引き続き、暖房が効かない寒い寒い部屋で、お源の寒さを体験しながらの稽古です。
- 磯吉は布団から出ないんだね
- 磯吉がペラペラ喋った話はどこからが嘘で、どの部分が真実!?
- 磯吉を演じるならどの俳優さん?
などなど、自由に話し合っています。

国木田独歩より 竹の木戸
翌朝になってお源は炭俵に気が着き、喫驚して
「磯さんこれはどうしたの、この炭俵は?」
「買って来たのサ」

と磯は布団を被ってるまま答えた。朝飯が出来るまでは磯は床を出ないのである

「何店で買ったの?」
「何処だって可いじゃないか」
「聞いたって可いじゃないか」
「初公の近所の店だよ」
「まアどうしてそんな遠くで買ったの。……オヤお前さん今日お米を買うお銭を費って了やアしまいね」

磯は起上って
「お前がやれ量炭も買えんだのッて八か間しく言うから昨夜金公の家へ往って借りようとして無ってやがる。それから直ぐ初公の家へ往ったのだ。炭を買うから少ばかり貸せといったら一俵位なら俺家の酒屋で取って往けと大なこと言うから直ぐ其家で初公の名前で持て来たのだ。それだけあれば四五日は保るだろう」
「まアそう」
と言ってお源はよろこんだ。直ぐ口を明けて見たかったけれど、先ア後の事と、せっせと朝飯の仕度をしながら「え、四五日どころか自宅なら十日もあるよ」
磯吉は布団から出ない
スズキ:嵐の前っすね。これは。
Caori:お源、喜んでるから、むしろ切ないな。
スズキ:なんかね……こう、部屋が寒い中でやってると……実感が湧くなぁ。
吉田:お源、可愛かったね。
スズキ:可愛かったね。
Caori:めっちゃ喧嘩したのに、翌日はこんなに普通にケロッとしてね。
栗田:ヤンキー夫婦だからね。
吉田:磯吉が、朝ご飯できるまで「床を出ないのである」って……起きろ!(怒)
Caori:そうなんだよ。クズすぎて。心の中では、怒りでプルプルして次のセリフ言えないわぁ。
のあ:あ、お源じゃなくて、かおりんが、ってことね(笑)
Caori:お源は元気そうだね。ホント、ここ立ち直るの早いなぁ。
栗田:ヤンキーだから。
検証! 磯吉の話、どこまでが本当で、どこからが嘘!?
最初は本当のことを言っていた?
吉田:それにしてもさぁ、こいつさぁ、よく、こんなべらべら嘘が言えるよね。
スズキ:磯吉?
のあ:起き上がったと思ったら急によく喋るね。
吉田:なんか、もはや本当に怖くなったんだけど。
Caori:サイコパスだよ。
栗田:こんなもんでしょ。
中馬:これは、布団の中でどう言い訳をしようか考えてるんじゃない?
栗田:いやぁ、そこまで考えてないでしょ多分。何も考えてないよ。
Caori:言ってること、ほとんど嘘?
吉田:いや、ところどころ「ホントのこと」が折り混ざってない? だから、余計怖いんだよなぁ。
栗田:うん。これは途中まで、別に嘘じゃないでしょ。ホントでしょ。
中馬:まず、「おまえが、やれ炭が買えないだのってやかましく言うから」っていうんで、ゆうべ、金公の家へ行く。
吉田:そして将棋をする。
栗田:そうそう、22時まで将棋して、で、「2円貸して」って頼んで、断られる。
中馬:はいはい。
初公からが嘘?
栗田:それからすぐ、初公の家へ……あれ!? 初公!? ……んとこ行った?
皆:行ってない(笑)
中馬:ここから嘘ですかね。初公の所に行く。で、炭を貸すからお金を少し貸してと頼む。1俵ぐらいなら、俺の家の酒屋で取って行けと言うから、すぐ、その店で、初公の名前で貰って来た。……嘘っすね。

吉田:よくまぁペラペラとっ!
スズキ:あ、じゃあ最初は本当のことを言ってて、途中から嘘になった?
のあ:初公っていうところからが嘘か。
栗田:え、でもさ、1番最初によ、まだ磯吉が布団にいる時に、お源が炭を見付けてすぐ、「まぁこれはどうしたの? 何処で買ったの?」ってきいてるでしょ?
スズキ:で、磯吉が「何処だっていいじゃないか」って答えて、お源がそれに対して「訊いたっていいじゃないか」って返して。
栗田:「初公の家の近所の店」だって既に答えてるのよ、ここで。
のあ:あ、もうここで初公が出て来てるね。
吉田:じゃあ、もうこの時点で嘘ってことじゃん。
Caori:やばい。もう最初から嘘つこうと思ってるのか。
栗田:「何処だっていいじゃないか」で、辞めとけばよかったんです!……お源が。
皆:お源が、かよ!(笑)
栗田:追い詰めるから嘘つく羽目になるんでしょうが。
お店はどのお店の話?
栗田:あれ? でも、1番最初に言ってる、「初公の家の近くの店」ってのはホント?
吉田:え、行った?
スズキ:「どうしてそんな遠くで買ったの?」って訊いてるよ、お源が。その店と増屋とは別の店なの?
Caori:初公の家の近所の店が、イコール増屋?
吉田:盗んだのは、増屋でしょ。
中馬:はい、ウチから盗んでますけどっ!

