金田一お徳の事件簿

 

引き続き、暖房が効かない寒い部屋での稽古です。

 

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ここからは、稽古でやった場面と、それについてキャストが話した内容をお届けします。
作品本文は、青空文庫からコピーしたものに、読み易いよう改行を加えています。
キャストが話した内容は、録音した物を文字に起こし更に編集しています。
なお、議論は明確な答えを出すものではなく、情報は必ずしも正確ではありません。
演出を付けるために自由な発想に基づいて発言しております。

 

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国木田独歩より 竹の木戸

 

先ずこのがやがやが一頻止むとお徳は急に何か思い出したように起て勝手口を出たが暫時して返って来て、妙に真面目な顔をして眼を円くして、
「まア驚いた!」
と低い声で言って、人々の顔をきょろきょろ見廻わした。人々も何事が起ったかとお徳の顔を見る。
「まア驚いた!」
と今一度言って、
「お清様は今日屋外の炭をお出しになりや仕ませんね?」
と訊いた。
「否、私は炭籠の炭ほか使ないよ」
「そうら解った、私は去日からどうも炭の無くなりかたが変だ、如何炭屋が巧計をして底ばかし厚くするからってこうも急に無くなる筈がないと思っていたので御座いますよ。それで私は想当ってる事があるから昨日お源さんの留守に障子の破目から内をちょいと覗いて見たので御座いますよ。そうするとどうでしょう」
と、一段声を低めて
「あの破火鉢に佐倉が二片ちゃんと埋って灰が被けて有るじゃア御座いませんか。それを見て私は最早必定そうだと決定て御隠居様に先ず申上げてみようかと思いましたが、一つ係蹄をかけて此方で験めした上と考がえましたから今日行って試たので御座いますよ」
とお徳はにやり笑った。
「どんな係蹄をかけたの?」
とお清が心配そうに訊いた。
「今日出る前に上に並んだ炭に一々符号を附けて置いたので御座います。それがどうでしょう、今見ると符号を附けた佐倉が四個そっくり無くなっているので御座います。そして土竈は大きなのを二個上に出して符号を附けて置いたらそれも無いのです」

「まアどうしたと云うのだろう」
お清は呆れて了った。老母と細君は顔見合して黙っている。真蔵は偖は愈々と思ったが今日見た事を打明けるだけは矢張見合わした。つまり真蔵にはそうまでするに忍びなかったのである。
「で御座いますから炭泥棒は何人だか最早解ってます。どう致しましょう」
とお徳は人々がこの大事件を喫驚してごうごうと論評を初めてくれるだろうと予期していたのが、お清が声を出してくれた外、旦那を初め後の人は黙っているので少し張合が抜けた調子でこう問うた。暫時く誰も黙っていたが
「どうするッて、どうするの?」
とお清が問い返した、お徳は少々焦急たくなり、
「炭をですよ。炭をあのままにして置けばこれから幾干でも取られます」
「台所の縁の下はどうだ」
と真蔵は放擲って置いてもお源が今後容易に盗み得ぬことを知っているけれど、その理由を打明けないと決心てるから、仕様事なしにこう言った。
「充満で御座います」
とお徳は一言で拒絶した。
「そうか」
真蔵は黙って了う。
「それじゃこうしたらどうだろう。お徳の部屋の戸棚の下を明けて当分ともかく彼処へ炭を入れることにしたら。そしてお徳の所有品は中の部屋の戸棚を整理けて入れたら」
と細君が一案を出した。
「それじゃアそう致しましょう」
とお徳は直ぐ賛成した。
「お徳には少し気の毒だけれど」
と細君は附加した。
「否、私は『中の部屋』のお戸棚へ衣類を入れさして頂ければ尚お結構で御座ます」

