国木田独歩「竹の木戸」|あらすじ・説明 下2

ゆるっと考察
竹の木戸
ゆるっと考察

前回までのあらすじはこちらから↓

元気な朝ごはん

次の日の朝。

お源は、置いてある炭俵に気付いてびっくりしました。一体、磯吉はどうやって炭俵を買って来たのでしょう!?

磯吉は普段から、お源が朝ご飯を作っている間、ずっと布団の中で横になったままです。

お源「磯さん、これはどうしたの?」
磯吉「買って来たんだ」
お源「え! どこで買ったの?」
磯吉「別に、どこだっていいじゃないか」
お源「どこか、ぐらいきいたっていいじゃないか」
磯吉「……初公の近所の店だよ」

あれ? 

昨日訪ねたのは、金次です。初公なんて、まったく登場していませんでしたね。

お源「どうしてまた、そんな遠くの店で買ったの?」

初公は、ふたりの家から遠くに住んでいるみたいです。昨夜、実際に磯吉は、そんなに遠出をしていませんし、炭を盗んだのは、近所にあるお店です。

磯吉はやっと起き上がり、訳を話します。

「昨日は、おまえがギャーギャー言うから、金公の家に行って、金を借りようとしたが、無いと言われた。それからすぐに初公の家に行った。炭を買うから金を貸せと言ったら、初公が、「なんだ、一俵ぐらいなら、俺の行きつけの店に行って、俺の名前で持って行けよ」と言うので、その足でその店に行って貰って来た」

と言うのです。

磯吉は、昨夜、泣いて抗議するお源をとりあえず満足させて黙らせるため、その場凌ぎに、盗みを働いて、しかも嘘をついているのです。

でも、お源は、炭俵を見て、「これなら10日ぐらい足りる!」と大喜びです。

磯吉はやる時はやり男だと信じているからです。

お源は、

「旦那に「仕事しろよ」と責めるなら、自分も頑張らなきゃダメだ」

「あと、お隣さんにも顔を出さないと不自然だし、かえって疑われる」

と考えました。そこで、いつもの通り弁当を持たせて磯吉を送り出し、自分も朝ご飯を食べました。

異変

お源は、一段落すると、バケツを持って、木戸を開けました。すると、女中のお徳と、真蔵の義理の妹のお清が庭に出ていました。

いつもの朝の風景ですね。

お清は、お源の顔を見て心配します。

「お源さん大変顔色が悪いね、どうかしたの?」

昨日の夜、寒い中で凍えて、しかも泣いていたので、顔も腫れたり、疲れていたのでしょう。

お源は、ちょっと風邪を引いたのだとごまかします。お清は心配します。

お徳は、「おはよう」と口早に言って黙ります。

お源は、その挨拶で気付きました。昨日まで炭俵が並べてあった場所に、炭俵が置かれていないのです! きっと、昨日のうちにお徳の部屋に移されたのに違いありません。

お源は顔色を変えて、目をぎょろぎょろさせました。

お源が慌てる表情を見て、お徳はにやりと笑いました。お源は、お徳がにやりと笑ったことに気付き、お徳を睨みつけました。

お徳は、お源に睨まれたので、何か喧嘩したくて仕方ありません。バチバチです。

でも、お徳さんは、お清さんが傍にいるので我慢しています。

とどめの一言

するとそこへ、「皆様、おはようございます!」と、増屋というお店の、18〜19歳になる御用聞きがやって来ました。

増屋というのは、磯吉が炭を盗んだ、あの近所のお店です。大庭家もお源もここで炭を買うので、みんな顔見知りです。

御用聞きというのは、注文を取りに来るお兄さん。「サザエさん」に登場する三河屋のサブちゃんが有名ですが……定期的に来てくれる生協さん、ヤクルトレディさんみたいな感じでしょうか。

お兄さんは、炭俵がいつもの置き場に無いことに気付きました。「あれ? 炭はどこかへ片付けたんですか?」

お徳は、待ってましたとばかりに、「外に置いておくと物騒だから中にしまうことにした」と説明します。そして、水を汲み終わって歩き出したお源さんを、わざとらしく見ます。

お清さんは、わざと意味深なことを言うお徳を睨みました。昨日の家族会議で、お源さんに対して波風を立てないように言ったのに!

何も知らない増屋のお兄さんは続けます。

「本当に物騒ですよ。うちでも昨夜、1俵盗まれました」

お徳は、お源さんを見ながら「何の炭をとられたの?」と尋ねました。お源さんを見ながらですよ!

お兄さんは「上等の佐倉炭です」と答えます。

お源は、この会話を聞いていました。

歯を食いしばり、よろめきながら家に向かいます。バケツを投げるように置いて、炭俵の口を開けます。入っていたのは、上等の佐倉炭でした。

そう、これは磯吉が、初公の許可を得て譲って貰った炭なんかじゃない、増屋から盗んだ物だと、判ってしまったのです。

その日の夕方

お徳は、真蔵の老母からも、真蔵の妻からも大変厳しく叱られました。お隣の奥さんに、あからさまに疑うような失礼なことを言ったからです。

現場に居合わせたお清さんは、夕方になってもお源が姿を現さないので、心配になりました。普段なら、夕食の支度で井戸に来るはずなのに。

そこで、風邪の見舞いも兼ねて、植木屋夫婦の家に行ってみました。

家の中があまりにひっそりとしているので「お源さん」と呼んでみましたが、返事はありません。

そこで、おそるおそる障子戸を開けると、お源は、天井の梁に細い帯を掛け、首を吊って亡くなっていました。どうやら、磯吉が盗んで来た炭俵を踏み台にしたようでした。

後日

2日後、竹の木戸が取り壊され、生け垣は元通りになりました。

更に2ヶ月後、磯吉は渋谷村に移り住んでいました。なんと既に、お源と同い年ぐらいの奥さんがいます。でも、相変わらず、豚小屋同然の家でした。

他の記事もあわせてご参考に!

あらすじの最初「あらすじ 上1」はこちらから!

作品に登場する古い言葉、難しい言葉の読み方や意味の解説はこちらから↓

旧字・旧仮名遣いで書かれた作品本編は、全文、青空文庫で読むことができます↓

作品本編はYouTubeでも配信中↓

タイトルとURLをコピーしました