キャスト日記:栗田ばね『東京砂漠 流浪のカラオケ』

今日は少人数稽古です。
演出は首の痛みで休み、吉田素子は仕事で休み、スズキヨシコは純然なサボり(推定)です。
よって参加者は、石丸、梅田、戸塚、栗田の4人。
 
駅前でおちあいました。
 
小雨。
梅田さんは、傘を立ち食い蕎麦屋に忘れてきたそうです。
栗田は、最初から傘を持ってきていませんでした。
 
駅前では、土曜ということもあり何かの催しが。
 
司会「特別ゲスト、川島海荷さんで~す!」
 
ええっ!?
 
見れば、小柄な黒髪の女性が特設ステージに登場しています。
 
司会「ゲスト、アイデンティティさんで~す!」
 
ええっ!?
 
見れば、大柄な赤髪の野沢雅子さんもステージに!
 
それはそれとして、稽古場のカラオケ屋に向かわなければなりません。
この街で働く吉田さんから、「〈コートダジュール〉がおすすめだよ」と連絡が入りました。しかし、この街に住む戸塚くん。
 
戸塚「〈サーカス〉のほうが安いです」
 
〈サーカス〉へ向かいます。
 
店員「満席です」
 
……。
 
さすが土曜の昼さがり。
同じく諦めた何人かのお客さんと、4階から階段で降りていきます。
 
メンバー「ここは、エレベーターはないの?」
戸塚「わかりません……」
 
外に出ますが、4人中2人(梅田・栗田)が傘なしなので、移動をひかえ、電話作戦。
コートダジュールに電話してみるも、やはり満員、40分待ちとのこと。
 
「もうサイゼリヤにする?」
「ジョナサンもあるよ」
「でもファミレスで朗読してたらやばい集団だね……」
 
どうしよう……?
 
戸塚「じゃあカラオケで、どうしようもなく高いけど、だからこそ人が寄りつかなくって、こんな掻き入れ時の土曜の昼さがり、生憎の雨とはいいつつ、他の同業店舗が満員になっている横で、まだまだ空き室があるかもしれない、そんなどうしようもなく高い値段設定の、×××に行ってみますか?」
 
空いていました!
 
そんな書き方をしてしまったから、折角の救世主なお店の名前を、書けなくなってしまいました。
あーあ、戸塚くん……!
 
さて、やっと稽古のはじまりです。
 
 
「それにしても快適なイスと机だなあ。よかった、×××に決めて!」
「×××、だいすき!」
 
まずは、前回欠席の戸塚くんに、作品について話したことを伝えます。
 
●『注文の多い料理店』は今回、ホラー風味でいきたいという案とか。
●山猫の「親分」は実際に大きな山猫なのか? それとももっと「大自然」の象徴のようなものなのか? とか。
●最後に助けてくれる「犬」は、前半で死んだはずなのになぜ? という話とか
● “紳士たちの見過ごし” 説、“最後は実は霊界に行っている” 説、“大自然による蘇り” 説、などなど。
●あと栗田が『平成狸合戦ぽんぽこ』を見たという話。自然と人間というテーマでも、『もののけ姫』とはエンターテインメント感がえらい違う、とか。古今亭志ん朝師匠のナレーションがすばらしい、とか。
 
ホラー風味にしたいという栗田の意向を伝えるべく、テレビゲーム『かまいたちの夜』の動画(Youtube)も参考に。
音楽と効果音、そして沈黙でもたらされる臨場感とスリル。
 
『かまいたちの夜』
こわいです。
 
怖さでいえば、岡本忠成さんのアニメーション版『注文の多い料理店』も。
この作品、山猫たちがなぜか黒いドレスを着た女性の姿で登場し、紳士たちの周りでダンスを踊ります。
無性に怖いです。
 
さて…………
 
早速(ようやく!)いちど『注文の多い料理店』を通して朗読してみました。今回は、
 
<ナレーター>戸塚
<紳士>ふたりを梅田・栗田
<山猫>を石丸と吉田
 
が担当しています。
 
通して、およそ16分。
終わってみて。
 
「紳士たちの、お店への違和感が段々高まっていくのがわかると面白そう」
「ナレーションもそれに協力して、不信感をあおるようにタメを作ったりしようか」
「お店からの注文を読むときと、次の扉をあけるときがひと区切りになるかな」
「紳士2の、お店への注文をうまくこじつけるところはコメディぽい」
 
さて、演技についての意見も出ました。
 
「紳士ってもっとデブキャラかな?」 
 
確かに、「若いお方や肥った方は大歓迎」と店に書いてあるのを見て、紳士は「僕等はどちらも兼ねてるから」と言っていますから、もっと体格を強調してみよう。ということになりました。
 
「若くて肥ってるのかあ」
「与沢翼で」
「いま、だいぶ痩せたよ」
 
…………。
 
すこし休憩。
ドリンクバーに行ったり、サイレント状態にしてあるモニターを眺めたり。
 
「欅坂46」と「けやき坂46」は、別ものだってご存知でしたか?
 