「それじゃ先あそう決定るとして、全体物置を早く作れというのに真蔵がぐずぐずしているからこういうことになるのです。物置さえあれば何のこともないのに」
と老母が漸と口を利たと思ったら物置の愚痴。真蔵は頭を掻いて笑った。
「否、こういうことになったのも、竹の木戸のお蔭で御座いますよ、ですから私は彼処を開けさすのは泥棒の入口を作えるようなものだと申したので御座います。今となれゃ泥棒が泥棒の出入口を作えたようなものだ」
とお徳が思わず地声の高い調子で言ったので老母は急に
「静に、静に、そんな大きな声をして聴れたらどうします。私も彼処を開けさすのは厭じゃッたが開けて了った今急にどうもならん。今急に彼処を塞げば角が立て面白くない。植木屋さんも何時まであんな物置小屋みたような所にも居られんで移転なりどうなりするだろう。そしたら彼所を塞ぐことにして今は唯だ何にも言わんで知らん顔を仕てる、お徳も決してお源さんに炭の話など仕ちゃなりませんぞ。現に盗んだところを見たのではなし又高が少しばかしの炭を盗られたからってそれを荒立てて彼人者だちに怨恨れたら猶お損になりますぞ。真実に」
と老母は老母だけの心配を諄々と説た。
「真実にそうよ。お徳はどうかすると譏謔を言い兼ないがお源さんにそんなことでもすると大変よ、反対に物言を附けられてどんな目に遇うかも知れんよ、私はあの亭主の磯が気味が悪くって成らんのよ。変妙来な男ねえ。あんな奴に限って向う不見に人に喰ってかかるよ」
とお清も老母と同じ心配。老母も磯吉のことは口には出さなかったが心には無論それが有たのである。
「何にあの男だって唯の男サ」
と真蔵は起上がりながら
「然ども先ア関係わんが可い」

 

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—カメラワークがある作品です。

◆スズキ:お徳がワーッて喋った後、このお清「どうしたというのだろう」って、何に掛かってる言葉なのかな?
◆Caori:普通に「なんでそういうことしたの?」っていうことじゃなくて?
◆のあ:「お徳がそんなことまでしたのにびっくりしたわぁ」っていうことなのか。「まぁ、その炭は何処へ行ったのでしょうか」ってことなのか。「お徳、何故そんなに騒いでるの?」ってことなのか。
◆Caori:今までは「お徳、やりすぎじゃない?」っていう意味だと思ってたけど。
◆吉田:お徳そのものっていうより、この状況に対してなんじゃないかな。お徳に対しては相槌として「あらぁ、困ったわね」みたいなことを答えてあげたいんだけど。なんか、他の人に対して、顔色とか伺いながら、様子見の発言なんじゃないかなぁ?
◆Caori:なるほど。
◆吉田:「あらぁ、なんか、お徳が騒ぎ出してますけど、こいつ、どうやって諫めます?」ってチラチラ見るような。
◆スズキ:何かしら、直接回答になるような発言はしてないもんね。
◆吉田:そう。多分こうやってお徳が色々大袈裟に騒ぐことって、今までも多々あったと思うのね。だから、他の人がどう反応するか……それこそ、カメラワークとかで言ったら、お徳が騒ぐ→お清が「どうしたことだろう」って困った顔して言う→他の細君・老母・真蔵がグルーっと映る。そのための繋ぎのセリフ。

 

