スタッフ日記:制作 加藤綾音『行間にある心…。』

 

こんにちは。劇団のの 制作の、あやねです。

 

今回、朗読の作品を選ぶにあたり、
最初に「竹の木戸」を読んだ時に残った印象は、
その臨場感と生々しさでした。

淡々と日常を描いている作品でありながらドキリとさせられる、
肌感のある作品だと思います。

言葉の端々やら、所作やら、物言いやら、物言わなさやら……。

登場人物は「つい昨日会ったあの人か」というような鮮やかさで、
時代を超えて近付いて来るのに、ひとことでは説明できない。
鮮明なのに複雑です。

 

先日とある国際的な集まりで、
日本の人の慎重さ、主張の無さに焦点が当たった時がありました。

「何も言わない = 考えがない、もしくは恥ずかしがり屋」

と映るらしい。

しかし実際は、
「どう言おうか考えているうちに会話が進んでしまった」
ということも……。

案外、何も考えが無いのではなく、
考え過ぎて言えない時もあるのですよね。

「それを“inside busyness=内なる忙しさ”と言ったら、少し伝わるかな……」
なんて話していました。
行間に色々詰まっているのです。

 

国木田独歩は、作中、
たまに会話の行間の「心中(しんちゅう)」を書いています。
会話そのものから伝わってくるものもあります。

6月のワークショップを通し、
朗読とは、この「行間」を深め表現してみることで、
作品の中の人の、心に出会う挑戦だと思いました。

どんな心と表現に出会えるのか……
楽しみながら取り組みたいと思っています。

 

浮かれすぎクリスマス

 

大勢での収録を、クリスマス直前に行いました!

 

どうです、この大庭家の浮かれっぷり。

もしこの時代にクリスマスを祝っていたら、
お徳の仕切りは凄かったでしょうね。
新橋に買い出し、礼ちゃんのプレゼントの調達。
クリスマスツリーの選出、飾り付け、設置場所。
七面鳥の焼き具合、靴下作り。

そして、磯吉は、
どっかの庭からモミの木を切り倒してきて、七面鳥を誘拐して、
金次の家でクリスマスケーキを貰ってくることでしょう。

 

お菓子も豪華。

スズキ家の手作りクッキー。

Caoriちゃんが買って来たクリスマスケーキ。

中馬くんが里帰りの折に買って来てくれた、
肥後、五十四万石饅頭。

あれ?
「風が語りかけます」のCMで有名な埼玉の十万石饅頭じゃないの?
加賀百万石は大河ドラマの「利家と松」?

などと言っておりましたが、五十四万です。
十万より多い、百万より少ない。
五十四万石饅頭は、大変おいしい、
おいしすぎて五十四万個食べられるおいしさでした。

https://www.kobai.jp/goju/

 

お徳とお源の井戸端でのシーンを録っているところです。

2人、本当は仲良しです。

お源、お徳、マイクチェックです。
交互に「あ」と言って音を入れています。

お清、録音を確認。
職人と化しています。

お源は貧乏なはずなのですが。
なんでしょう、この金持ちそうな顔は。

この帽子がここまで似合う人はあまりいませんね。
本当は磯吉じゃなくてサンタクロースの妻なんだと思います。

紅茶を片手にご機嫌で収録。

この後、彼女は、浮かれすぎて、盛大に紅茶をこぼしました。
機材は無事でした。

 

お源とお徳が、演技に納得が行かず、
物凄く、長い収録となりました。
この男が暇になりました。

そして、この男も。
田舎の駅の待合室か、山小屋のようですね。

そして相変わらず、部屋全体を温めてくれない、アラジンランプ。

おもむろに昼食を食べる中馬くん。
何故か、かっこつけて来ました。

 

と、ここで、暇そうだったので、
中馬くんに、お昼ごはんのピザを買いに行ってもらいました。

 

1度、録音真っ最中に、ガラッと開けて、中馬くんが戻って来ました。
みんなで「おい!」となりました。
まるで演劇のワンシーンのようでした。

 

そして、また、録音真っ最中に、ガラッと開けて、中馬くんが戻って来ました。
また、みんなで「おい!」となりました。
まるで演劇のオチのシーンのようでした。

 

増屋の御用聞きは、ピザの配達人になりました。

ちなみに、彼、この帽子を被って自転車に乗って店まで行ったこと、
帰って来てから気付いたようです。
お店の人も、物凄い浮かれたクリスマスパーティーが開催されていると思ったことでしょう。

大変おいしくいただきました!