吉田:ウチ(笑)
のあ:稽古初日で増屋のアイデンティティーが凄いな。
中馬:はい、俺は増屋です。
スズキ:バイトでしょ。
のあ:中馬ちの増屋は近いよ、お源の家から。
栗田:あ、近所なの? 別に増屋があるのが「近く」とは言ってなくない?
吉田:いや、近いはずだよ。大庭家もお源も増屋で炭買ってて、この日だって増屋が庭に来て、みんなで仲良く喋ってるぐらいなんだから。
スズキ:そうだね。お源も「なんでそんな遠くまで行ったんだ?」って疑問に思ってるから。
吉田:「いつも行く近所の増屋に行けばいいじゃん」ってことよ。
スズキ:大体、磯吉も、増屋で買ったら、「増屋だよ」って言うでしょ。
吉田:いや。この男は足のつくようなことはしないさ。
まとめると……
- 大庭家と植木屋夫婦の小屋は隣通し。
- 1km以内の距離に金公が住んでる。
- 帰り道に増屋があって、磯吉がそこで炭を盗んでるから、増屋も1km以内。
- 初公はこのエリアより、多分ちょっと遠くにあって、その近所に本当にそういった酒屋があるかは、磯吉の作り話だから、解らない。

磯吉の嘘の目的は、この距離感によるごまかし!
栗田:そうか目的がわかったぞ。磯吉の嘘の目的がわかりました。
のあ:え、何?
栗田:磯吉は金公と初公しか友達がいないんだよ。
皆:え、可哀想(笑)
栗田:でも、金公は近所に住んでて、詳しい話したらお源にバレちゃうから、とりあえず初公の名前出した。遠くに住んでる人の話だと、つまり、お源の生活圏から出た話だと、より想像がつきにくいから、ごまかしやすいと思った。そしたら、まだお源が食い下がるから。
中馬:なんかもっと説明しなきゃいけなくなって、新しい作り話ができて行くんだ。
栗田:うん。これは、店きっかけじゃなくて、自分の知り合いきっかけで嘘ついてるね。
のあ:距離あると、その後、お源が事実を追跡しづらくなるね。
スズキ:もしかしたら、友達はいっぱいいるけど、1番遠いのが初公かもよ。
磯吉は、俳優さんなら誰?
のあ:最後、世間的には、盗んだのはお源がやったことになるんだよね。一見、これを苦に自殺したことになるから。
栗田:あ、そっか。
のあ:お咎め無しだからね、磯吉。
栗田:だってぇ〜。こんなんと一緒にいるからいけないんだよ、お源はおかしいんだよ。
Caori:やっぱ、磯吉イケメンなんじゃないの? 一緒にいることにステータス感じてるんだよ。
のあ:その件に関して、この前、俵カナちゃんと稽古したんだけど。カナちゃんが凄く面白い説を出してて。磯吉は、マジで、ただ気持ち悪いだけの男で、お源だけがたくましい妄想力で、魅力を感じてるんじゃないか、って。
スズキ:あぁ、そうそう。この人の良さが解るのはわたしだけ! っていう。
Caori:まぁ、そうだね。いわゆる “ダメ男” っていうものが、必ずしも世間的なイケメンとは限らないね。
のあ:いるじゃん、誰が見ても絶対に「モデルさんみたいにかっこいい!」って思う訳じゃないんだけど、そのコミュニティーの中では常に恋人が絶えなかったり、その人を狙ってる人同士がバチバチしてたり。特定の層の人を心理的に惹き付けてコントロールする仕草とか言動を、無意識に身に付けている可能性はある。
Caori:すごい解る。すごい、いる、そういう人。
吉田:渋谷村の新しい妻も、お源に似てる性格なのかもね。

のあ:次々に犠牲者を生み出していくんだね。
Caori:磯吉側は相手が誰であっても同じなんだろうな。
のあ:何故か責められたりしなくて、みんな「あの男に惚れちゃったあたしが悪いの」みたいなことになるんだよね。
吉田:むかつく。
のあ:うちの稽古場は、「アンチ磯吉派」が多いんだけど、カナちゃんは、またちょっと違う立場を取ってて、「磯吉悪くない」っていう擁護までは行かないけど、「惚れたお源が悪い派」かな。
中馬:論文の中には、磯吉は純粋で「心が綺麗なんだ」とか書いてあるヤツもありましたよね、確か。
のあ:中馬、論文まで読んだんだ、凄いね。
栗田:な〜んかやっぱり、喋り方といい、浅野忠◯がちらつくんだよな〜。
のあ:どういうこと?(笑)
栗田:浅◯忠信がパンツ一丁でやってるような役だよ。
のあ:ますます解らない。
吉田:いや、ごめん、わたしはちょっと解るぞ?(笑)
のあ:え!?
栗田:動物みたいなタイプかな。綾野◯ですよ。映画とか。
中馬:「そこのみにて光輝く」の綾◯剛みたいな。
Caori:綾野◯わかるわぁ。どっちかというとそっちだね。
スズキ:え! コウノドリ先生!?
吉田:あ、うん。人は合ってるけど(笑) もっと悪い人の役をやっている時があるんだよ。
スズキ:ほぉ。
中馬:◯野剛ならしょうがないな。
Caori:うん。綾野◯なら別にいいよ。
吉田:磯吉は綾◯剛だったんだね。許す。
栗田:あ〜。森◯未來がクズやると「うわぁ」ってなるのに、綾野剛がやるとモテるのは何なんだぁ〜。やだなぁ〜。
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