この日も、またまたスズキ家で稽古です。
本日の稽古では、お徳と真蔵が、磯吉が完成させた竹の木戸の前で話している場面を練習しつつ、
- お徳の発言の真意とは?
- 真蔵は家では和服、通勤は洋服
- 真蔵のコミュニケーション能力の高さ
- 木戸の大きさはどのぐらいだった?
- 木戸って木で作るもの? でも素材は竹
- お徳やお源は、とても素直で直情型
- お徳は、現代人なら絶対にツイッターでつぶやきまくっているタイプ
などをおしゃべりしています。
今日のお菓子は、大阪の、たこ焼き味のポテトチップス!
おいしくて評判でした。
竹の木戸が完成した場面
植木屋は其処らの籔から青竹を切って来て、これに杉の葉など交ぜ加えて無細工の木戸を造くって了った。
—略—
出来上ったのを見てお徳は
「これが木戸だろうか、掛金は何処に在るの。こんな木戸なんか有るも無いも同じことだ」
と大声で言った。
十一月の末だから日は短い盛で、主人真蔵が会社から帰ったのは最早暮れがかりであった。木戸が出来たと聞いて洋服のまま下駄を突掛け勝手元の庭へ廻わり、暫時は木戸を見てただ微笑していたが、お徳が傍から
「旦那様大変な木戸で、御座いましょう」
「これは植木屋さんが作らえたのか」
「そうで御座います」
「随分妙な木戸だが、しかし植木屋さんにしちゃア良く出来てる」
と手を掛けて揺振ってみて
「案外丈夫そうだ。まアこれでも可い、無いよりか増だろう。その内大工を頼んで本当に作らすことに仕よう」
と言って
「竹で作えても木戸は木戸だ、ハ、ハハハハ」
と笑いながら屋内へ入った。
真蔵が帰って来たのは、もう夕方
のあ「真蔵が帰ってきたのは夕方なんだね。ちょうど今日、稽古してるのが11月で、同じ時期だから実感があって解り易いね」
梅田「そうだね。時間もそろそろそんな感じだね」
のあ「今、もう午後の早い時間にこんなに西日になっている」
スズキ「秋冬だから、日が短くなっているでしょ」
のあ「秋だし、結構日差し自体も斜めに差し込んでいただろうね」
吉田「え、なんで斜めなの?」
のあ「地球が傾いてるから、太陽の軌道が南に寄ってるわけ」
吉田「そうだろうね」
スズキ「しかも、傾いてるから日が短くなる」
吉田「そうだろうね」
のあ「この窓の外みたいな景色だったかもね」
梅田「そうかも」
のあ「これ、裏庭があるってことは……大庭家には前庭があるってことだね」
真蔵は洋服を着ている
のあ「洋服のまま飛び出して来たっていうのは、洋服は通勤の時着る物で、普段、家に帰ったら和服に着替えて過ごしてたんだろうね。サザエさんの、波平さんみたいな」
スズキ「サンダルのまま慌てて出る、みたいな。こんな、着替える間も無く急いで庭に来たってことは、女中のお徳がせかしたんじゃない? 「早くおいでよ」みたいな。うわぁ、お徳って凄い女だな!」
梅田「ね」
吉田「旦那様にも早く木戸の出来映えをバカにしてもらおうと、ってか」
のあ「下駄を履いて裏庭を歩いたらどんな音だっただろうね。カランコロン?」
スズキ「いや、秋でしょ。落ち葉とか落ちてるから、やっぱカサカサじゃない?」
のあ「あ、是非そういう効果音はほしいね」
スズキ:「うちの庭で録る?(笑)」
真蔵は木戸を見て微笑する
のあ「真蔵は木戸を見て微笑するんですね? 暫くの間……ねぇ、暫くってどのぐらいの時間? …5分!?」
梅田「長っ」
のあ「じゃあ2分!」
スズキ「2分も長いわ」
Caori「どういう気持ちだったんだろうね」
スズキ「どうコメントしようか迷ってたんじゃない?」
のあ「もう5秒にしよう」
スズキ「適当だなぁ」
のあ「なんで「微笑」なんだろう?」