 

お昼を過ぎても、まだお源とお徳のシーンが続いております!
待機中のベンチは、寒い。
防寒必須です。

 

ミッションをコンプリートし、
またもや暇になってしまった中馬くん。
おもむろにチキンを食べております。

骨しかないのに、何故か、かっこつけて来ました。

 

さて、お源とお徳がようやっと納得し、他のシーンをいっきに録りました。

時間が無くなってしまったので、
家族会議や、朝の井戸端のシーン、
実は全部別録りして、編集で繋いでいます。

 

さて、最後に、効果音を録りました。
磯吉が煙管をふかすシーンと、ごはんを食べるところです。
煙草は梅田くん、ごはんは中馬くんがやっています。
実は本人じゃないんですね。

 

中馬くん、空のお茶碗で、必死に、
ドラえもんが歩く時の音みたいなのを出してくれました。
何か違う。

そこで、本当に何か食べた方がいい、ということになり、
ここで登場するのが、あの、肥後の五十四万石饅頭です。

だがしかし、中馬くん、
またドラえもんみたいな音を出し、
ディズニーに出てくるハイエナの舌なめずりみたいなヨダレの音を出し、
最後に急にお饅頭を取り出して、
カサカサ言わせて紙を剥いて、
マイクに向かって顔を突き出して、凄いスピードでもぐもぐもぐもぐっと噛み、
わざとらしく、「あ〜っ」と息を漏らしていました。

みんな、声が入ってはいけないので、必死に笑いを堪えています。

音を確認する真蔵。
1人で聞いて、笑いすぎて、撃沈していました。
小さなカサカサ言う紙の音と、無音が入っていたようです。

 

自分でも確認。

そんなに真剣に聞く音ではない。

 

結局、茶碗にお饅頭を入れ、お茶を掛け、
お茶漬けのように掻き込んでみました。
そちらの音が、本編では使われております。

 

ちなみに、この後、後片付けをしていたら、
サンタの帽子が1つ足りず……
中馬くんは、よほど寒かったのか、被ったまま家に帰ってしまったようです。

 

解説:「竹の木戸」あらすじ -下2-

 

次の日の朝。
お源は、置いてある炭俵に気付いてびっくりしました。
一体、磯吉はどうやって炭俵を買って来たのでしょう!?

 

磯吉は普段から、お源が朝ご飯を作っている間、
ずっと布団の中で横になったままです。

お源「磯さん、これはどうしたの?」
磯吉「買って来たんだ」
お源「え! どこで買ったの?」
磯吉「別に、どこだっていいじゃないか」
お源「どこか、ぐらい訊いたっていいじゃないか」
磯吉「……初公の近所の店だよ」

あれ?
昨日訪ねたのは、金次です。
初公なんて、登場していません。

お源「どうしてまた、そんな遠くの店で買ったの?」

初公は遠くに住んでいるみたいですね。
実際に磯吉は、そんなに遠出をしていませんし、
炭を盗んだのは、近所にあるお店です。

磯吉はやっと起き上がり、訳を話します。

昨日は、おまえがギャーギャー言うから、
金公の家に行って、金を借りようとしたが、無いと言われた。
それからすぐに初公の家に行った。
炭を買うから金を貸せと言ったら、初公が、
「なんだ、1俵ぐらいなら、俺の行きつけの店に行って、俺の名前で持って行けよ」
と言うので、その足でその店に行って貰って来たと言うのです。

磯吉は、泣いて抗議するお源を、とりあえず満足させて黙らせるため、
その場凌ぎに、盗みを働いて、しかも嘘をついているのです。
でも、お源は、これなら10日ぐらい足りる! と大喜びです。

 