「ええ? 違うの?」
「なにが!?」
「 “けやき坂” は明るく、“ハッピーオーラ” を放ってくれるらしいですよ」
「そうか、“欅坂” は過呼吸になるくらいシリアスだから……」
 
DAMチャンネルから明日すぐ役に立つ知識を仕入れ、稽古をつづけます。
 
 
ふたたび、『注文の多い料理店』を通して朗読。
梅田さんの紳士の “デブキャラ” ぶりに、石丸さんが噴き出しています。
ナレーションも、タメどころや、怖いムードの声音が入ってきて、臨場感が増してきました。
全体の長さは2分増え、18分。でも、こちらが本来の長さという感触。
 
「紳士、デブキャラ以上に、バカキャラになってませんでしたか?」
「それはあるね」
「 “バカ” が大自然にやられても、教訓にならなそうな」
「じゃあナチュラルに不遜な感じ?」
「叩かれてたころのホリエモンはどうだ?」
 
なぜ実業家しか出てこないんだろう。
 
「あ、サンドウィッチマンの金髪の人は?」
 
……。
 
紳士の、自然(=動物)への態度。
犬が死んでしまったときに、紳士たちは単に「○○円の損害だ」としか言いません。
そんな態度の紳士が、最後はその(復活した)犬たちに救われる……。
それを、人間は自然に対して悪である、と読むのか。
人間は自然に含まれていて、とても敵うものではない、と読むのか。
あるいは、人間と自然(山猫)は対等で、どちらも食べ・食べられる関係でありうる、ということなのか。
 
どうなんでしょうか。
 
ホラー・怪談のナレーションの参考に、講談師にして人間国宝、一龍斎貞水師匠の語りを、Youtubeで見ました。何でもかんでもYoutube。完全にユーチューバー(見る方)。
 
石丸「うまい……!」
梅田「怖い……!」
石丸「何言ってるかちゃんと聴いてなくても怖い!」
 
そんなこんなで、お時間となりました。<br />外へ出れば、小雨はいまも小雨。
 
傘がない。
 
さようなら。

これはかまいたちの夜だ!

本日のお稽古は、宮沢賢治『注文の多い料理店』です。

 

物語に登場する、主人公の紳士2人。

1人目の紳士は、栗田ばねさん。

 

 

そして、もう1人の紳士は、梅田拓くんです。

 

 

レストラン山猫軒の奥に待ち構える山猫の役は、吉田素子さん。

 

 

そして、もう1ぴきが、Caoriさんです。Caoriさんが男の子っぽいセリフをやるのは、珍しくて貴重かも!

 

 

どちらも、とてもいいペアです。

 

悪天候の中、森で迷子になり、やっと見つけたレストランの中で、どんどんドアを開けて進んで行く、何が起こるか分からない怖いお話。

 

 

これは、児童文学のくくりで選んだお話だけど、怪談シリーズに入れてもいいんじゃないの? という話になりました。

 

 

そこで、栗田ばねさんが、「これはゲーム『かまいたちの夜』だ!」とひらめいたようです。

というわけで、栗田ばねさんが今回のディレクターになりました。BGMや、みんなの読み方、編集方針を考えてくれます。

今回は、いつもと違って、事前にBGMを決めておき、BGMに合わせて演技を練習をし、本番に臨むという、新たな試みをすることになりました。

いつも、編集の段階で、キャストの演技の雰囲気に合ったBGMを探して付けているので、公開されるまで、キャストはどんな音楽が流れるか、知らないのです。音楽に合わせて演技を作って行くとどうなるのか、ちょっと楽しみです。

 

 

本日は、お昼ご飯に、おいなりさんが出ました。

なんて豪華……! 

セクションによって違う具が入っていて、おいしかったです。

 

 

食べる吉田さんです。

 

 

 

そして、なんと、おやつに煮詰めた梅も!

とてもいい香りでした。

 

 

食べる吉田さんです。

 

 

 

 

 

こちらも、おかわりが止まることを知りません。

 

 

 

 

 

 

さて、次は、以前に収録した作品の、トークを収録します。

 

 

まずは、小川未明『遠くで鳴る雷』の収録。

 

 

最初に、吉田素子さんと梅田拓くん、本編の音源を視聴しています。

寝ているわけではありません。真剣に聞いている図です。

吉田さんは、お母さん役で出演しましたが、完成作品を聞くのは初めてです。

初夏らしい、爽やかな出来となっています。

 

 

夏の思い出、キュウリについての思い出を話して、和やかなムードになりました。

 

 

まだ食べてる。

 

 

そして、次は芥川龍之介の『鼻』です。

栗田ばねさんが初めて単独で録った作品です。

 

 

栗田さんが、自分もメンズTBCで鼻の角栓を取ったエピソードなど、面白いお話が聞けました。

後で編集した時に、残り3人の笑い声を消すのが、大変でした。

 

芥川龍之介「秋」|キャスト日記:Caori『信子の世界は狭すぎて』

芥川龍之介『秋』で、ヒロイン信子というかなり難しい役を演じた Caori さんが、コラムを書いてくれました。

国木田独歩『竹の木戸』では、貧しい育ちで、江戸っ子口調の、強くも儚いお源が似合っていた Caori さん。この信子は対象的に、大正の女学校を出た、知的なお嬢様。まっすぐ言葉をぶつけるお源と、賢くも含みのある物言いで逃げてしまう信子とは、全く異なる役ですが、どちらにも言えることは、「演じるのには、何か得体のしれない、色気が必要。な気がする。演出的には」ということかな、と思っています。

さて、Caori さんは何を思って演じていたのでしょうか?