梅田「いや、それは眺めたって、(しかめっ面)こういう顔はしないでしょ。だから、真蔵って、基本いい人なんじゃない? 新しくできたものを見て「へえ」って笑う、っていう。現代人に置き換えてみたら、新しいテレビを買ったとか、新しい表札を付けてみたとか。例えば、新商品を買ったとして、「わぁ、ネットで頼んで、たったの1000円でこんなんなるんだ、へぇ」みたいな。
スズキ「もしかしてさ、木戸ができたって、結構ビッグなことなんじゃない? イベント的な」
のあ「当時じゃなくても、今でもね、裏庭のお隣さんとの境にフェンス作ったんだ、とか言ったら、ちょっと家出て見たりするよね、多分」
「旦那さま、大変な木戸でございましょう?」の意図
のあ「これは、真蔵から何かしらの発言を引き出そうとしてるよね。何を引き出したいの、お徳は」
吉田「そうだね。お徳的には…(笑) 「こんな貧相な物を作って」「作らなきゃ良かった」とか言って欲しいね。「だっせ」「やべぇ」「まじか」とか。
スズキ「いや「まじか」は言わないでしょう(笑)」
Caori「「だっせ」も「やべぇ」も言わないでしょ(笑)」
吉田「まぁ、要は、けなす言葉だよね」
スズキ「「大変な」っていう修飾語が面白いんだ。今と同じ意味で使ってるのかな。それとも「大変」って何か違うニュアンスを表す言葉だったのかな」
Caori「どっちにも取れるよね、「大変な」は。「凄く良いとも、凄く悪い」とも言える」
のあ「関西弁の「えらい」とか、英語の「tough」に近い感じ?」
Caori「現代語で言えば「やばい」かな」
のあ「あぁ、元々は悪いことを表す意味だけど」
Caori「そ。今では素晴らしい時、おいしい時とかも「これやばくない?」って言えるから」
のあ「この「大変」は形容詞ていうか、副詞なんじゃないかな。つまり、程度の大きさしか表してないってこと」
スズキ「あ。シーン8で真蔵が言う「大変勉強だね」の大変と同じ? 「凄く」「とても」っていうこと?」
吉田「お徳は、旦那様相手に自分から「ほら、粗末でしょう?」とハッキリとは言えないから……」
のあ「そう。「It’s very very ◯◯ Ahh!! ですね」って持ち掛けて、真蔵が自分で◯◯を埋めるように誘導している」
Caori「会話の方向性を固めないようにしてるよね」
吉田「「え、見たぁ? どう思った? アレ。え、やばくなぁい?」って言っておく。もし相手が「あ、うん、アレ凄い良かったよね!」って褒める態度で来たら、そっちに舵を切れるようにする」
Caori「いるよね、そういう人」
スズキ「ずるいなぁ」
お徳への真蔵の返しがとてもスマート
のあ「それに対して、すぐに答えず、真蔵は「植木屋さんがこしらえたのか」って質問するのよね〜」
スズキ「さすが。切り返しがスマート」
Caori「真蔵はニュートラルだよね」
のあ「すぐ感想を言わないね」
スズキ「もしかしたら、木戸を「変だな」とは思ったんじゃない?」
Caori「でも、それを「まぁ植木屋さんにしてはいいんじゃない?」と切り返すんだよね」
スズキ「コミュ力(コミュニケーション能力)高いなぁ〜真蔵」
のあ「でも、この「植木屋さんが作ったの?」って訊かれてもまだ、お徳は、真蔵が悪口を継いでくれるんじゃないかって期待してると思う」
吉田「そうそう。期待してるよ。「植木屋だからぁ…? だから何…!? からのぉ〜?」って(笑)」
のあ「でもさ、真蔵の、「ないよりかましだろう」っていうのも、実は結構辛口じゃないか?」
スズキ「お徳さんへのフォローかな。一応の。ちょっとは悪く思ってますよ、っていうサービス」
Caori「え、そんなに考えてるかな、真蔵って。真蔵って、わたし、そんなにめっちゃいい人ってイメージも無いんだよね。波風立てなくないだけの人っていうか」
実際、木戸とはどんな木戸だったんだろう?
