この話「豚小屋」で終わるんだよ

 

引き続き、スズキ家で稽古です。

 

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ここからは、稽古でやった場面と、それについてキャストが話した内容をお届けします。
作品本文は、青空文庫からコピーしたものに、読み易いよう改行を加えています。
キャストが話した内容は、録音した物を文字に起こし更に編集しています。
なお、議論は明確な答えを出すものではなく、情報は必ずしも正確ではありません。
演出を付けるために自由な発想に基づいて発言しております。

 

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国木田独歩より 竹の木戸

 

其処で平常の通り弁当持たせて磯吉を出してやり、自分も飯を食べて一通片附たところでバケツを持って木戸を開けた。

お清とお徳が外に出ていた。お清はお源を見て
「お源さん大変顔色が悪いね、どうか仕たの」
「昨日から少し風邪を引たもんですから……」
「用心なさいよ、それは不可い」
お徳は
「お早う」
と口早に挨拶したきり何も言わない、そしてお源が炭俵の並べてないのに気が着き顔色を変えて眼をぎょろぎょろさしているのを見て、にやり笑った。お源は又た早くもこれを看取りお徳の顔を睨みつけた。お徳はこう睨みつけられたとなると最早喧嘩だ、何か甚い皮肉を言いたいがお清が傍に居るので辛棒していると十八九になる増屋の御用聞が木戸の方から入て来た。増屋とは昨夜磯吉が炭を盗んだ店である。

「皆様お早う御座います」
と挨拶するや、昨日まで戸外に並べてあった炭俵が一個見えないので
「オヤ炭は何処へ片附けたのですか」

お徳は待ってたという調子で
「あア悉皆内へ入ちゃったよ。外へ置くとどうも物騒だからね。今の高価い炭を一片だって盗られちゃ馬鹿々々しいやね」
とお源を見る、お清はお徳を睨む、お源は水を汲んで二歩三歩歩るき出したところであった。
「全く物騒ですよ、私の店では昨夜当到一俵盗すまれました」
「どうして」
とお清が問うた。
「戸外に積んだまま、平時放下って置くからです」
「何炭を盗られたの」
とお徳は執着くお源を見ながら聞いた。
「上等の佐倉炭です」

お源はこれ等の問答を聞きながら、歯を喰いしばって、踉蹌いて木戸の外に出た。
土間に入るやバケツを投るように置いて大急ぎで炭俵の口を開けて見た。
「まア佐倉炭だよ!」と思わず叫んだ。

お徳は老母からも細君からも、みっしり叱られた。

 

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—このシーンが1番悲しい。

◆Caori:これ、終わり方、めっちゃ悲しい。
◆吉田:悲しいね。
◆梅田:悲しい…。
◆のあ:でも、この時ってさ、お源ハッピーなんだよね。切り替えてて。
◆スズキ:昨日泣いたから顔が疲れてたり腫れたりしてるけど中身はね。だから、お源の「昨日から風邪引いてた」っていうのは、もっと元気に読んでもいいのかな、って。

 

—作品中、1番凄い無言の攻防戦。

◆のあ:お徳の「おはよ」、いいね。もちこ(吉田)の言い方がね(笑)
◆吉田:いるよ、こういう人。
◆Caori:もう高校生だね。
◆スズキ:水面下の戦いが凄いな。
◆のあ:もしこれ映像にしたら、めっちゃ顔だけ映すカットが多そうだよね。無言の攻防戦。
◆梅田:これ凄いよ、ちょっと。書いてあること見てよ。「目をぎょろぎょろさせてる」んだよ? 凄いよね。これやってみてよ、お徳とお源。写真に撮ろう。

◆梅田:そうそう、そういう感じ。ほんと怖いよお徳。そんで、「早くもこれを見て取り、お徳の顔を睨み付ける」のよ? コントよ、これ。
◆吉田:しかも、ここで「もう喧嘩だ」になるんだよ。もう喧嘩だ、ってあんた。
◆スズキ:Fight!
◆のあ:その後の「ひどい皮肉を言いたい」っていうのもなかなか凄いよ。
◆吉田:「言いたい」って。言いたくてしょうがないんだろうけどね。
◆のあ:「あるあるを言いたい」みたいになってるよ(笑)
◆Caori:わたしがお源だったら、お徳の顔見られないよ。
◆のあ:だからお源って凄いよね。強い。互角にバチバチしてるもん。
◆Caori:こんだけやられたら、わたしなら家に引き籠ってしまうし。
◆スズキ:「あんたに言われたくない」っていうのもあるんじゃん? お徳ごときに。
◆Caori:いや、その考えができるなら、それは強い人なのよ。だって、まず大庭家に顔出せないもん、自分だったら。
◆のあ:水欲しいけど行けないからどうしよう、ってそればっかりになっちゃうよね。

 

—バレてた? バレてない?

