇ……罪よねぇ。

のあ:まぁでもこれはマウンティングの類に思うけどな(笑)

結婚して、いつの間にか照子が成長している!

のあ:照子、いつの間にやら、成長してるというか、自我が芽生えてるよね。ここでさ、このミューズのいちゃもんに、信子が瞬時に同じような軽口で返せてたら、俊吉にとって信子は「ふっ、面白い女」になってたと思うんだけど。それを照子がやっちゃったからね。

スズキ:「あら、アポロは男じゃありませんか」ってね。

Caori:そう。しかもね、信子は全部、誰にどう聞こえてるかを意識しての発言だけど。この照子のは、するっと出て来る、自然に打ち返せてる言葉だから。その自然体がね、またイヤなの。信子には。

吉田:頭のいい人は大変だな〜。

のあ:照子がいつの間にこんなこと言い出すようになったのね。

スズキ:文壇の男たちと同じような冗談をサラッと返して対等に討論できるようになってるからね。俊吉にとって可愛いだけの妻じゃないってことだよね。

Caori:なんかここでね、感じちゃうのよねぇ照子が俊吉と過ごした時間をさ。

吉田:俊吉の影響だもんね、こんなん言い出すの。

Caori:そうそう、一緒にいるからこそじゃん。離れてる間に差を付けられてるっていうか。追いつかれてるのか追い越されてるのか分かんないけど。いつまでも自分が上だと思ってたのに! っていう。信子って本とかちゃんと読んでんのかな? 何、やっぱファッション読書?

スズキ:読んでるだろうけど!(笑)

Caori:絶対 Wikipedia で「はいはい、そういう内容ね」って概要だけ拾ってるタイプだな。信子はグールモンて何か解ってんのかな。

のあ:待て、グールモンって何?

スズキ:えっと……なんか皮肉ばっかり言ってる人。

のあ:誰!(笑)

スズキ:(検索)フランス人。男と女にまつわる格言が多いらしい。

のあ:いや知らないな(笑)

吉田:芥川はそいつにかぶれてたんだね。

大論争 卵を取られた鶏って信子? 照子? どっち!?

スズキ:さて。次は庭で散歩するシーンだね。照子が卵を取られるシーンだよ。

のあ:え? そんなシーンあったっけ。

スズキ:そうだよ。寝てる間にさ、鶏は人間から卵を取られるわけ。つまり、これって照子が寝てる間に、信子と俊吉が散歩するっていうさ、そういう比喩表現でしょ。

のあ:え?

吉田:え!

Caori:え!? 逆だと思ってた。

スズキ:え!?

吉田:え!

Caori:信子が、照子に俊吉を取られたんだと思ってた。

スズキ:えー! そっちー!?

吉田:えー!

Caori:そう、だから鶏を見ながら、自分のこと自虐して言ってると思ってた。

スズキ:えーーーーー!

吉田:えー。

のあ:ちと待って、吉田さんはさっきからどっちなの?(笑)

吉田:あ、だから照子が鶏で、信子がすげーイヤなヤツだと思ってた。「しめしめ、卵を取られた鶏めが、ひっひっひ」みたいな。

スズキ:そうそう、信子が加害者意識持ってると思ってた。

戸塚:信子が取られたっていう意味の方が強いけど、逆もまた然りみたいな感じだと思ってた。

スズキ:お、俊吉が中立の立場を取って来たぞ。

吉田:さすが俊吉だな。私もねぇ、もうここぞとばかりに、ここで「文学的比喩やってやった感」出してくんのかよ、信子、と思ってたわ。

スズキ:だって鶏って、照子の象徴じゃん。

吉田:そうそうそう。そうそうそうそうそうそう。

スズキ:一心同体よ、照子と鶏は。

のあ:じゃあ庭に置かないでちゃんと一緒に寝ればいいのに。

戸塚:物理的にかよ。

スズキ:それは照子は俊吉と寝るから。

吉田:え。

スズキ:え! 信子の被害者意識が強すぎない? 自分で選んだ道なのに。

のあ:でもさ、信子の中に「俊吉を奪い返してやったぜ」みたいな確証が絶対無いでしょ、って思って。

Caori:うん、無いよ。勝利宣言できるほどさ、自信持ててないのよ、信子は、この時点で。だって今までの会話見たでしょ? この幸せな新婚家庭に信子が入る隙無いじゃない? これだけ見せ付けられてさ。

スズキ:でも一緒に月とか鶏見てるじゃん!

吉田:しかも十三夜に!

スズキ:ずるい!

吉田:ずるいぞ!

戸塚:ここで信子が卵を取られた側なんだけど、同時に俊吉と一緒に、鶏が寝入ってるとこに見に来たから、卵を取れる状況に来てるんだけど、結局取らずに終わるって話じゃないですか?

スズキ:でもほぼ取ってるようなもんでしょう!