お源は、旦那に「仕事しろよ」と責めるなら、自分も頑張らなきゃダメだ、
あと、お隣さんにも顔を出さないと不自然だし、かえって疑われる、と考えました。
そこで、いつもの通り弁当を持たせて磯吉を送り出し、
自分も朝ご飯を食べました。

 

お源は、一段落すると、バケツを持って、木戸を開けました。
すると、女中のお徳と、真蔵の義理の妹のお清が庭に出ていました。

お清は、お源の顔を見て心配します。
「お源さん大変顔色が悪いね、どうかしたの?」
昨日の夜、寒い中で凍えて、しかも泣いていたので、
顔も腫れたり、疲れていたのでしょう。
お源は、ちょっと風邪を引いたのだとごまかします。
お清は心配します。

お徳は、「おはよう」と口早に言って黙ります。

お源は、その挨拶で気付きました。
昨日まで炭俵が並べてあった場所に、炭俵が置かれていないのです。
きっと、昨日のうちにお徳の部屋に移されたのに違いありません。

お源は顔色を変えて、目をぎょろぎょろさせました。
お源が慌てる表情を見て、お徳はにやりと笑いました。
お源は、お徳がにやりと笑ったことに気付き、お徳を睨みつけました。
お徳は、お源に睨まれたので、何か喧嘩したくて仕方ありません。
バチバチです。
でも、お徳さんは、お清さんが傍にいるので我慢しています。

 

するとそこへ、「皆様、おはようございます!」と、
増屋というお店の、18-19歳になる御用聞きがやって来ました。

増屋というのは、磯吉が炭を盗んだ、あの近所のお店です。
大庭家もお源もここで炭を買うので、みんな顔見知りです。

御用聞きというのは、注文を取りに来るお兄さん。
「サザエさん」に登場する三河屋のサブちゃんが有名ですが……
定期的に来てくれるダスキンさんや生協さんみたいな感じでしょうか。

お兄さんは、炭俵がいつもの置き場に無いことに気付きました。
「あれ? 炭はどこかへ片付けたんですか?」

お徳は、待ってましたとばかりに、
「外に置いておくと物騒だから中にしまうことにした」と説明します。
お徳は水を汲み終わって歩き出したお源さんをわざとらしく見ます。

お清さんは、わざと意味深なことを言うお徳を睨みました。
昨日の家族会議で、お源さんに対して波風を立てないように言ったのに!

何も知らないお兄さんは続けます。
「本当に物騒ですよ。うちでも昨夜、1俵盗まれました」
お徳は、お源さんを見ながら「何の炭をとられたの?」と尋ねました。
お源さんを見ながらですよ。
お兄さんは「上等の佐倉炭です!」と答えます。

お源は、この会話を聞いていました。
歯を食いしばり、よろめきながら家に向かいます。
バケツを投げるように置いて、炭俵の口を開けます。
入っていたのは、上等の佐倉炭でした。
そう、これは磯吉が、初公の許可を得て譲って貰った炭なんかじゃない、
増屋から盗んだ物だと、判ってしまったのです。

 

お徳は、真蔵の老母からも、真蔵の妻からも大変厳しく叱られました。
お隣の奥さんに、あからさまに疑うような失礼なことを言ったからです。

現場に居合わせたお清さんは、夕方になってもお源が姿を現さないので、心配になりました。
普段なら、夕食の支度で井戸に来るはずなのに。
そこで、風邪の見舞いも兼ねて、植木屋夫婦の家に行ってみました。

家の中があまりにひっそりとしているので
「お源さん」と呼んでみましたが、返事はありません。
そこで、おそるおそる障子戸を開けると、
お源は、天井の梁に細い帯を掛け、首を吊って亡くなっていました。
どうやら、磯吉が盗んで来た炭俵を踏み台にしたようでした。

 

2日後、竹の木戸が取り壊され、生け垣は元通りになりました。
更に2ヶ月後、磯吉は渋谷村に移り住んでいました。
なんと既に、お源と同い年ぐらいの奥さんがいます。
でも、相変わらず、豚小屋同然の家でした。