◆スズキ:これって、お徳は知らないよね。お源が炭盗んだこと。見たのは真蔵だけで、真蔵が黙ってるから。
◆Caori:でも、磯吉が盗んで来たことはもっと知らないね。これ、お源が疑われてるんじゃない? 増屋の1件も。お源が盗ったことになってるでしょ、多分。
◆スズキ:この前の夜に、一応、「まだバレてないということにしよう」という結論を出した訳だから、自分は何もしてないぞ、っていうていなんじゃない? お源の中では。「あんまり怪しくしてもかえって疑われるぞ」と。自然に振る舞おうとして。
◆のあ:いや、でも、これはバレてたでしょ。
◆スズキ:疑われてるレベルじゃない? まだ水面下の戦いなんじゃない?
◆Caori:いや、自分だったらここで「あ、バレてるな」って思うけど。だって、自分が盗んだ次の日に、炭俵が全部片付けられてるんだから。

 

—お徳にとって、重要なのは真実ではない?

◆のあ:お徳としては、「炭」の話か、「盗み」の話か、どちらかのテーマを出せば、お源に関連付けられるから。どっちの話も両方撃ち出して、どっちか当たった方でお源のHP減らせればいいんじゃないかな? 最終的な目的は、ただ単にお源を低めることだけだから。
◆Caori:こんなに睨み合いしてるのに…仲良く話すシーンがあるんだよね。
◆スズキ:お徳、これ、「執念くお源を見ながら」質問は増屋にするんでしょ?
◆吉田:そうこれ、難しいよね。どうやるの?
◆スズキ:もちこ(吉田)、顔は映らないよ。
◆吉田:あ、そうだ。でも、こうかな? あ、イラッとするね。
◆梅田:うわぁん、お源可哀想だよ! 僕やだなぁ!(笑)
◆吉田:ほんとだよ(笑)
◆スズキ:でも楽しそうだな。
◆吉田:あ、楽しいよ。お徳。やってて楽しいよ。
◆Caori:1番楽しいよね、これ。
◆吉田:うん。普段こういうこと絶対やらないし。できないし(笑)

 

—おいしいパート、増屋。

◆のあ:増屋の「上等の桜」です、はコントのオチみたいにしたいよね。
◆梅田:火曜サスペンス、みたいな。チャッチャッチャ〜♪
◆のあ:ババーン!とね。
◆Caori:まあ、これはお源も首吊るテンションにはなるわな。
◆スズキ:だいぶお徳にダメージ与えられてる所に、初登場の、何にも関係無い赤の他人からとどめ差されるからね。
◆のあ:これ、中馬おいしいよね、増屋。
◆吉田:持ってかれてるね、中馬に。
◆Caori:中馬って、毎回おいしい役やってない?
◆のあ:悔しいから他の役者に替えようか。
◆Caori:このやりとりも、毎回やってない?(笑)

 

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国木田独歩より 竹の木戸

 

お徳は老母からも細君からも、みっしり叱られた。

お清は日の暮になってもお源の姿が見えないので心配して御気慊取りと風邪見舞とを兼ねてお源を訪ねた。内が余り寂然しておるので「お源さん、お源さん」と呼んでみた。返事がないので可恐々々ながら障子戸を開けるとお源は炭俵を脚継にしたらしく土間の真中の梁へ細帯をかけて死でいた。

二日経って竹の木戸が破壊された。そして生垣が以前の様に復帰った。
それから二月経過と磯吉はお源と同年輩の女を女房に持って、渋谷村に住んでいたが、矢張豚小屋同然の住宅であった。

 

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—やっぱり、この話は怖い。

◆のあ:もはやホラー。
◆スズキ:ホラーかなぁ?
◆のあ:だって、ただの御近所トラブルでここまでだよ!? 全然大きな組織とか、CIAとか、絡んでないし(笑)
◆吉田:CIA(笑)
◆のあ:スペクタクルもなく、淡々と。クライマックスっぽいけど、これ傍から見たら、ただの日常会話だから。それで最後人を死に追いやれる。
◆Caori:起こり得そうなんだよね。いじめとかで。現代でも。何も変わってないもん。そこが怖いよ。

 

—お徳って、お源が死んでどう思うんだろう?