戸塚:取れてないじゃないですか。

スズキ:え、精神的には取ったようなもんでしょ。

戸塚:取れてないよ全然。

吉田:うん。

スズキ:うわぁ、もうすっかり取られたような気分だった。

Caori:それは照子のコンプレックスがそう思わせてるだけだと思う。ハタから見ると、信子が痛い女で、照子は勝ち組なのにいつまでもコンプレックスあるみたいな感じ。

スズキ:お互いに被害者意識が強いのか。

Caori:うん、過去のトラウマだよね。だって照子は結婚できてるじゃん。

のあ:照子が可哀想なのは、いつまで経っても、お姉様と従兄の話についていけないって思い込んでいるところかな。

スズキ:やっぱ心まではついていけてない、手に入ってないって思ってるんじゃないのかな。

吉田:にくい男だな結局。戸塚め。

戸塚:だから俺じゃないから。

吉田:駿介め。

戸塚:俊吉ね。

吉田:ちょっと待った。結局どっちなの? 劇団のの的にどっちか決めて。ナレーションに影響あるのよ。

のあ:あははは!

吉田:いやいや、その後の読み方変わるんだから! 照子のことなんだったらさ、信子が勝ち誇ったような感じで読むしさ。信子のことだったら、ちょっとわびしく読むかもしれないし。

のあ:あぁそう。

スズキ:あのね、最初に鶏が照子だと思った理由は「寝ている……」ってとこ。寝てるのは鶏じゃん? この2-3年間さ、寝てないじゃない、信子は。

のあ:不眠症??

スズキ:いや、ちがくて! 寝てるってある種、安心しきってて、油断してるイメージじゃない? 慢心。信子ってそういう意味では眠れぬ夜過ごしてるじゃない?

のあ:信子はさ、ある意味では照子をだしぬいて、故意に譲ったわけじゃない? 積極的に。それで照子が安心しきって寝てるとこに、今すっと卵を持って行くタイミングができたってこと?

戸塚:そうそう。でも取らなかったってことだよ。

吉田・スズキ:そうそうそう。そう思ってた。

のあ:面白いなぁ。信子を演じる人は自分が鶏で、照子を演じる人は自分が鶏だと思ってて。

吉田:ね! それ凄い面白いよね。

Caori:それがね、面白いことにね、最初配役発表が間違ってて、わたし照子役だと思って1回目読んだでしょ? その時は、照子が鶏だと思ってて、信子に対して「何このイヤな女!」って思ってたのよ。

スズキ:えー! そうなんだ。

Caori:けど信子目線で読むとそんな自信無いわ、って思うわけ。

吉田:面白いなぁ。

戸塚:「取られた」っていう表現がややこしいだろうな。「取られた」って受け身だし。しかも「もう取った」っていう、取る側が取ることに成功したっていうニュアンスが出て来ちゃうから。そうすると本当は物理的に取ったのは照子なんだけど。信子は取れる状況にある、ってだけだから。だから両方の視点から見れちゃうんだと思うんだけど。

吉田:うんうんうん。

戸塚:つまり、照子は取ったけど、信子は取れる状態にある。

吉田:うんうん。

戸塚:だからナレーションはどっちかの意味に偏らない方がいい気がする。

吉田:おえっ?

スズキ:あはははは!

Caori:今、完全に信子と照子が説教されてたのに急にナレーションに来たね(笑)

吉田:マジでビックリした(笑)

スズキ:信子が感じてるのは罪悪感?

Caori:罪悪感なのかなぁ?

スズキ:譲ったのに、また取ってしまった、っていう。

戸塚:まだ取れてなくて。取れる状況に持って来てしまったっていう方が近いかな。

Caori:取れんのかなぁ?

戸塚:実際にうまくいくかどうかは別としてね。

吉田:じゃあ何? ちょっと含みのある読み方でもしとけばいいかな?

戸塚:まぁ俺の解釈だけど。

のあ:ちなみにね、わたしが読んだ文献だと、信子に見立ててたね、鶏。照子に俊吉を取られたという解釈だった。

吉田:お? そっちかよ。

スズキ:信子って鶏好きなのかな……。

のあ:「トリ」……って思ってそう。

Caori:まぁそうだろうね(笑) トリだと思ってるでしょ。それ以上でもそれ以下でもないっしょ。

スズキ:照子が鶏をさ、結婚して、実家から連れて来てまで可愛がっているのがさ。信子への愛着の象徴だとすると、鶏は信子か

吉田:解る解る。照子は照子で。信子は信子で。照子が愛するモノの比喩としての鶏だとすると、鶏が信子でイコールで、ハ〜イ♪

スズキ:最後適当かよ!

吉田:毎日毎日、信子が産んだ卵をさ、おいしいとこだけ取ってるのが照子だってことなんじゃないの?