のあ「真蔵が木戸を揺するのってさ、どれぐらい揺すぶると思う? (ヘドバンしながら)バッサバッサバッサ!」
スズキ「いや、そりゃ壊れちゃうわ!」
梅田「片手じゃない? 強度を確かめる程度」
吉田「ていうか、木戸ってどんな感じなん?」
スズキ「え。木戸の高さってどのぐらいなんだろう? この表紙の絵は? もうちょっと高いのかな、表紙の絵よりも。そういうイメージだった。
(皆、表紙の絵を開く)
Caori「え。結構小っちゃいんじゃない?」
のあ「小っちゃい? カフェのカウンターのパタパタするドアみたいな?」
Caori「西部劇みたいに。パッカーンみたいな?」
スズキ「大きいと思ってた」
のあ「もう、みんなの好きな大きさにする?」
スズキ「それぞれの想像する大きさ?」
のあ「横幅は90cmぐらいって決まってるねぇ。本文に3尺ばかりって書いてあるからね」
Caori「自分のおばあちゃん家とかにあったのは、凄く大きかったっていう記憶があるんだけど……多分、その時にわたしが小っちゃかっただけなのかな、って思った」
のあ「あ〜、そうだね。小さい時に行ったことある場所が、今久しぶりに行ってみたら意外に、すごい狭い場所だったりってことはよくある。でさ、このさ、杉の葉を混ぜ加えてって書いてあるけど、どうやって混ぜたんだ?」
吉田「あ、そうだ。隙間を埋めたってことかな」
スズキ「この表紙の絵よりも、ちくちくしてるのかな?」
のあ「あ、一応この表紙の絵に関して言うと。これは、「竹の木戸 下手」で画像検索したのね。でも、出て来ないの(笑) だってどこの園芸店も工務店も、通販の商品の宣伝だから、綺麗な木戸をちゃんと作ってるわけ」
スズキ「そりゃそうだ(笑)」
のあ「だから、その写真をできるだけね、磯吉が作ったんだ、と思って、歪めて描いて。あと、杉の葉っていうのも、こうやって一応描き足してるけど。このゲジゲジ。どういう状態か、よく解らなかったから」
スズキ「もっとあっただろうね」
のあ「ちなみに、この木戸小さく見えるけど、それは雀の絵がでかいから」
Caori「太ってるね」
吉田「冬だしね」
のあ「違うの、単に絵が下手で縮尺がおかしいの(笑) 磯吉、竹もそこらへんの藪から切って来たってね」
吉田「ほんと、磯吉って最低だな」
Caori:ほんと磯吉最低。嫌いだわぁ。
のあ「さっきも言ったけど、今、竹の木戸で画像検索すると、植木屋さん、ガーデニング店、園芸店とかが出て来るんだけど。この時は大工さんの仕事って言われてるんだよね。なんか不思議」
スズキ「工務店っていう意味では同じなんじゃない」
のあ「今も、庭作る時は、植物のプランする人、デザインする人、水道とか煉瓦とか施工やる人だと、まぁ分担はあるけど。大工って家作る人のイメージだった」
真蔵も辛口?
吉田「この真蔵のさ、「竹でできても木戸は木戸」っていう。ねぇ、木戸って、竹以外だと何が正しいの?」
スズキ「木でしょ」
Caori「竹も木じゃないの?」
スズキ「いや。竹は竹で、木っていうのはもっと…こう…、木」
Caori「あ、ヒノキとかクスノキとかってこと? 竹って、すごい高価なものだと思っちゃうんだけど。竹細工とか」
のあ「磯吉、これ、そこらへんの藪から取って来てるよ」
スズキ「いやいや、本当に竹はいっぱい生えて来るよ、そこら辺に。ニョキニョキと。邪魔なぐらい」
梅田「いや、それはあなたの家だからでしょ!(笑)」
のあ:そうね。ここら辺の家はね(笑) 我が家もそうだったけど。笹とか竹は時々ちゃんと切らないと。増え過ぎちゃって家を圧迫したりするから、被害凄いでしょ。どっちかっていうと、害、みたいな」
スズキ「そうそう」
のあ「昔はほら、竹取の翁とかも「万のことに使いけり」って言うでしょ。伐採して利用することで、定期的に駆除しないと」
吉田「よく今その喩えが出て来るな(笑)」
のあ「暗記させられたじゃん中学で(笑)」
スズキ「竹は、ほっといても真っ直ぐだから細工が楽だし。木は研いだり、皮の処理とか大変じゃん」
Caori「竹は軽いしね。柔らかいし。使い易いのか」
のあ「天井も編めるし、柱にもなるし、お弁当箱も作れる」
吉田「え。もし木材で本格的な木戸にするとどうなるの? っていうか、じゃあどんな門が正解なの?」
のあ「何だろうね……ちゃんと両側に門柱があって……。枠組みとかあって、部分的に格子になってて、みたいな……掛け金も付いててね」