◆吉田:ただただ「いい気味だ」とかは思わないんじゃない? さすがにそれは無いと思う。
◆Caori:ショックは受けるよね。仲良い面もあるし。
◆スズキ:実際、お徳は磯吉の実情とかもよく知らないし。
◆のあ:お徳は、お源とのプチイジメの日常を、お徳目線ではある意味平和に、続けて行くつもりだったんじゃないかな。まさか死ぬって思ってなかったと思うよ。
◆吉田:わりと好きだったんじゃないかな、お源のこと。決して「好きだ」とは言わないだろうけど。
◆のあ:引き立て役のお友達。
◆スズキ:うわぁ。「引き立て役のお友達」…!

 

—他の人は、この件、どう受け止めたんだろう。

◆梅田:僕、真蔵だったら「お徳! ちょっと! あんた、そこに直りなさい!」って言うよ。もう、こんなこと起きちゃって。お徳…!
◆スズキ:だから、老母と細君に叱られてるよね。
◆のあ:みっしり叱られてる。この「みっしり」って凄いよね。
◆Caori:ね。みっしりって。重たい感じ。
◆スズキ:密度が…! きっと日頃からお徳がうるさくて困ってただろうからね。「今こそ、締めよう」「チャンスだ」と。
◆吉田:お清さん、可哀想だね。お源の死の現場を発見しちゃって。
◆Caori:お清は寝込んだでしょう。
◆スズキ:数日寝込む。
◆のあ:妄想だけど、老母は仏壇に向かってなんまんだぶってずっと言ってそうだよね(笑)
◆スズキ:「だから言ったのに」ってまた自分流の理屈を言う、と。

 

—全ては元通りになってく感じが凄い。

◆スズキ:生け垣も木が植えられたんだろうし。
◆のあ:壊された訳だ。竹の木戸も。
◆スズキ:大工さんが来て斧で壊したのかな。お徳が「やっぱ見栄え悪いし」「ほら、だからあんな物要らなかったんですよ」とか言ったんじゃない?
◆Caori:なんか…こんな風に人が死んでも、2ヶ月も経つと元通りなんだね。

 

—エンドロールは豚小屋。

◆梅田:最後ってさ…「豚小屋なんだ…」と思って…。凄くない? 「豚小屋」でエンドロールなんだよこの話。
◆スズキ:本当だ。物語の最初は大庭真蔵の華々しい描写で始まって、締めは磯吉の新しい豚小屋か。

 

—磯吉は何を思うんだろう?

◆Caori:磯吉、反省してないよね。
◆吉田:ノーダメージでしょ。
◆のあ:いや、解らないよ。それは、わざとだけど書かれてないからさ。磯吉なりのダメージ受けてるのかもしれないし、何1つダメージなど受けてないかもしれない。
◆Caori:受けてないでしょ絶対!
◆スズキ:この人、何も法的な制裁を受けてないよ。
◆吉田:「あれ、お源、何で死んだんだろう?」って思ってるんじゃないかな。
◆Caori:豆腐みたいな脳みそだな。あぁ、現代にもいるよ、こういう男。DV男。
◆吉田:わたしも、磯吉は嫌いだな。
◆スズキ:次の女にさ、「なんか、前の女房のお源って女、死んじゃったんだよ」とか言ってそう。
◆吉田:時期被ってたらやだな。
◆スズキ:え! その女が裏で糸を…!?
◆吉田:全部見てたの?
◆Caori:それはやばすぎる。
◆のあ:次の女がいるっていうところが、お源に対する無神経もそうなのかもしれないけど、この悲劇の繰り返しを予感させるよね。またこうして同じことを続けているから。
◆スズキ:ああ、この女も貧乏を苦にしてまたお源と同じ目に?
◆のあ:読後になんとなく元通り&ループ感与えない?
◆吉田:なんかお腹痛くなってきた!(笑)

 

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