—金田一少年の事件簿みたいな場面ですね。

◆のあ:なんか、サスペンスみたいだね。
◆中馬:金田一ですか。
◆Caori:解る。
◆のあ:実は、「名探偵コナン」は解るんだけど、「金田一少年の事件簿」って漫画もアニメも観たこと無いんだよね。
◆中馬:コナンより金田一の方が怖いんですよ。殺し方が。もう人体がバラバラになりますから。
◆スズキ:あぁ、バラバラにして人数を1人増やしたりするんだよね。
◆中馬:あ、パクリの話しでしょ。
◆皆:あぁ(頷)
◆中馬:謝辞が載ったやつでしょ。
◆皆:あぁ〜(頷)
◆のあ:ごめん、何の話!? みんな共有してるけど(笑)
◆栗田:あれは本家の金田一耕助がありますから。
◆中馬:スケキヨ……菊人形……!
◆吉田:孫のもそういうの多いよね。
◆栗田:孫ってあなた、あれを元にその路線でやってるからだよ!
◆吉田:アッハッハ。
◆のあ:あぁ〜どうしても金田一春彦先生の顔が出て来るんだけど。
◆スズキ:辞書のおじいちゃんね。

 

—現代には無い文章の書き方をしていますね。

◆吉田:お徳のセリフね、1文1文がちょっと長くて。切り方が難しい。「○○で〜、○○で〜、○○だから○○で〜」っていつまでも続くじゃん。
◆のあ:それ、とづ(戸塚)も言ってた、「どこで切れてるんだよこれ」って。
◆吉田:一応、今はね、取れる所では息吸うために間を取ってるつもりなんだけど。
◆Caori:これは好きに間を取っていいんじゃないかなぁ? 自分の思う通りにやって。
◆スズキ:これさぁ、もう句読点って「、」じゃなくて「。」打つべきなんじゃないかって思う所もあるじゃん。
◆吉田:そこでまだ文を繋げるのか! っていう。
◆スズキ:これ、現代で作文書いたら「独歩君、長い文章は2つか3つに分けてみようか」って先生に怒られるやつだね。
◆中馬:この、テキスト本文に入ってるスペースは、これ何なんですか。
◆のあ:これは、わざと読みやすい体裁に変えてあるの。
◆スズキ:分かち書きみたいな。
◆中馬:ワカチガキって何ですか。
◆スズキ:小学校低学年の教科書で、平仮名だらけになった時、読み辛いからちょっと間が空いてるじゃない? あれのこと。
◆皆:へぇ!

 

—お徳のテンションはどのぐらい高い?

◆スズキ:ねぇ、お徳って、もっとエキセントリックでいいんじゃない? もっと、1人だけ場を荒らすような。 
◆のあ:え、もっと!? 今でも結構エキセントリックだけど。まさか、お徳まで叫ぶの?
◆スズキ:結構大人しい可愛い感じだったかな、と。
◆吉田:あのねぇ、実を言うと、こないだ、家に帰ってから、稽古内で試し録りした音声を聴いてみたんだけど。もう、聞いてて自分の声が嫌になっちゃって。そんで、聴くの辞めた。
◆Caori:え、そこまで!?
◆吉田:音質かな。「もうこれ以上、この声を聞いてたくないな」ってなった。女の人の声って、あまり高く出し過ぎると、ヒステリックになっちゃって、聞き苦しいのかな、って。
◆スズキ:聴いている人を嫌な気持にさせたら勝ちなんじゃないの?
◆のあ:お徳の勝ちに帰するのであった。
◆栗田:だから、そこは「朗読」っていうものに寄せた方がいいパートなんじゃない?
◆スズキ:うーんと、テンションの上がり方が、平成の女の人じゃなくて、昭和な感じなんじゃないかなぁ、って。
◆のあ:明治だけど。
◆スズキ:そうなんだけど、表現として(笑) ただ上がる感じじゃなくて。毒々しい感じ? 
◆吉田:やってるやってる!! わたしは既に相当な毒をやってるよ!!
◆栗田:お徳の所だけ録音方法変えて、昔の日活映画みたいな音質にしたら?
◆皆:別録り(笑)
◆スズキ:おっきい声出したらすぐ割れるやつか。昭和。
◆のあ:原節子さんっぽい感じね。
◆Caori:それはそれで面白いけど。
◆のあ:新しい試みだな。
◆中馬:聴いてる人混乱するでしょうよ、「なんで、この人の声だけすぐ割れるんだろう?」って。

 

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