スズキ「そうだよ! これ、鍵も付いてないんだよ!?」
のあ「誰でも庭に入ってうろうろできるってことね」
Caori「磯吉本当に嫌い」
のあ「あってもなくても同じ物作って、ないよりかはマシって言われてるんだもんなぁ。
お徳はすごい
のあ「これ、真蔵、笑いながら家に入って行く訳だから、結構長めに笑って編集で音量小さくしたら?」
スズキ「技術! 面白いね。それか、梅ちゃんが歩きながら、マイクから遠離る?」
吉田「それもありだね」
のあ「お徳はがっかりだね。真蔵のこの反応は。「そうでございます」って言った後、実は何も喋らないけど、何考えてるの、お徳は」
吉田「顔はこうでしょ(不細工にして)「おい真蔵…!」って」
スズキ「不細工だな」
吉田「だってねぇ。「一緒に悪口言いたかった」「もう木戸なんてやめよう」って言ってほしかった、っていう。でも旦那様だから言えないじゃん」
のあ「お徳って、すっごい人だよね。すごい素直じゃない? お徳が言ってることって、今だったら言えないことが多いじゃない。お源に対しても。ここまで嫌味を言える人は、ドラマとか漫画ぐらいしか出て来ないでしょ」
吉田「お徳ね、今だったら絶対ツイッターやってるわ」
皆「ツイッターね!」
スズキ「あぁ〜お徳のツイッター面白そう! 見たいなぁ」
吉田「この後、絶対ツイッターにつぶやくでしょ」
梅田「しかも鍵付きアカウントでね」
皆「鍵…!(笑)」
吉田「めちゃくちゃツイートするよ、「真蔵さぁ〜空気読めよ〜」「ていうか、マジうちの旦那様ってさぁ…」などなど」
のあ「お徳って、節々で、現代人とメンタリティー違うように感じるんだけど。というか、一向に判断が付かないのがね、当時においても、この人が図抜けてアグレッシブで、類いまれなる素直な人なのか。やっぱりこういう人は希有で、現代においても漫画やドラマの登場人物がちょっとデフォルメされてるみたいに、こういう極端な人を描いたのか。それか、当時の人たちは大体がこうで、我々が現代人だから理解できないのか。そこが判断できない。どう思う?」
スズキ「それはもうずっと、絶対に判らないことだよね」
のあ「知りたいでしょ」
Caori「いや、いる。わたしたちの周りに少ないだけで、こういう人、いる所にはいるって」
スズキ「いる〜!?」
Caori「いるいる」
吉田「いるね」
Caori「全編通して腹の探り合いの会話ばっかりだね」
のあ「腹の探り合いにどのぐらい間を使うのかっていうのが、読む間になってくるのかなぁ、と」
お源もすごい
吉田「でもさー。言うたら、お源も素直じゃない?」
スズキ「負けてないよね」
のあ「もしかしてこれが標準なのかな?」
スズキ「なんか、直情型だよね」
Caori「直情型が標準だったのかな。それで、大庭家が変わってたのかな。近代化した人たちっていう」
のあ「そういえば、結構、幕末・維新の歴史番組見ると、当時活躍した若手の侍のことを「血気盛んな人だった」とか「キレやすかった」って評価すること多いよね〜」
Caori「何なんだ。食べ物の違い? 米の糖分か?」
お徳には可愛げもある
吉田「でも、お徳ってちょっと笑っちゃうっていうか、可愛げもあるよね。陰険ではないよね。影で意地悪するんじゃなくて。目の前で堂々と悪口言う。ある意味、竹を割ったような?」
スズキ「いいねぇ、竹だけにね」
Caori「さっぱりしたところはあるかもね。湿っぽくはないよね」
のあ「このお徳の、お源に対するプチ優越感って、彼女の自己承認欲求に直結してると思うのね。自分の投じた一石で他人に波紋が広がって行くのを見るのが嬉しいっていうか。お源は恰好の標的で。こういうプチ事件に対してわぁわぁ騒ぐことで、大庭家の中で注目を浴びたい、とか。大庭家の中でお徳だけはどんなに頑張っても女中な訳で。しかもこの中では上手くやってかなきゃいけない。だから、身近で、自分の比較対象として低めることができるのはお源だけなんじゃないかと」
Caori「小っちゃい子みたい。小っちゃい時の方がこういう子いたよね。「先生、先生、見て、見て」って」
スズキ「「俺はあいつには勝てる」「あたしの方がうまい」と言いたい」
吉田「表裏は無いよね」
のあ「もちこのお徳は、どこか可愛かったね」
Caori「お徳、可愛いとは思う」
スズキ「実際大庭家でも可愛がられてるし」
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