信子は悪い子?

はじめて芥川龍之介の『秋』をみんなで読んだとき、圧倒的に信子への批判が集まった。

お話をまだ知らない方のために、ちょっとだけ登場人物を、できるだけ客観的に説明すると、

  • ・信子(姉):小さいときから、周りから才女と思われていた。いずれは俊吉と一緒になると思われていたが、別の会社員と急に結婚。
  • 照子(妹):小さいときは姉と俊吉が仲良く話す輪に入れず、後をついていくだけだった。姉に少しコンプレックス。信子の結婚後、俊吉と結婚。
  • 俊吉(いとこ):文学好き、作家志望で作品を書き続けている。信子と仲が良かったが、照子と結婚。

という感じ。

姉妹の信子と照子はお互い支え合って、結婚後も手紙のやり取りをする仲の良さ。なんだけれど、

信子は本当に今の結婚でしあわせなの? 
俊吉を照子にゆずるためだったんじゃない?
俊吉は、いったい誰のことが好きなの?
照子は姉に対してどんな気持ちを抱いてるの?

と、物語を読むにつれ、本当に仲がいいのかな? と不穏な気持ちになってくる。

なぜなら、信子と俊吉があんなに仲が良かったのに、急に信子が違う人と結婚したのは、妹の照子が俊吉のことを好きだと知って、譲った(と、照子は思っている)から。

そして、信子が照子の家に遊びにいった際、妹のことを大事に思っている(と思われる)にも関わらず、俊吉となにか起きないかな……と期待してしまうから。

さらには、それを見た照子と、静かな言葉のバトルがあるから。

そこで皆の意見が集中したのは

  • 信子→照子への態度がひどい!
  • 俊吉は照子と結婚したのに、信子と仲良くしてずるい、かわいそう

とにかく、信子がひどい、照子がかわいそう、信子を理解できない、という意見が多かった。

信子の気持ちになってみると

私は信子役として、あえて信子の側に立って弁護してみようと思った。

まず、『秋』で不思議だったのは、妹と俊吉以外の存在の不在。特に、信子のまわりの友達とお母さんの存在がほとんど描かれないのが、気になった。

信子「ってかさぁ、俊吉とウチ仲良かったじゃん? このまま行けばゴールイン? って感じだったじゃん。でも、照子がさー、俊吉のこと好きってゆーからさ、譲ってやったわけ。」

友達「えーまじ? 2人めっちゃいい感じだったじゃん」

友達「ってゆーか、のぶちゃん妹に好きな人譲るとか、まじ優しさー」

信子「好きってゆーと、微妙だけどさ……まあ今の旦那も安定してるし? お金持ってるし、暮らし向き上は満足してるんだけどさ。なんかさ、やっぱウチ文学好きじゃん? 家の中でも、自分と同じレベルで話したいわけよ。でも今の旦那はさ……」

云々カンヌン。

みたいな、実は複雑で奥深く渦巻いているかもしれない闇の心を、あえて客観的に、かるーく、自分は特に気にしていないふうに友達に話すことで、自分の黒い思いが昇華することはあると思うんだけれど。

友達との会話は一切出てこないし、おそらくそんなに気軽に内面を吐露できる友達はいなかったのではないかと思われる。

また、なにかあった時に、信子には精神的に頼れる人が照子しかいなかったことも気になる。旦那とうまくいかず落ち込んでいた時に、文章中で信子が思い出すのは照子。「照子しかいない」というような表現が出てくるぐらい。

このように、照子ははっきりとわからないけれど、少なくとも信子の世界はとても狭い。秋』本文中に出てくる、照子、俊吉、そして旦那以外の繋がりはほとんどなく、せまいせまい世界で、うつうつと、悶々と生きているようにみえる。

だから、照子かわいそう、というのもあった上で、信子も同じようにかわいそうだなあというか、もっと世界が広ければよかったのにね、と思う。

短いセリフと秘められた感情

『秋』ではナレーターが語る部分がとても多くて、ひとりひとりのセリフが短いんだけれど、その短いセリフのやりとりの裏に、いろんな想像をさせられる。

今回は、信子中心に、彼女の世界が狭いことについてちょっとだけ書いてみたけれど、実は他にもいろんな関係性が裏に隠されている。

芥川龍之介の中では有名な作品の方ではないと思うけれど、ぜひ今回の「劇団ののと読む」で、一緒に読んでいただけたら嬉しいです。