のあ:あぁぁぁぁ。なるほどね。

吉田:結婚お膳立てしてさ、関西で毎日つまんない暮らししてさ、信子が毎日産んでる卵じゃん、照子の受けてる恵みが全部。そこだけ取ってくのよ照子は。

スズキ:照子、納得。

吉田:ナレーション納得。

のあ:なんかさ、今度は妙にスズキさんと吉田さんが一緒に反対の説に共鳴しだしたね(笑)

Caori:ね(笑) わたしまだそっちが理解できてない。

なんで庭の草ボーボーなんだろう?

のあ:すごい、俊吉の演技、良くなったよね。

スズキ:もうちょっと囁いてもいい気もするけど。

Caori:いや今結構囁いてたよ。

吉田:にくかったよ、にくかった。ひゅ〜♪

戸塚:もうちょっと囁きたい気はするんだけど、これ以上囁くとマイクに入るか心配だね。

吉田:いやー、今の「来てごらん」は良かったね。これは誰も厭わんね。

Caori:このさ、庭に降りた時さ、「大変草が生えているのね」っていうセリフやばくない?(笑)

のあ:さっき読んでる時、笑ってたよ。

Caori:だってぇ、これどういう気持ちで読めばいいの?(笑) 手入れしてないのかい! ってちょっと思うっちゃって。女中さん、ちゃんと草取りしてよ。

吉田:ごめん。旦那様がそのままでいいっておっしゃるからさ。

スズキ:いや、本当にそうなんじゃない? 信子は、俊吉があえてそうさせていることを解っているんだけども。

のあ:ここそんなに深く読む?(笑)

スズキ:読む読む。でも信子は、普通に暗いし足元ボーボーだから怖いんじゃない?

Caori:そうそう。怖いんだと思う。

スズキ:雑草って生えてない方が歩きやすいし、やっぱり茂ってるとちょっとそっちに踏み入って行くのに抵抗あるっていうか。

吉田:この女、「おずおずと」彼の方に歩み寄ってるじゃないか。

スズキ:「やだー、こわーい」ってやつか。肝試し的な?

Caori:そうそう。あ、わたしがじゃないよ、信子だからね。

のあ:本当のかおりんだったら何も見えないもんね。庭下駄も沓脱ぎも。

Caori:うん、何も見えない。猫目だから。

のあ:……鳥目ね。

俊吉は誰を誘ったんだろう?

スズキ:このさ、「ちょいと出てごらん、いい月だから」ってこれ、勇気あるよね。「おーい、みんなー、来てよー!」って言っても誰もついて来なかったから悲しいじゃない。

吉田:俊吉レベルになると違うんだよ。もう、こやつはね、自分が声掛けたら誰か着いて来なかったことがないわけ。このタイミングでこう言えばどっちかが気付くって解ってるよ。

のあ:1人じゃダメなのかな?

吉田:いや、1人でも楽しむんじゃない? 結局は。

のあ:「ちょいと出てごらん、いい月だから」っていうのもさ、俺はいい月を見付けたけど、君たちにとってもきっといいことだよ、っていう。ただ情報シェアしたいだけっていう。あ、例えば、わたし月蝕とか見たらめっちゃツイートしちゃうんだけど。

スズキ:「ちょいと出てごらん」って?

Caori:やばい(笑)

吉田:やべぇ、それ次絶対に使うわ。っていうか、あるわ、そういえば、「月めっちゃ円い!」みたいな謎のメール送って来ることあるよね(笑)

のあ:そうそう、だからなんだよって感じのメール、わたし送ったでしょ、あなたに。

吉田:でもその時、私ももう写真撮った後だったのよ。だから、そういうことだよね。

照子と信子、どっちが幸せ?

Caori:ああ、総じて、信子、可哀想。

スズキ:うん、可哀想。でも照子の方が可哀想。

Caori:え、照子が可哀想なのわかんないなぁ。

スズキ:え! 可哀想でしょ。

Caori:なんだかんだ幸福でしょ、この子。いい子だから泣いちゃったりしてるだけで。

スズキ:いや可哀想だよぉ。だって俊吉と結婚したのにずっとお姉様に不安を抱えてるんだよ?

吉田:どちらはんも、幸せもんやと思うけどなぁ〜。

Caori・スズキ:え、誰!?(笑)

のあ:何目線?(笑)

吉田:女中目線だよ!(怒) 女中の立場になってみ!? 2人とも家あるし。夫もいるし。夜までワーワー騒ぎやがって。明日の朝も早いのに。なんなん?

Caori・スズキ:ごめん(笑)

参考リンク

作品の視聴、他の記事へのリンクはこちらから↓

作品に登場する古い言葉、難しい言葉の読み方や意味の解説はこちらから↓

作品本編はYouTubeでも配信中↓

芥川龍之介 秋 第1話 - 劇団のの 朗読・ラジオドラマ|Ryunosuke Akutagawa "Autumn" 1/4 – Japanese Reading
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